軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

410.時間の差

「お、お待ちください!」

恫喝が利いて、顔が青ざめたネクスタ一行。

それでも、って感じでネクスタが更に食い下がってきた。

「リアム陛下に引き合わせを」

「魔王様に?」

「はい! なにとぞ!」

「あらあら……」

シーラは更に目をすぅ、と細めた。

肉食獣が獲物を前に舌なめずりしているような、そんな印象を受ける眼差し。

それは勘違いではない証拠に、ネクスタ一行が一斉にすくみ上がった。

「わたくしでは話にならないから魔王様に直接ということなのでしょうけれど」

「い、いえ。けっしてそのようなことは――」

「僭上、ですわよ」

「――っ!」

連中はガツーン、とハンマーで脳天を殴られたような、そんな衝撃を受けたような顔をした。

せんじょうって言葉の意味はよく分からないが、反応を見る限りかなりきつい言葉なんだろうな。

さっきまで青ざめてた「だけ」のネクスタ達が、一斉にガタガタと震えだした。

シーラは平然としている、むしろ穏やかな微笑みを浮かべている。

完全勝利。

交渉のこの字も知らない俺でも、それが分かる位のものだった。

ネクスタ達が「急ぎ検討します」といって、ほとんど転がるような勢いで玉座の間から出て行ったあと。

俺とシーラの二人っきりになったから、シーラは普通の声の大きさで話しかけてきた。

「お見苦しい所をおみせしましたわね」

『いやいや、すごかった。交渉は完全勝利でいいんだよな、あれ』

「そうですわね……この場だけをみればそういうことになるのですが」

『どういうことだ?』

シーラの歯切れの悪さを不思議がった。

完全に肯定するわけでも、ましてや否定するわけでもない。

そんな反応を不思議に思った。

「この場ではやり込めましたが、結局なにも変わりませんわ」

『なにも』

「あの手この手と変えて、しぶとく食い下がってくると思いますわ」

『ああ……』

なるほどそういうことか。

うん、それはきっとそうだろうな。

なんというか、シーラがいう「あの手この手と変えて」っていうのがすごく分かるような気がした。

「ええ、あなたがずっとされてきたことですわ」

俺の「ああ……」でシーラは全てを察したようだ。

シーラのものになる前のパルタ公国、ジャミール王国、キスタドール王国。

この三つの国にいろいろとやられてきた。

シーラはきっと、その事も情報として知っているんだろうな。

それをまたやってくると、という推測のようだ。

『それだとまだまだ時間がかかる、ってことか』

「わたくしはあなたほど優しくないんですの」

『え?』

「のらりくらりやられたとしても容赦なくその都度叩きつぶしていくつもりですわ。だからそんなにはかかりませんわ」

『でもちょっとはかかる、か?』

「そうですわね、もうしばらくはかかりますわ」

『……脅せばいいのか?』

俺は少し考えた。

シーラがさっき、ネクスタ達にぶつけた「脅し」の内容と、俺がやられてきたこと、やってきた事をつなげて考えた。

最終的に事態を打開したのが【ドラゴンスレイヤー】をきっかけにした一件だということを踏まえて。

『ガツンとやる感じの脅しが在った方がいいのかもしれないって思うけど、どうかな』

「それはもう」

シーラはにこりと微笑む。

「あればベストですわ」

『分かった』

俺はそういい、深呼吸した。

魔剣リアムに憑依しているから厳密には深呼吸なんてしてないけど、意識は人間のままだから深呼吸するというイメージをした。

ぐるり、と意識を360度一周させて。

『ジャミールの都はたしか……こっちの方角だったな』

「ええ、そうですわ」

頷くシーラ。

何をなさるの? とは聞かれなかった。

俺が何かをするのを察しているが、その詳細を聞かずに見守っている、って感じになった。

『アメリアエミリアクラウディア』

前詠唱をする、魔力が瞬間的に倍近く膨れ上がる。

魔剣リアム(俺) の刀身の「足元」に魔法陣が広がる。

魔力の光が玉座の間を充満し、そして集束する。

『【バリスティックミサイル】』

魔剣リアム(俺) の柄、「頭上」から巨大な魔力の矢が空にむかって放たれる。

天井を突き破ってもグングンと上昇する魔力の矢が、雲の上に到達して、そこから 王都のある方角に向かっていく。

魔法の術者、放った俺の頭の中に軌道が浮かぶ。

王都に向かって、雲の上から放物線を描いて向かっていく魔法の矢の軌道が浮かんだ。

「まさか、直接都を?」

『ああ、宮殿を一部吹っ飛ばす。この速度だと5分後くらいに当るだろう』

「五分……ここからジャミールの王都まで5分ですの?」

『ちょっと遅いけど、まあ人間の足よりは速いから連絡はできないだろう』

「十二分に速いですわ。しかし」

シーラはそこで一旦言葉を切って、感心するやら、呆れるやらの、そんな表情をした。

「そんな事も出来ますのね。さすがですわ」

『脅しになるかな』

「充分でしょう。度肝を抜かれますわよ、きっと」

『そうか』

「念の為に確認の者を走らせますわ」

『ああ』

着弾まで俺のイメージ通り、丁度五分くらいだった。

その結果の確認が報告されたのは二日後で、 連絡(、、) もそれくらいだった。

その時間の差が、よりネクスタ達を震え上がらせるのだった。