軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

323.似た者同士

「鑑定のものが驚愕していましたわ」

十日空けて、再び来訪したシーラ。

今度は迎賓館で普通に向き合った。

「それはいいんだけど……」

シーラの開口一番がほとんど頭に入ってこなくて、逆に彼女から少し離れた所の地面をちらちらと気になってしまう。

「なんですの?」

「あれで……いいのか?」

俺が「正式に」聞くと、シーラも俺がみてる方に目を向けた。

そこには前の時、10日前と同じように魔剣クリムゾンローゼが地面に無造作におかれていた。

まるで部屋の片付けができない人間がするような無造作な置かれ方だ。

これで部屋に生活感があればなにかしらのものに埋もれてしまうだろうな……と簡単にそういう光景が想像できた。

「10日たっても役に立つ方法を提案すら出来なかったので、お仕置きですわ」

「ああ……」

なるほどとおもった。

前回、シーラは魔剣クリムゾンローゼをつかって俺に挑んできた。

それで勝てなかったから次を、としてたのがまだダメだからという訳か。

そういうことならと、そもそもよその主従のことだし、と。

クリムゾンローゼの刀身が波打ってて、雨の日に捨てられた子犬の様なもの悲しさがあったが、気にしない事にした。

「それはそうと……鑑定って?」

「ええ、数日前に頂いた古文書。あれを古物に詳しい人間にみせたら驚かれましたわ」

「へえ」

「間違いなく200年近く前のもの、紙もインクも年代を重ねたものしかだせない『古さ』。なのにそこに確かに私の御先祖様のことが書かれていて驚きだと」

「200年近くおいたのは確かだからな」

狙い通りに成功したことに俺は少し嬉しくなった。

【ダストボックス】の中に200時間近く置いて、作ってから200年くらいの文書に仕上げた。

「魔法の鑑定は?」

「当然しましたわ。魔法での偽造は真っ先に考えられる事ですもの」

「結果は……大丈夫だったんだな」

「ええ」

はっきりと、力強く頷くシーラ。

俺も同じように頷きかえした。

それは最初から思っていた事で、狙っていた事でもある。

シーラのあの古文書――家系図を「本物に見せる」のが今回やろうとしたことだ。

信じられない本物が出てきたら当然真贋の鑑定に掛けられて、魔法面でのチェックも当然される。

どういう方法でチェックされるのかを聞けば、それに合わせた魔法を編み出すことはたぶんそんなに難しくないのだが、それよりも間接的にやった。

魔法で直接何かをしたわけじゃなくて、魔法で時間経過が早くなる空間に放り込んだことで、ちゃんと「200年経過した古文書」を作りあげられた。

あの家系図には直接魔法を掛けていないし、そもそも【ダストボックス】で出し入れしたものは、酒の醸造の経験から「魔力がかからない」ことは前から確認している。

だから思い切ってそれをやって、結果成功した。

「ってことは、あれは使い物になるってことか」

「もちろんですわ。むしろ正統性が強まりましたわ」

「それは良かった」

「あなたのおかげですわ」

「ああ」

「……いずれちゃんとお礼はしますわ。私なりの方法で」

「お礼か、そんな大げさな話でもないのに」

「私は恩知らずではありませんわ」

『させてやれ、借りを作りっぱなしではプライドに差し障る人種だ』

お礼……恩知らず……恩返し。

そんな大げさな話はいいからと言おうとしたが、ラードーンが口を開いてアドバイスをしてきた。

プライドに差し障る、といういい方で妙になっとくした。

シーラはプライドが高い女だ。

そんなシーラのプライドに差し障るのなら、お礼を固辞するのは良くないと思った。

「分かった、楽しみにしてる」

「ええ、楽しみにしてなさい。恩は遠くから返しなさい、が先人の教えですわ」

「恩は遠くから、か」

「遠くには多く返しなさい、とも教わりましたわ」

「どういうことだ?」

「簡単にいえば、同じ恩でも身内なら口頭でいいところを、他人なら大きくかえしなさい、ということですわ」

「へえ……」

面白い発想だった。

しかし「他人」や「遠く」により気合を入れて恩返しした方がいいという話は何となくわかる。

その方がいいかもしれないってのは感覚でなんとなくわかるのだ。

「それだと他人に借りを作るのは効率がわるいな……むっ」

「どうしたんですの?」

「……」

シーラが聞き返してきたが、自分の言葉に引っかかりを覚えた俺は、自然と視線が真横に――うち捨てられている状態の魔剣クリムゾンローゼに向けられた。

「あれがどうしたんですの?」

「……もしかしたら」

「?」

「シーラがもう少し強くなるかもしれない」

「……詳しく、聞かせてくださいまし」

シーラは目を光らせて、食いついてきた。

恩返しの、恩。

新しい家系図を古文書にする話をした時よりも、シーラははるかに興奮した様子で食いついてきた。

その事がとてもシーラらしいとおもったし。

『ふふっ、人間の中でもっとも相性がよいのかもしれんな』

ラードーンもそんな事を言ってきた。