軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

318.超反応と大魔法

「むっ!」

目の前から消えたシーラ。

考えるよりも先に体が動いた。

【アブソリュート・マジック・シールド】

【アブソリュート・フォース・シールド】

対魔法、対物理。

何が来ても防げるように、二種類のシールドを数十枚展開した。

ガガガガガガガガ――。

直後、耳をつんざく破裂音が鳴り響いた。

決してシーラを侮っていない、むしろ念入りに展開していた数十枚のシールドが一瞬のうちに全て破られた。

しかもどっちか片方だけじゃない。

対魔、対物。

両方のシールドが分け隔てなく全て砕かれた。

「なぜ――!」

原因を考える余裕はなかった。

すぐさままた複数のシールドを展開した。

二種類のシールドを、交互にサンドイッチにする様にして、前方だけに展開する。

数十層はあろうかという、めちゃくちゃ長いサンドイッチを前方に突き出した形になった。

「こざかしいですわ!」

正面、シールドの向こう。

一度足をとめて姿を見せたシーラが剣を構えて真っ向から突っ込んできた。

そして――また。

障壁が立て続けに割られていく音がこだまする。

【アブソリュート・フォース・シールド】そして【アブソリュート・マジック・シールド】。

「絶対」の名前を冠する二種類の魔法障壁は、対象に対して絶対的な防御力を誇る一方で、逆位相の力に対しては無力という性質も合わせもっている。

フォースシールドには魔法を、マジックシールドには物理を。

それぞれの攻撃をぶつければ簡単に破ることができる。

――のだが、交互にサンドイッチする事で、「いちいち」物理と魔法を切り替えなければ突破できないということでもある。

それでもシーラは突破してきた。

何をどうやっているのかまだ見当はつかないが、シーラは超高速で物理による攻撃と魔法による攻撃、それを「いちいち」切り替えながらシールドを割っている。

両方出来る、だけではない。

両方を自由自在に使いこなせる、が今のシーラだ。

全てを割られる直前に俺も魔法で反撃した。

無詠唱で放った【マジックミサイル】47連は切り払われ、追加で放った単発の【フルインパクト】も真っ向から破棄された。

その間に複数の強化魔法で身体能力を上げ、動きつつシーラと渡り合う。

狭い空間の中シーラと「殴り合った」。

「前よりずっとつよくなった」

「オーホッホホホホホ! 当然ですわ!」

「じゃあこれならどうだ! アメリアエミリアクラウディア――」

前詠唱で魔力を高めて、一点に集中。

そして【タイムストップ】を発動させようとする。

いかに速度が速かろうと、時間を止めてしまえば問題ない。

【タイムストップ】を使えたラードーンやデュポーン達さえも出し抜ける事はなんども確認している。

困ったときの【タイムストップ】――とばかりに時間をとめようとした。

が。

ズガーン! と、脳天に衝撃が走った。

目の前が真っ白になってしまうくらいの衝撃、一瞬何が起きたのか分からないような衝撃。

視界だけでなく、思考までもが混濁する一撃。

『よけろ』

「――っ!」

ラードーンの声で、頭より先に体がうごいた。

とっさに大きく跳び下がることで、鼻先をギリギリでかすめていったするどい何かが体に届くことはなかった。

「たすかった」

こっそりラードーンに礼をいう。

そして複数の回復魔法を自分にかけて体の状態を取り戻す。

視界がもどって――シーラが目の前に迫っていた。

「あら?」

シーラは意外そうな顔をして、すぐにまた姿をけす高速移動にもどった。

「今のでトドメになると思っていましたのに」

「ああ、まだまだ」

「それでこそですわ」

「アメリアエミリアクラウディア」

もう一度前詠唱をして、今度は【アナザーディメンション】をかける。

発動直前でつぶされたから本来の分ではないとは言え、【タイムストップ】でかなり魔力を消耗した。

それを補充するための【アナザーディメンション】なんだが――また。

ズガーン!

二度目の衝撃が脳天を突き抜けていった。

「なんの!」

二度目の事、予想はしていたこと。

また目の前が真っ白に染まったが、歯を食いしばってこらえて、即座に回復魔法で立て直す。

「さすがに二度目は立て直しが早いですわね。ですがそれではどうにもなりませんわよ」

「いや、そんな事はない」

「なんですって?」

時間稼ぎのシールドをはって、シーラが姿を見せない超高速移動の攻撃でそれを破る。

そうやって姿の見えないシーラと対話をする不思議な光景。

「二回喰らって大体分かった。大魔力に反応する魔法だな」

「……さすがですわ」

一瞬の間、そしてやや悔しそうな口調。

つまりは正解ということだ。

「すごい魔法だ。反応――いや超反応というべきか。大魔力の瞬間にもうつぶされていると考えれば時間停止級の速さで反応してつぶしてきてる」

「……オーホッホホホホ。その通りですわ。これこそが新たな技、新たな秘密兵器」

一拍遅れて、姿を現わしたシーラ。

そして気を取り直して、といわんばかりの高笑いを混ぜながら自慢してくる。

「限界まで速度を極める。単純にして明快ですわ。そして効果はあなたが今体感している通りですわ」

「ああ、確かにすごい。」

「あら、ずいぶんと物わかりがいいですのね。それは敗北宣言ととってもよろしいんですの?」

「いや、たぶんそれ破れる」

「……あら?」

シーラの目がすう、と細まった。

口角には笑みが残っているが、目は真剣な物になった。

やれるものならやって見ろ――そう言われた気がした。

だから――やった。

「【盟約召喚:リアム】」

魔法をつかって、もう一人の自分を呼び出した。

【盟約召喚】はシーラが用意してきた秘密兵器には反応しない程度のものだった。

二人になった俺、シーラの表情が微かに変わる。

「「アメリアエミリアクラウディア」」

同時に前詠唱をして、同時に【タイムストップ】を使う。

盟約召喚の俺が吹っ飛んだあと、【タイムストップ】が発動した。

感じ取ったとおりだ。

シーラの用意してきた秘密兵器、大魔法に超反応するそれは「一つ」にしか反応しない。

ほぼ同時に、しかも盟約召喚の俺を先に【タイムストップ】を使うおとりにする事で本体の俺が【タイムストップ】を掛けられた。

俺は停止した時間の中で無造作に歩いてシーラに近づき、背中に回って、「形式的に」背中に手を当てた。

そして時間は動き出す。

「……やりますわね」

背中に手を当てられた、形式的なトドメを刺されたことで、シーラは潔く敗北を認めたのだった。