軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

358.もうひとつの方法

「父さんがどうかしたのか?」

聞き返しながら、不思議に思った。

俺もそうだが、ブルーノもいまや別の家の人間、別の家の当主だ。

俺は転生したこともあって、ほとんど間をおかずに自分から家をでたが、ブルーノは婿養子に出されたという形だ。

ハミルトン家と敵対までいかなくても他人として接するようにしているとおもった。

それがいまは――なんだろう、何かを心配して、案じているような顔だ。

それが不思議になって聞き返すと、ブルーノはますます困った顔をした。

切り出したは良いものの、本当にこのまま話をしていいのか、みたいな顔をしている。

「兄さん、とりあえず話を聞かせてくれ。それじゃなにも分からない」

「も、申し訳ございません!」

俺にせっつかれて、それで俺の機嫌を害したと思ったのか、ブルーノは慌てて背筋をピンとのばした。

そしてようやく語り出す。

「実は、妹のことなのです」

「妹?」

「はい……輿入れの件で……」

「ああ」

その事か、と思いだした。

俺が「リアム」であると気づいた、つまり転生しての最初の記憶が妹が生まれたことで開かれたパーティーのまっただ中だったのだ。

「たしかジャミール王国の貴族は何もなければ三代まで、四代目に移るまでに功績をあげれば期限延長……だったっけ」

「はい。それで父は妃として妹を嫁がせることで期限延長を図ったのです」

「その話がそもそもよく分からない。それが一番簡単な功績だって聞かされたけど、そんなんでいいのか? って前から思ってた」

「……陛下もご存じの通り、父は最初、功績を挙げようとして大失敗しました」

「ああ、そうだったな」

「父と同じ失敗をしたものは過去にも多く存在します。父の失敗はまだ取り繕える失敗だったのですが、当然――」

「あー……たしか失敗したけどどうにか封印だけはしたんだったか。……そうか、同じことでも封印が失敗して魔物が暴れ出した事もあったわけだ」

「はい、その度に民に大きな被害がでました」

「なるほど」

「三代ごとではありますが、ジャミール王国の貴族は末端まで広げれば100人は優にこえます、そうなれば毎年のように賭けにでる貴族が現われます」

「……なるほど」

「常にそれをやられてはたまらない、とは言え発意を考えればたやすく無くすことの出来ない伝統でもあります。そこで生まれたのがこの形なのです」

「なるほど、三代ごとに娘をさしだせば危険を冒す必要はないわけか」

「はい」

「なるほど」

腕組みして、頷く。

まだちょっと納得がいかないところもあるが、それが何なのか上手く言葉に出来ていないから言わずにいた。

代わりに、話を元にもどした。

「で、父さんのそれがどうしたんだ? たしか……最後に聞いたのは自分で妹を送り届けにいく、だったかな?」

「はい。それが現在暗礁に乗り上げております」

「なんでだ?」

「…………」

ブルーノは答えなかった。

下唇をかんで、言いにくそうにした。

「兄さん」

「は、はい!」

「知っての通り俺は魔法以外はからっきしの男なんだ。はっきり言ってくれないと俺には何もわからない」

「た、大変失礼しました!」

ブルーノは立ち上がるほど慌てて、そのまま頭を下げて謝った。

「いいんだ、で?」

「はい……」

ブルーノはソファーに座り直して、俺をまっすぐみつめ、意を決した様子で口を開く。

「陛下が原因でございます」

「俺が?」

「もともとはいわば期限延長の輿入れ。いい方は悪いですが事務的に話がすすみます」

「なるほど?」

「しかし、父の一子である陛下、ハミルトン家と血のつながりがある陛下の存在が問題視されるようになりました。陛下への懐柔派と反対派で本気の政局に発展するようにいたりました」

「問題視?」

「陛下の存在が大きくなりすぎたため、賛成も反対も、双方『慎重にすべし』という一点では一致してしまいました」

「それで時間がかかっているのか」

「はい……急を要する話ではありませんが、かといって現状出口も見えません。既に私は別の家の人間ですが、さすがに……と」

「なるほど。こういう時は普通どうするんだ?」

俺は率直に聞いた。

普通に分からないから教えてくれ、と付け加えた。

「政局に発展しましたので、通常は政治工作、運動をすることになりますが」

「が?」

「父にはおそらく……それが出来るほどの資金はありません」

「お金の問題なのか?」

「最初の課題といいますか、軸足といいますか」

「ふむ、それなら簡単だ」

「え?」

ブルーノは目を見開いて俺をみた。

即答で「簡単」といったのがよほどびっくりしたようだ。

「金ならある、いま、余るほど」

「……あ」

「それを父さんに渡せばいいんだろ?」

「し、しかし、それは――」

「アメリアさんが最近やってた」

「え?」

「稼げるようになって、親に渡せる様になって、それでご両親が喜んでた、と」

「……通常の家ならそうでありましょう」

「普通はただしいことなんだろ? ならアメリアさんの真似をしたい」

「……さようでございます」

「金額的にはたりそうか?」

「もちろんでございます、むしろ陛下の――国庫にある分の4分の1程度でことたります」

「わかった、すぐに父さんに連絡を出す」

俺がいうと、ブルーノは見るからにほっとした。

『ふふっ、迂遠なことをする』

「ラードーン? どういうことだ?」

俺が聞くと、ブルーノも驚いた顔をした。

話がまとまったと思ったら――という驚きだ。

『そのような事をせずとも、もうひとつ方法があるだろうに』

「もうひとつ方法?」

『お前が最近に見た――一番新しく目にした貴族の動きはなんだ?』

「一番新しくめにした貴族の動き? ……あっ」

少し考えてはっとした。

そうか、それがあったか。

ヒザを叩く俺、状況が飲み込めずに訝しむブルーノ。

そして、十分後。

「いいですわよ」

呼び出した契約シーラが実にあっさりとそういって、ブルーノはますます目をかっぴらいてこまりはてるのだった。