軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

60.一番強い男

普通の鉄でも、ファミリアと名付けを組み合わせれば、魔導戦鎧を作れることが判明した。

俺は、作れるだけ作った。

それで一つ判明したことがある。

理由は不明だが、同じ名前は繰り返し使えない。

『名付けは人間が誰しも行える、原初の呪法だ』

ラードーンは前にも話してくれた言葉をもう一度繰り返した。

呪法だからこそ、同じものでお茶を濁したら力が宿らないのだという。

鉄は山ほどある、いくらでも追加生産できる。

俺の魔力も充分にある、休んだりレククロの結晶を使ったりすれば回復する。

名前だけは、そんなポンポンとは出てこなかった。

ちゃんとした名前をつけてやらないと、鉄からは魔導戦鎧にならない。

俺は脳みそを振り絞って、どうにかまずは15個。

エルフ、人狼、ギガース達に、五個ずつ配れる量を作った。

村の中の空き地で、鉄の魔導戦鎧をつけた者達が模擬戦をしていた。

魔導戦鎧を配ったのは、三つの種族から、それぞれ腕に覚えのある者達を優先した。

他の者達は模擬戦を見守っている。

二人ずつに分かれてたたかう模擬戦で、一組だけ「模擬」ではない、白熱した戦いを繰り広げている。

ギガースのガイと、人狼のクリスだ。

前からのライバル関係にある二人は、ファミリアと名付けによる進化、さらには魔導戦鎧で、超人バトルの激戦を繰り広げた。

その激烈さたるや、他の魔導戦鎧持ちでさえも、手をとめて、固唾を飲んで見守るほどだ。

「遅い、遅いよ脳筋! それじゃいくらやってもあたしは捉えられない」

「そなたこそ、そのもやしパンチではいくら当ててもそれがしは倒せぬでござるよ」

「なにおー!」

「ふんぬ!」

攻撃も熾烈だが、口げんかも同じくらい激しかった。

「やっぱり、仲が良いですねあの二人」

俺のそばに立っている、エルフのレイナがしみじみとそう言った。

「ああ、間違いなく仲がいい。あの二人にチームを組ませようと思う。少数で相手と戦うような場面に二人を一緒に放り込めば強そうだ」

「わかります。おそらく――『あたし以外の相手に倒されるんじゃないよ』『イノシシはそれがしの背中に隠れているといいでござる』とか、言い合いそう」

「あはは、なんか想像できるな」

二人の戦闘を眺めていると徐々に楽しくなってきた。

ふと、馬の蹄の音がした。

一頭や二頭じゃない、十以上はある。

それが重なって、かなりの音になった。

クリスとガイも戦うのをやめた。

この場にいる全員が一斉に音の方に振り向く。

馬に乗った――約二十人の男達がやってきて、俺達の前で手綱を引いて馬を止めた。

「おい見ろよ、あれエルフだぜ」

「すげえな、エルフがこんなに。急に現われた土地だからどんな魔境かっておもったけど、宝の山じゃねえか」

「こいつら全員売り払ったら一生遊んで暮らせるぞ」

男達は全員欲望丸出しの、下品な話をしていた。

その格好、そして今のものいい。

間違いなく野盗の類だ。

「おいお前ら!」

野盗の一人が馬の上でふんぞりかえって声を張り上げた。

「大人しくしろ、抵抗しなきゃ手荒なまねはしないでやるぞ」

と、一方的に宣言してきた。

しかたない、追い払うか――と思ったその時。

「ミーナ」

レイナが静かに口を開けた。

ミーナというのは、小柄なエルフの女の子の名前だ。

魔導戦鎧を優先的に与えた内の一人で、その魔導戦鎧をライトアーマーのように身につけている。あまりにも「ライト」で、下はミニスカートになっていて、強いと言うより可愛らしい。

レイナは、そのミーナに耳打ちした。

「わかりました」

ミーナは頷き、ゆっくりと野盗の男達に向かって歩き出した。

「へえ、いい心がけじゃねえか」

「でも足りねえよ」

「全員連れて行くから用意しろ」

男達は一斉に大笑いした。下卑な笑い方だ。

どうやら、レイナがミーナを「差し出した」とおもっているようだ。

だが。

ミーナはまっすぐ突っ込んだ。

まっすぐ突っ込んでいって、右のストレート。

一番前にいた男を馬ごと吹っ飛ばした。

「なにっ!」

「てめえ!」

その一発で男達は目が醒めて、一斉に武器を抜き放ったが、本気になってももう遅い。

ミーナは、つぎつぎと正面から突っ込んで、男達を殴り倒した。

三分もしないうちに、男達が全員殴り倒された。

「なかなかやるでござる」

「まっ、この程度のザコ、ご主人様の手を煩わせるまでもないね」

静観していたガイとクリスがそう言った。

他の魔導戦鎧持ちも全員動いていない。

ミーナが勝つって、信じ切ってたみたいだ。

その事に俺は頼もしさを覚えた。

素晴らしい事だ。

国を作っていくにあたって、戦力――防衛力をどうにかしないといけないと思ってたから、この戦いは魔導戦鎧の力を証明できて、俺はほっとした。

これくらいの力なら、もうちょっと急いで、あと10,いや20も作ればとりあえず自衛するに足りる力になる。

そうなると名前が――

「う、動くな! このガキがどうなってもいいのか」

考えごとをしていると、いきなり後ろから組み付かれた。

抜かれた剣が俺の首筋に押し当てられた。

野盗の一人が、この場で一人だけ、子供である俺を人質にとったのだ。

「あっ」

「あっ」

「あっ」

レイナ、クリス、ガイが次々に声をもらした。

「「「あーあー……」」」

他のみんなは、ため息交じりの声を漏らした。

男にとっては、それはまったく予想していなかった反応だろう。

「な、なんだよそれ! 本気でやるぞ! ぶすっと行くぞ――ぶげっ!」

俺は裏拳気味に拳を振って、その勢いでパワーミサイルを一発放った。

パワーミサイルは剣を砕いて、そのまま男を吹っ飛ばした。

体が宙にうき、放物線を描いて地面に吸い込まれる。

白目を剥いて、ビクビクとけいれんする。

「うん、やっぱりリアム様だわ」

「今の一撃が一番ダメージがでかかったでござるな」

「あご粉々だよあれ。もう再起不能だね」

レイナたち三人は、冷静に状況を説明した。

ミーナに殴られて吹っ飛んだが、意識は残った野盗達。

彼らは俺と、一撃で沈められた男を交互に見て。

ガタガタと震えだし、一部に至っては失禁までしてしまうのだった。