軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

32.オンリーワンの魔法使い

帰宅した俺は、リビングで父上と対面していた。

書斎ではないのは、今や俺が父上と同格の存在――貴族同士だというのが影響した。

男爵家の当主ともなれば、例え実子でも、主従関係が強調される立ち位置になってしまう書斎は使えない。

家の主人と来客――という形になるリビングをつかった。

その父上は、ものすごく複雑な表情で俺を見つめている。

それもそのはず、ラードーンの一件は父上にとっても苦い想い出であるからだ。

父上が失敗して諦めて、アルブレビトが暴走してやらかして。

それを、 別の家(、、、) の人間である俺が解決してしまった。

複雑な想いを抱かないはずがない。

「よくやった……いや、礼をいう」

「はあ……」

「あのままではこの地が大変な事になっていた、アルブレビトの――尻拭いをしてくれて、礼を言う」

最後らへんは小声になっていた。

言いにくそうだが、言わなきゃいけない、って感じを受けた。

なんというか、貴族の「難しさ」を垣間見た気がした。

「気にしないで下さい。放っておけない事態でしたから」

「そうか」

「それで……兄上はどうなるのです?」

「ああ」

父上は頷いた。

こっちは話が簡単だ、といわんばかりにスルッと答えた。

「アルブレビトはしばらく謹慎させる。場合によっては……いや、とにかく謹慎だ」

「そうですか」

俺はそれ以上追求しなかった。

これを聞いたのは、街に戻ってくる途中、ギルドマスターから「最悪廃嫡もあるかもしれない」って聞いたからだ。

だからそれを聞いてみた。

今すぐにというわけではないが、その可能性もある。

貴族の長男の、廃嫡。

アルブレビトのやらかしがそれほど重いものだと改めて思い知った。

アルブレビトの話を挟んだのがよかったのか、父上はすこしだけ表情が楽になって、普通に話してきた。

「ジェームズ殿もまだこの街に滞在なさっておる。この話もいずれ『中央』に伝わる。誰かが表彰にくるだろう」

「表彰ですか?」

「魔竜の討伐だ、そうなるだろう」

父上も、そしてアルブレビトも功績のためにって狙ったラードーン討伐だ。

その脅威を取り除いたのだから、表彰される。

俺はなるほど、と頷いたのだった。

この日の夜、俺は夢を見た。

朝に起きた後もはっきりと覚えているような、不思議な夢。

夢の中で、俺は新しい魔法の練習をしていた。

使っているのは、魔導書ではない。

そして、指輪のマジックペディアでもない。

俺の右手だ。

右手の甲にある、ドラゴンをあしらった紋章。

それを使って、俺は魔法の練習をしていた。

起床してからしばらくたっても、それははっきりと覚えていた。

夢は普通すぐに忘れてしまうものなのに。

ベッドの上で、紋章をしばらくの間じっと見つめ続けた。

そして、おそるおそる、マジックペディアにする感じで、紋章を「使って」みた。

すると、二つの魔法の情報が頭に流れ込んできた。

マジックペディアと同じだ。

これは本物だ、と、俺はベッドから飛び降りて、さっさと着替えて朝飯も食べずに、林に駆け込んだ。

魔法の練習をしている、いつもの林。

いつもの場所にやってきて、魔法を練習した。

まずは二つある内の片方だ。

今までの魔法練習と同じように、魔力の使い方とかその他いろいろを、その通りにやった。

発動はしない、だけどわかる。

やり方はあってる、このまま繰り返していけば良い。

アナザーワールドの時と一緒だ。

そして、アナザーワールドと同等か、もうちょっと難しい感じだ。

つまり時間がかかると言うこと。

最初の発動も、完全にマスターするまでも。

まあ、そんな事は問題じゃない。

時間をかけて、繰り返しやっていけば身につくのなら、今までと何も変わらない。

俺は、その魔法の練習を続けた。

途中で、紋章が俺の手についてるから、魔導書や指輪と違っていつでも持ってる状態だから、マスターは発動時間の長さだけかもしれない、と気づいた。

そんな事を思いながら、とにかく練習を続けた。

昼になって、日がおちて、朝日が昇る。

今まで通り、集中して、のめり込んで練習した。

そして、次の日の昼。

魔法は、発動した。

今まで見た事の無いような、神々しい光の後に、一匹の小さなドラゴンが召喚された。

あの森で戦った、ラードーンジュニア。

下級ドラゴン・ラードーンジュニアの召喚魔法だ。

呼び出したラードーンは、そのサイズもあって、中型犬的な可愛さのまま、俺の前にちょこんと座っている。

戦ったときの強さを思い出す。

ラードーンジュニア召喚、マスターすればすごい戦力になりそうだ。

「神聖魔法……だと?」

「え?」

いきなり人の声がして、びっくりして振り向いた。

そこに、スカーレットがいた。

第一王女スカーレット・シェリー・ジャミール。

何故か彼女がそこにいた。

「王女様……?」

「本当に、神聖魔法なのか?」

「え?」

「今の魔法だ」

「はあ……神聖、魔法?」

何の事か分からなかった、が。

(人間はそのように呼ぶらしい)

頭の中からラードーンの声が聞こえてきた。

なるほどそうなのか。

「そうらしいけど、どうしたんだ?」

「信じられん……、神聖魔法の使い手がいるなんて。しかもこんな幼い子供が」

「えっと……?」

神聖魔法って、そんなにすごいものなのか?

スカーレット姫が、こんなにびっくりするなんて。

後から知った事だが、魔法の才能が百人に一人、氷の魔法が千人に一人――というのと同じように。神聖魔法というのは

『世界に一人いるかどうか』

という、とんでもない希少なものらしかった。