軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

61."真"・魔導戦鎧

夜、俺はアナザーワールドの中にもどってきた。

広くなった敷地、建てた家の外周だから、庭って言うことになるんだろうか。

その庭に椅子を持ち込んで、アイテムボックスと、大量の中級精霊、セルシウスを召喚した。

アイテムボックスの中にある大量の海水を真水と塩に分離するためだ。

村の人数が増えてきた。

ギガース、人狼、エルフ。

一番多いのはエルフで、その次が人狼、そしてギガースだ。

人間は俺一人、間違いなく一番少ない。

俺以外は人間じゃないが、生きるために水と塩が必要なのは人間と変わりはない。

その消費をまかなうために、大量に精霊を呼び出して生産させる。

俺一人でもディスティラリーでやれるが、精霊を複数召喚してやらせた方が、長い目で見て効率がいい。

そうやって呼び出した18人の中級精霊セルシウスに説明する。

「このアイテムボックスから海水が出る。その海水を真水と塩に分離して、アイテムボックスの中に戻してくれ」

セルシウス達は一斉に頷いた。

俺がアイテムボックスから海水を出すと、それに向かって水の精霊の力で真水と塩に分離させ始めた。

と、おもいきや。

一人だけ動かずに、俺をじっと見つめている。

「どうしたんだ? 分からなかったのか?」

「いえ、そうではありません。覚えていますか、私の事を」

「うん?」

「以前、進化させていただいたものです」

「ああ」

俺は頷いた。

精霊は数多く存在する、そして精霊召還魔法は無作為に――ランダムで精霊を呼び出す。

「そうだったのか。元気だったか?」

「進化させていただいたおかげで、私の世界が広がりました。本当にありがとうございます」

「どういたしまして」

「まだ不慣れですが、ものに憑依して、人間界に干渉できるようにもなりました。召喚ではない状態で、やり過ぎると精霊王からお叱りを受けますが」

「精霊王なんているのか……ちょっと待て、今なんて言った」

「え? やり過ぎるとお叱りを――」

「違うそのちょっと前だ。不慣れだけど?」

「ものに憑依、ですか?」

「そんな事ができるのか?」

「はい、中級精霊から。力が強ければずっと憑依していられます。世の中には精霊の力を宿したものが多く存在するのはそのためです」

「ああ、なるほど」

俺は少し考えた。

「ちからがあればいいのか?」

「え? あっ、はい」

「……力を上げてやるから、ちょっとの間協力してくれないか?」

「はい! 喜んで! お返しをさせてください!」

精霊は大喜びで即答した。

「アメリア・エミリア・クラウディア」

俺は詠唱して、消費魔力を高めるかわりに同時使用の魔法数を増やした。

「ファミリア――お前の名前はゼロ。セルシウス・ゼロだ」

使い魔契約の魔法をセルシウスにかけて、名前をつけてやる。

魔法の光がゼロを包み込んで。

「ああっ……」

ゼロは感激した。

自分の手をしばしじっと見つめて。

「ありがとうございます!!」

と、俺にものすごく感謝した。

「力があがったか?」

「はい」

「ものに憑依することは?」

「これなら出来ます!」

「よし……」

俺は更にノーム・サラマンダーを呼び出した。

アイテムボックスから大量に作って貯蔵した鉄を出して、溶かしつつ型を作る。

目の前にいるゼロ――セルシウスの姿を真似て、銅像――もとい鉄の像をつくった。

もちろん、ラードーンの魔力を同時に注ぎ込むことも忘れない。

「ゼロ」

「はい!」

「これに憑依してくれ」

「わかりました!」

ゼロは迷うことなく、鉄の像――魔導戦鎧の未完成品に飛び込んだ。

精霊の彼女は飛びつく直前に光の粒子になって、魔導戦鎧に吸い込まれていく。

今までは、鉄の像に名前をつけるだけだった。

それを更に改良した。

鉄の像に、名前をつけた精霊を憑依させた。

「ウォーターフォール!」

エルフのレイナが叫んだ。

直後、晴れ渡った空から、雲がまったくないのにもかかわらず、巨大な瀧のように大量の水が降り注いできた。

その水の量たるや、平らな地面に爆発の様なものを起こし、巨大なクレーターをえぐり出すほどだ。

その威力を見て、水の精霊のような姿――セルシウスの魔導戦鎧をつけたレイナ自身が驚愕した。

「エクス……プロージョン!!!」

少し離れたところで、人狼のクリスが叫んだ。

真っ赤に燃え盛る炎のような鎧を纏う彼女は、正真正銘の巨大な爆発を引き起こした。

直径十メートルの火球が渦巻き、一気にはじけ飛ぶ。

「ガイアクラッシャでござる!!」

そして、ギガースのガイ。

マッチョな肉体にゴツゴツした鎧を纏う彼は、思いっきり地面に拳を叩きつけると――その地面が割れた!

それぞれの種族のリーダーに、試作となる精霊の憑依した魔導戦鎧を渡してみたが、想像以上の威力だ。

「すごいですリアム様。これ、昨日のよりすごいです!」

「本当だよご主人様、あれですっごい強くしてもらったのに、これであたしは元の十倍くらい強くなってるよ」

「この力なら仲間全員を守れる。かたじけないでござる」

三人は一様に、手放しで喜んで、俺を称えた。

精霊の魔導戦鎧なら、ハイ・ミスリル銀を使わなくても、それと同等以上の力を得ることが出来る。

しかもこれは簡単に量産可能だ――まあ、俺の魔力じゃ、一日に二つ三つしか作れないが――それは問題じゃない。

魔力は回復出来るし、なんならレククロの結晶をかき集めれば良い。

「あっ……でもこれ、疲れる……」

「うん、昨日よりちょっと疲れるね」

「当然でござる、これほどの力ならば。それがしらが使いこなせるように精進する必要があるでござる」

「ふん、脳筋のくせに偉そうに」

「ならばイノシシはそのままでいればいいでござる。それがしは主に報いるために強くなるでござる」

「私もそうする」

「べ、べつにしないって言ってないでしょ! あたしだってご主人様のために強くなるんだから」

三人は仲良く言い合っていた。

これで……力は整った。

真・魔導戦鎧とでも呼ぶべきものをこれから量産していって、自分達の国を守る力を手に入れる事ができる。

と、リアムはいうが、認識が甘い。

鉄に命名する事も驚きだが、精霊に名前をつけた上で憑依させることは更に驚きだ。

それで生み出される力を、リアムは過小評価しすぎている。

ギガース、人狼、エルフ。

三つの上位種族で、戦えるものに「真・魔導戦鎧」が行き渡れば。

この時点でも、一国と渡り合えるほどの軍事力になる。

それをリアムは分かっていない。

ふふふ……だから面白い。

分かっていないリアムは、更に改良できる方法はないかと、隙あらば考えている。

現状に満足せず、魔法を探求し続ける人間。

これならいずれ、我も魔導戦鎧に使えると気づくのだろうな。

ふふふ……つくづく面白い人間だ。