軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

65.頭を切り離す

人狼達は、「約束の地」の各地に散っている、様々な種族の部落に走った。

バンパイアの上位種であるドラキュラが現われた、今すぐ避難して戦わないようにするべし。

そうやって、一斉に警告を発した――のだが。

俺の目の前に一人の人狼が跪いていた。

男の人狼で、名前はジェイクだ。

オークらの集落に警告に走らせた彼は、戻ってきてがっくりしている。

村の中心で、俺と向き合うジェイク。

他の者達は遠巻きに俺達のやりとりを見守っている。

「ダメだったのか?」

「はい、話をまともに聞いてもらえませんでした。バンパイアみたいな、昼間に出歩けもしないもやしどもに負けるはずがない、って」

「……その自信、いやな予感がするな」

俺が苦虫をかみつぶしたような顔をしてると、ジェイクは更に苦い顔で頷いた。

「はい、俺がもっと説得しようとしたところに、バンパイアの一味が襲ってきました。オーク達は迎撃したんですが、数に押されて、全員が噛まれて吸血鬼化されました」

「……まいったな」

「それで……明らかに違うバンパイアがでてきたんです」

「なに?」

事態の急変――というにはもう終わっているが、それでも俺はちょっと動揺した。

「俺はオーク達が戦いだした時点で離れて見てたんですが、バンパイアどもは全員そいつに傅いてました。それで、そいつは倒されたバンパイア達に何か魔法のような事をすると、倒れたバンパイア達が全員復活してきました」

「そいつがドラキュラって訳か」

「はい、部下を復活する能力と、それから」

「それから?」

「そいつが現われてから、その近くにいるバンパイア達は明らかに強くなってました」

そういったジェイクは更に消沈して、がっくりうなだれながら。

「それ以上はまずいと、逃げてきました……すみません……」

「いやいい。その場にいて吸血鬼化させられたら大変だ。逃げて正解だ」

「しかし……」

「それに、今の情報は大きい」

「え?」

驚くジェイク。

そこに同じ人狼である、彼らのリーダーであるクリスが近づいてきた。

「だね! 部下を復活させられる力があるって分かったのはおっきいよ。ドラキュラ、そいつを真っ先に倒さないとだめって分かったのは大きい」

「あっ……そっか」

「いや、それだけじゃない」

「「えっ?」」

驚くクリスとジェイク。

ジェイクが持ち帰った情報で、俺は、バンパイア達と戦うビジョンが見えてきた。

他の種族が忠告を聞かないとなると、速攻するしかなくなる。

時間がたてばたつほど、他の種族達が取り込まれていって、勢力がどんどん大きくなっていくからだ。

一万人もいて、やられても復活出来る、実質数が減らない軍団。

それと対抗出来る数と力は、「約束の地」の他の種族にはないとガイたちは断言した。

だから、このタイミングで止めるしかない。

レイナ、ガイ、クリス、そしてアスナにジョディの 五人で(、、、) 、斥候の人狼がつかんだバンパイアの本隊が進行するルート上に待ち構えた。

豊かな土地である約束の地の中では、一見何もないが、しかし鉱石が多く埋まっている荒れ地。

他の土地と違って、ここは開けていて、余計なものがなくて、戦いやすかった。

やってきたバンパイア――吸血鬼の集団は、軽く一万という数を超えているのもそうだが、様々な見た目の者達が入り交じっていた。

ジェイクが見てきた豚頭のオーク達もいれば、緑色の肌をした人間達の半分くらいのサイズの小鬼――ゴブリン達もいる。

様々な種族がいるが、共通しているのは口に収まらない、はみ出している鋭い牙を持っていると言うことだ。

遭遇、即開戦となった。

五人はそれぞれの魔導戦鎧を纏っていた。

鉄の像を依り代に、中級精霊を憑依させた「真・魔導戦鎧」。

それを纏った五人は暴れ回った。

ガイは地面に拳を叩きつけて、「ガイアクラッシャー」を出した。

大地に走る巨大な亀裂が、一気に百人近いバンパイアを飲み込んだ。

それに、クリスとアスナのスピードコンビが乗り込んで、高低差のある地形に身軽さを活かして、次々と倒していく。

レイナは水と火の範囲魔法を使いこなして、まとめてバンパイアをなぎ倒していく。

それで討ち漏らしたのを、ジョディが細身のレイピアで、舞うような優雅な動きで一体ずつ仕留めていく。

五人対、一万人。

スタートの局地戦では、五人が無双をしてバンパイア達を圧倒した。

五人が圧倒しているが、 遠くで見てて(、、、、、、) はっきりと分かる。

力を振るう度に、徐々に動きが鈍くなっていくのを。

当然だ、生き物である以上体力に限界がある。

「くっ、ここまでか。引け! 引くでござる!」

ガイの号令に従って、五人が一斉に引いた。

まだ余力を残した状態での撤退、わずかに追撃してきたバンパイアをなんなく倒して、五人は全力で撤退した。

その場に残ったのは、1000体近い死体と、まだまだ大軍と呼ぶにふさわしい一万越えのバンパイア。

そのバンパイアの中から、現われる一人の中年。

遠目でも分かる、優雅で気品にあふれる、美形の中年男だ。

そいつが現われた瞬間、バンパイアたちは一斉に跪いた。

そして――強くなる。

ジェイクの報告通り、遠目で見ていても分かる位、バンパイア達がそいつのおかげで強くなっている。

そいつは、死体の側でしゃがみ込んで、何かをした。

すると、死体はのっそりと起き上がる。

復活した。

やっぱり、こいつがバンパイアのボス、ドラキュラか。

それを確認・確信した瞬間、俺は動き出す。

上級神聖魔法、テレポート。

それを使って、五人が待ち構えていた場所――俺が一度立った場所、ドラキュラのそばに飛んだ。

そして、ドラキュラと一緒に、もう一度飛ぶ。

俺はドラキュラとともに、ラードーンが封印されていたあの森に飛んだ。

「これは……」

ドラキュラは渋い声でつぶやき、まわりを見る。

「眷属が一人もいない。どういう事だ」

そして、俺を睨む。

「お前を部下から引き離した。ここはあそこと100キロ離れている」

「貴様……」

静かな怒りで俺を睨むドラキュラ。

ドラキュラは近くのバンパイアを強化する、復活させる。

ならば――引き離す。

「小賢しい真似を……」

俺を睨み、殺気を出してくるドラキュラ。

その反応を見て、自分の作戦――選択が大正解だったと確信し、心の中でガッツポーズした。