軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

317.シーラ、再び

昼下がり、昼飯のあとは腹ごなししながら、自分の部屋で魔法の練習をしていた。

次の目標がみえた。

魔力の、瞬間に使える量を増やすことだ。

これまでは最大量を増やすことを考えていた。

魔結晶をつかったり、【アナザーディメンション】で異世界から補充したり。

魔力の量を「使ったそばからすぐに補充」というやり方で対処していた。

それはそれでどうにかなった、例えば【アナザーディメンション】を使えば事実上魔力は無尽蔵に使える。

そこで新しい問題が発生した。

【盟約召喚】で全力の4倍の魔力を「一気に」つかったら体が耐えきれなくなって気絶した。

多分だけど、階段をゆっくり降りれば、くり返しの上り下りで何十階分でもあるけるが、一気に飛び降りようとしたら3階だけで大けがをする――それと同じことだ。

魔力を一気に放出する方法。それをしても気を失わずにいる方法。

それが出来なくても特に問題はないけど、出来る様になることにこしたことはない。

それができる様になる方法を、一人で考えていた。

ふいにドアがノックされた。

応じると、エルフメイドのレイナがはいってきた。

「失礼します」

「どうしたレイナ」

「シーラ・オーストレーム様より書簡が届きました」

「シーラ?」

俺はすこし驚き、思わず首をかしげてしまう。

シーラ・オーストレーム。

キスタドール王国の第19王女にして、今は独立してオーストレーム家の当主となっている女。

一言でいえばスカーレットをより激情に、自信家にしたようなタイプの女。

そのシーラから手紙が来たというレイナ。

言葉通り、ちゃんとした装飾のついたトレイを持っていて、その上に手紙らしき物がのっている。

「手紙をだすようなタイプには見えなかったけど……手紙を持ってきたものは何かいってたか?」

「いえ、必ずご主人様に渡してという事以外は、なにも」

「それは当たり前のことだもんな……」

俺は手紙を受け取った。

「いいや、ありがとう」

「恐れ入ります」

レイナは静々と頭を下げ、トレイをかかえて部屋から退出した。

一人に戻った俺はシーラの手紙を開いた。

「字も自信たっぷりだ」

初めてシーラの字を見るけど、何となくそう思った。

そんなにいろんな人の文字を見比べるということはなかったけど、シーラの事をしっているからか、彼女らしい自信に満ちた力強い筆跡だと思った。

「えっと……」

筆跡になんとなくの感心をしつつ、内容を読み進めていった。

内容はシンプルなものだった。

この前よりも強くなった、今度それを見せにくる――という内容だ。

「なお、この手紙は読み終えたあと自動的に消滅する――うわっ!」

追伸として書かれていた最後の一文を読み終えた瞬間、手紙が自動的に発火した。

紙らしく、火がついた瞬間一瞬に燃え上がって、灰になった。

「びっくりした」

『ふふっ、中々面白い事をするものだ』

「ああ、この感じ……文字、いやインクに目線を感知する魔法か。全てのインクに視線を向けたら燃える仕組みか」

『ほう、今の一瞬でそれが分かったのか』

「理屈は簡単だが、インクにそれを込めるのにかなりの手間がかかったと思う」

『ふふっ、アヤツの事は知っている』

「ああ、あの時もいたな」

『お前に一泡吹かせる、あるいは唸らせる事ができるのなら大した労力でもなかろう』

そう話すラードーンはますます楽しそうだった。

なるほどそうかもしれないとおもった。

他人がどう考えている事にちょっとだけ疎い俺だが、それでもシーラほど強烈なキャラだと分かってしまう。

「俺に一泡吹かせる、か」

「ええ、そうですわ」

「――っ!?」

驚いた。

あまりにも予想外で、声が聞こえたのにもかかわらず反応が遅れた。

気がついたら目の前――眼球のすぐ先までに切っ先がせまっていた。

「はあっっ!!」

魔法を唱える余裕もなく、一気に魔力を放出することで弾いた。

魔法障壁に比べて、魔力だけで弾くのは効率が悪いがとっさの事でそうすることしかできなかった。

はじきつつ、床を蹴って後ろに下がる。

距離をとったかと思えた。

「まだまだですわ!」

背後から声とほぼ同時に斬撃が飛んできた。

今度はいくらか落ち着いてたし、跳び下がった瞬間に用意した魔法障壁で防ぐ。

斬撃が障壁とぶつかりあって、力の余波が窓ガラスをブチ割った。

ぐるりと振り向いて、反対側に下がって、距離をとる。

視線の先にシーラがいた。

嫋やかで、気品と傲慢が高いレベルで同居しているようなたたずまい。

負の力が漏れ出しているような剣を無造作に持ったままこっちを見ている。

「シーラ!」

「お久しぶりですわ」

「いきなりかよ」

「後で行きますと手紙で言いましたわ」

「『後』が早すぎる!」

「ふふっ、正々堂々と意表をつけたようですわね」

「……まったく」

俺は苦笑いした。

その苦笑いはたぶん「しょうがねえなこいつ」位の感じだった。

正々堂々と不意をつく――という。

完全に矛盾している事をやってのけた、しかも彼女らしいやり方でやってのけたのが一周回って楽しかった。

「またまたいきますわよ!」

シーラはそういって、ふっと姿をけし、再びせまってきた。