軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

322.古いだけのもの

俺は少し考えて、いった。

「シーラがパルタ大公になるのならたすかる、結構本気で」

「あら?」

シーラは目を輝かせつつ、どういう意味? と言わんばかりの表情で俺を見つめた。

「仮に、後に俺を裏切るにしても、シーラならまわりくどい事をしないで直接俺の首を取りにくると思うから」

「あら、そんな事を言い切っても大丈夫ですの? わたくしも搦め手くらいは使いますわよ。いいえ、むしろそっちの方が得意ですわよ」

「得意かどうかは分からないけど――」

俺はシーラを改めて見つめた。

まだ―― 感触(、、) はこの手に残っている。

「――俺には直接くるだろうとおもう」

「ふむ? その根拠は?」

ラードーンも不思議がって、聞いてきた。

「直接力でぶつかった――殴り合ったからだ」

俺は右手の拳をあけとじして、手に残った感触を確かめつつ、更に続ける。

「最近何となく分かるようになったけど、魔力にその人の性格って結構でてるもんだ」

「ほう」

「根拠は殴り合った結果ってのが説得力に欠けるが、シーラはそうなったとき直接俺に突っ込んできてくれる。そう思う」

「それでいいんですの?」

「ああ」

俺は肩をすくめ、苦笑いした。

「三カ国が今までやってきた事を考えれば、まっすぐ首を取りに来てくれるだけでもかなりありがたい」

俺はそう言った、本気でそう思っている。

【ドラゴンスレイヤー】でラードーン達を狙ったり、アメリアの親を人質にとったり。

そういうのをやられるよりは、一直線に俺を狙ってきてくれた方が助かる。

「だから、シーラがパルタ大公になるのは助かる」

「なるほど。そういう事ならば異論はない」

「実際問題、どうやってなるんだ?」

俺に手伝えることは? と含ませながら聞く。

「パルタ大公の伝統配下は半数押さえましたわ」

「伝統配下?」

聞き慣れない言葉に首をかしげて聞き返したが、シーラは詳しい説明をする事なく話を先にすすめた。

「それにわたくしの家系図も作らせました。200年前、私の先祖がパルタ大公と繋がっている家系図ですわ」

「つながってたのか」

「作らせましたわ」

「……?」

「ふむ、つまりは『新しい古文書』という訳だな」

「ええ、そうですわ」

シーラはにやりと笑った。

「どういうことだ?」

「人間がよくやることだ。建前と正統性を主張するため、今回でいうと家系図に本来存在しない血筋を書き加えるものだ」

「ええ、それをもって各伯爵が『シーラ様こそ正統なパルタ大公』と主張し、それで戦争を起こすのですわ」

「そんなのでいいのか?」

「ええ、それに勝てばいいのですわ」

「いや、味方はともかく、敵側から『それは偽物の家系図だ!』ってならないか?」

「みんな思いますわ、ですが、公言まではしませんわ」

「なんで?」

「建前が口実であることは皆理解している、ですので大した反発はありませんわ。最後に勝てばいいのですし」

「はあ……」

「うむ、それに今回の場合、まわりがトリスタンを切りたがっている、わざわざ指摘することもあるまい」

「ええ。家系図が本物ならより味方をつくれますが、偽物でも勝敗がつくまで、今回の場合誰も何も言いませんわ」

「……ほんものならより良いのか?」

俺は少し考えて、シーラに確認をした。

そう聞かれるとは思っていなかったのか、シーラは一瞬きょとんとした。

「ええ、それは、まあ」

「何を考えているのだ?」

ラードーンが聞いてきた。

「本物はもしかして作れるんじゃないかっておもって」

俺がいうと、ラードーンとシーラは互いを見て、首をかしげるのだった。

「これでよろしいんですの?」

しばらくして、いったん部屋を出て行ったシーラが、一枚の紙をもって戻ってきた。

ちなみに魔剣クリムゾンローゼとやらも、一旦は持ち帰ったけど、また連れてきて部屋の隅っこに放り出している。

丁寧に扱ってるのかぞんざいにあつかってるのかよく分からない感じだ。

戻ってきたシーラは紙をテーブルの上に差し出す。

手に取って眺める、それは家系図、シーラがいう自分とのつながりを示すパルタ大公家の家系図だった。

羊皮紙をつかって作られたもので、ちゃんとしたものだぞ、とアピールしているように見えた。

「うーん、やっぱりあたらしいな」

「ええ、作ったばかりの古文書ですもの」

シーラがいって、俺はますます苦笑いした。

作ったばかりの古文書、新しい古文書。

説明をきいて理解はしたがまだちょっと「これってどうなのか?」と思っている。

が、そんな気持ちをまるっと、いったん忘れることにした。

「よし。これ、手を加えていいのか?」

「ええ……そのために持ってきましたのですが。何をなさるんですの?」

「【ダストボックス】」

俺は魔法を唱えた。

魔法【ダストボックス】の中に手を入れて、タルを一つとりだした。

「それは?」

「シーラが取りに行った直後につくったブドウジュース」

「ワインの仕込みということですの?」

「ああ」

俺は頷き、タルをあけた。

瞬間、ワインの芳香が拡散する。

「これは……ワイン? え? 造ったばかりだと……」

「ああ、この【ダストボックス】という魔法のなかにいれて置けば一時間で一年経過する。だから――」

俺はうけとった羊皮紙をダストボックスにいれる。

「この中に一週間入れて200年くらいの古いものになる」

「……あ」

ハッとするシーラ、頷く俺。

そう、本物かどうかは別として、

作られて200年たった古文書ならつくれるわけだ。