軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

357.ブルーノの相談

次の日、ブルーノに来てもらった。

宮殿の応接間で二人っきりで向き合って、簡易版蓄音石の話をした。

「――って訳だ兄さん、大量につくるとなると時間制限のついた、性能が弱いものになってしまう」

「さようでございますか」

「その分安くするし、量は今までよりも多く作れるけど――大丈夫かな」

グレース達の現状を説明する。

最後まで聞いたブルーノは、テーブルに額が付くくらい深々と頭を下げた。

「まったく問題ございません。むしろさすがは陛下だと感服しきりでございます」

「さすが?」

何でだ? と俺は首をかしげた。

「その前に……陛下、一つうかがいたいことが」

「ん? なんだ?」

「更に性能を下げた……例えば一度きりしか使えない蓄音石にすることは可能でしょうか。もちろん、ダークエルフの皆様が作りやすくなる事も含めまして」

「それは……ああ、簡単にできるぞ」

少し考えて――考えるまでもないことだが、少し考えて、ちゃんと魔法のシミュレートをして、行けると確信して答える。

「一回で壊れる程度の物なら、ダークエルフたちなら100%成功するくらい簡単なものになる。他の魔物も――たとえばすらるんとかすらぽんとかでもいけるだろうな」

「さようでございますか。であれば」

ブルーノはにこりと笑った。

「この廉価版の蓄音石でますますアメリア様の歌をより市井の隅々まで届けることが可能となります」

「どういうことなんだ?」

「いまより下がれば……そうですな、酒場のよっぱらいが気分がいいから一曲買っとくか、という気軽さで行けるでしょう。子供のお小遣いでも買えますし、その日暮らしの者達でも月一、週一のちょっとした贅沢で買えます」

「……似たような話をしってる」

「そうでございますか?」

「ああ。山で柴刈りを生業にしてて、街にそれを売りに行った父親が、帰りにあめ玉を一つ娘に買って帰る――そういう感じだろ」

「さすがは陛下、下々の事まで知悉していようとは、感服しきりでございます」

「なるほどなぁ」

怪我の功名っていうのかな、こういうのって。

ダークエルフ達が良いものを作るのが難しいから簡単なものをつくったが、それが違う形で上手くはまるみたいだ。

「しかし……本当にそれ上手く行くのか?」

「と、申しますと?」

「いやな、簡単なもの、質の悪いものをつくっても儲かるなんて、そんなのはみんな出来るだろ」

リアムになる前の人生を思い出す。

質の悪い作物は値段を下げてても売れないことが多かったことを思いだした。

「さすが陛下。はい、通常であればその通りでございます」

「なんでこれが上手く行くんだ?」

「要因は大まかにいって二つ、いえ、二人と申しましょうか」

「二つ……二人?」

「まずはアメリア様。現状、蓄音石に歌を乗せる事に関しては、アメリア様は陛下のご命令――失礼、頼みしか応じないでしょう」

「……なるほど」

ブルーノが言い換えた言葉が気になったが、俺の頼みしか聞かないというのはもしかしたらそうかもしれないと自分でもちょっとおもう。

「もうひとつは蓄音石の技術。これは現在陛下しかもっておらず、他に商売敵がおりません」

「商売敵が……いない……」

「ですので売り方はこちらでいかようにも決められます」

「なるほど」

俺は少し考えた。

「……って、事は」

「はい?」

「蓄音石の作り方のゲームブックに入るのはこの国の住人……まあ、【ファミリア】で使い魔になった魔物に限定した方がいいな。ゲームブックだけならどっかに流れるかもしれないし」

「さすが陛下です! それで完璧でしょう」

「……うん」

最後は魔法の運用だから俺でも意見が出せた。

その意見をブルーノが受け取って、新しい蓄音石の事をまとめていった。

「じゃあもう一回蓄音石の技術を改良したらグレース達に作らせる。無理させてまではしないから、一ヶ月くらい待ってくれないか」

「なにも問題はございません」

ブルーノは頭をさげた。

「技術は陛下が独占しておられます、時間は事実上無限にございます」

「そうか」

蓄音石の話が終わった。

ブルーノは「ごほん」と、一つ咳払いをした。

話題がかわるのか? と思って身構えていたら。

「陛下に申し上げます」

「うん? 今度は何だ兄さん」

「実はレイナ様よりご相談を受けていまして……」

「レイナから? 何かあったのか?」

「陛下に目を掛けて頂いている取引ですが、これまでお支払いした金貨がそろそろ金庫に入りきらなくなったとの事です」

「へえ、そうなのか。じゃあ金庫の増築をするってことか?」

「当然まずはそのようなはなしになりますが、レイナ様からのご相談では、今後更に増えていくのであれば金貨でもかさばる、とのことです」

「金貨でもかさばる……か」

言葉をリピートするが、その感覚はちょっと分からなかった。

現金というのは、細かい違いもあるがざっくり銅貨銀貨金貨の三種類がある。

銅貨は日常の買い物とかに使われて、銀貨はちょっと大きい買い物に使われる。

金貨はその価値から買い物にはほとんど使われずに、貴族同士とか大商人同士とか、大きな金の移動が必要な時にだけ使う。

金貨だと100枚もあれば家が一軒買えてしまうレベルの価値だからだ。

かさばらないから大きな金の流れの時に使う金貨でもかさばる――ってのがちょっと感覚が分からなかった。

「レイナ様がいうのは、金銭はもともと人間が生み出したシステム、なら金貨以上にかさばらないシステムはないのか? というご相談です」

「それはあるのか?」

「ございます……が、私では扱いかねる仕組みとなってしまいます」

「そうなのか」

「お役にたてず申し訳ございません」

ブルーノは深々とあたまをさげた。

さっきは当らなかったのが、今度はゴツンとテーブルに額をたたきつける勢いで頭をさげた。

「いや、いいんだ兄さん。とりあえずどうしてもかさばるのなら俺が【アイテムボックス】で対処する」

「本当にもうしわけございません」

ブルーノは更に頭を下げた。

顔を上げたブルーノ。

それで話が終わったって顔をしているが、まだ別の話がある、と言う顔をしたままだ。

「まだ何かあるのか?」

「はい……ここからは個人的な相談で、陛下にお話して良いものか……」

「いいよ、兄さん。兄さんは他人行儀過ぎる」

俺は笑いながらそう言った。

ブルーノ、リアムの兄。

気が付いたらリアムになっていた俺にはブルーノが兄という感覚はまだ薄いが、その代わり仲間になってくれているという感覚はある。

ブルーノの相談なら――って思っている。

「ありがとうございます。実はオヤジ――父の話なのですが」