軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

33.勲章と金貨3000枚

「その神聖魔法で魔竜を討伐したのか?」

「いや、そういうわけじゃないけど……」

どう答えるべきか迷った結果、話を逸らすことにした。

「それよりもひめ――王女殿下。ここへはどうして?」

「ハミルトン卿――ああ、そなたも今はハミルトン卿だったな」

スカーレット王女はクスッと笑った。

呼び名に「卿」ってつくのは、王族が貴族を呼ぶときに使われる。

それくらい、中身が平民の俺でも分かる。

演劇でそういうのをよく見る。

今や俺も男爵、父上と同じで「ハミルトン卿」なのだ。

「そなたの父に伝言を頼んだであろう?」

「あ、そういえば来るって」

「うむ」

「えっと……それで、用事は?」

「まずは、勲章だ。魔竜討伐の功績は大きい、かといって領地も持たない少年に男爵以上をすぐに授けるのは老人どもがうるさい。しきたりだとかなんとかな」

「はあ……」

結構、複雑なルールがあるみたいだ。

「というわけで、まずは勲章を授けることにした。私の一存で勲三等鳳凰勲章をやれる」

「勲章、ですか」

いまいちありがたみが分からない俺はちょっと戸惑った。

「受け取れ。魔竜を討伐したという事実で民を安心させるには、討伐の英雄の存在がセットで必要だ」

「あっ……なるほど」

それは分かる。

貴族の五男――この肉体に乗り移るまでに住んでた近くに一度、モンスターが出たことがあった。

しばらくの間村中それに怯えてたけど、ある日退治されたって噂が流れた。

最初は信じられなかったが、俺でも名前を知っている有名なハンターがやったって聞いて、安心した記憶がある。

うん、スカーレット王女のいうとおりだ。

討伐には、討伐した人の存在が必要だ。

「これも貴族の務め、ですね」

民を安心させるという結構重要な仕事だ。

「そういう風に考えられるのは嫌いではないぞ」

「えっと、ありがとう」

なんか今のでも褒められた。

「次に、話を聞きたい。どうやって魔竜を討伐したのだ」

「どうやって?」

「場合によっては英雄譚に仕立てる必要がある」

「あっ……」

それも分かる。

退治した時のエピソードが詳しければ詳しいほど、人々は安心するものだ。

スカーレット王女の言い分はすごくよく分かった。

俺は気を引き締めて、ラードーンの一件の話をした。

森に駆けつけて、三体のラードーンジュニアと対峙する。

ラードーンの子で中型犬サイズの三体に苦しめられて、周りもほぼ全滅している中、とっさにアナザーワールドを使ってラードーンジュニアを倒した。

途中までは、スカーレット王女は真顔で、固唾を飲んで俺の説明を聞いていた。

しかし、ラードーンが俺に「入った」というのを聞いた辺りから表情が変わっていった。

最後まで話すと、スカーレット王女は最初とは違う意味で顔を強ばらせていた。

「あの魔竜が人間に協力を……? しかも神聖魔法?」

「えっと、はい」

「そんな馬鹿な……いやしかし、今のは間違いなく神聖魔法。となると……常識が間違っていた……?」

信じられない、って顔をするスカーレット王女。

彼女はしばらく深刻な表情で考え込んだ後、その表情のまま俺をみつめて。

「魔竜――いや、その……ラードーン? の力を、完全に制御出来ているのか?」

「制御っていうか……普通にしてるけど……」

予期しないタイミングで話かけてくる事はあるけど、今のところ、俺の中で静かに過ごしているつもりのようだ。

そこは、何となくわかる。

証拠をみせろって言われると困ってしまう、本当になんとなくってレベルだけど。

ラードーンは、俺が追い出さない限り俺の中に居続ける。

そう、感じている。

俺の答えを聞いて、スカーレット王女はまたしばし俺をじっとみつめてから。

「その話、しばらくの間黙っていてくれ」

「黙ってる?」

「誰にも話すな」

「わ、わかった」

スカーレット王女の剣幕に押し切られた。

元々誰かに話す気はないから、俺は戸惑いつつも、スカーレット王女の「命令」を受け入れた。

次の日、屋敷の玄関ホール。

スカーレット王女の部下が、大きな箱を三つ持ってきた。

長方形で、上がドーム状になっていて、パカッと開くことが出来る。

いわゆる宝箱という感じの箱だ。

それが三つ。

持ってきた人間は、全部を一斉にパカッと開けた。

「き、金貨だわ」

「こんなにたくさん……」

「何百……いいえ、何千枚あるの?」

一緒に出迎えた、屋敷のメイド達がざわついた。

俺も内心、動揺していた。

「これは……?」

金貨を運んできた、スカーレット王女の部下の、その隊長らしき男に聞く。

「殿下からのご下賜である。魔竜討伐を称えてのご褒美である」

「魔竜討伐!?」

「なるほど……」

「そんなに多くの褒美がもらえるすごいことだったの……」

メイド達は、納得するものもいれば、驚く者もいる。

「……ああ」

一方の俺は、違う意味で納得した、そしてびっくりしていた。

褒美は、もうもらっている。

昨日王女から直接、勲章をくれるって言われていた。

なのにこの3千枚の金貨。

口止め、という言葉が普通に頭に浮かび上がってきた。

昨日、去り際に「絶対に誰にもいうな」って念押しされた。

あれの口止め料だ。

金貨3000枚分の口止め料。

その気になれば屋敷が一つ建つほどの額。

この額が、事態の大きさと――

今の俺という人間の重要性を物語っていると、感じたのだった。