軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

314.倍プッシュ

「さて、我はもう戻ることにする」

すっかり落ち着いた――いや最初から落ち着いているのか――から外に戻ろうとしたらラードーンがそう切り出してきた。

「もどるのか?」

「用はすんだ、これ以上あやつと顔をつきあわせても意味がない」

「そうか」

「……ふふっ、お前の事を気に入っているところがもうひとつある」

「え? なんだいきなり」

俺は本気で驚いた。

まったく脈絡なく褒められたからだ。

魔法の事で何か褒められるのなら理解できるし嬉しいし、むしろ魔法のことでならもっと褒めてほしい。

が、それ以外のことで理由も分からずに褒められるのは不思議しかない。

「我ら三人に仲良くしろと言ってこないところだ」

ラードーンはそういって、最後にフッと微笑みを残して、姿を消して俺の中にもどってきた。

俺は頬を指でかいて、苦笑いする。

そこはあまり考えない方がいいかなと思って、気を取り直して外にでた。

【アナザーワールド】から外にでると、盟約召喚の俺とデュポーンももうひとつの【アナザーワールド】から出てきたところだ。

デュポーンは嬉しそうな表情で向こうの俺にしがみついてた。こっちの俺と目があうと笑顔のまま離れた。

デュポーンがかなり上機嫌だけど中でなにがあったんだろうかと思った。

「じゃあもどるよ」

「うん!」

デュポーンは素直に頷き、盟約召喚の俺から離れた。

それをみて、俺は魔法をといた。

【契約召喚】をベースに改良した【盟約召喚】は元の魔法の特性を、いいところをそのまま残している。

魔法が解かれたとき、解かされたとき。起こった事の記憶がそのまま俺の頭に流れ込む。

【アナザーワールド】の中の出来事が一瞬で頭の中に入ってきて、俺は素直にデュポーンをすごいと思った。

「すごいな、デュポーン」

「やーん、ダーリンにまた褒められた。嬉しい!」

率直な感想を口にすると、デュポーンは文字通り舞い上がるほどに小躍りした。

「さて……」

気を取り直して、まわりを見回した。

【アナザーワールド】の中にしばらくいたおかげで、外の様子がすっかり落ち着いていた。

ラードーンとデュポーンのバトルの爪痕はしっかりと生々しく残っているが、砂埃はすっかり落ち着いて、空気や風のながれも安定している。

それに伴って、二人の力がぶつかりあって出来た粒子が全部地面に落ちきってて、それが日差しを反射してきらきらと綺麗だった。

まずはこれを集めなければと思った。

少し考えて、魔法を唱える。

「【サイクロン】」

風の魔法、目に見えるほどのつむじ風が粒子を巻き上げて、風の中心に集める。

それを粒子が積もっているところを一巡させると、粒子が全部巻き上げられて一カ所に集められた。

【サイクロン】をといた後には、円錐形をした人の身長と同じ高さの小山ができあがっていた。

「結構な量だな」

「これくらいで足りる?」

「ああ、足りると思う」

「わかった。足りなかったらいつでも言ってね」

「……ああ」

俺は微苦笑した。

足りなかったらいつでも言ってね――の先は「またあいつを殺す気でつくるから」という言葉がつづくのは、さすがに二人が殺りあった光景を見た直後だから俺にでもそれがはっきりと理解できた。

ただでさえ貴重な物質。

二重の意味で大事に使おうと思った。

「つぎは……一つに固めないとな。このままじゃ使えない」

「固めるって?」

「うーん、砂鉄みたいだから……サラマンダー! ノーム!」

少し考えて、炎と土の精霊を呼び出した。

見た目が可愛らしい、しかし確かな力をもった精霊が召喚される。

俺は「砂山」から握り拳一つ分を掴んで、精霊達にさしだした。

「ノームは土でこれを包んで、サラマンダーは焼いてくれ」

命じると、サラマンダーとノームは従順に言われた通りにした。

ノームは俺の拳から受け取った「砂」を土で丸くくるんだ。

丸くくるんで球体になったものをそのまま空中に浮かせて、サラマンダーがその中にすぅ、と入っていった。

しばらくして球体の表面から熱気が立ちこめて、その向こうの景色がゆがんでみえた。さらにもう少し待つと土そのものが赤く光り出した。

「やっはりすごいな……」

「え? なにが?」

デュポーンが不思議そうな表情で、相づちをうつくらいの感じで聞き返してきた。

「炭焼きもそうなんだけど、普通にやってたらなんだかんだで隙間から炎が漏れるもんなんだ。もちろん意図的に穴をつくらないと炭はやけないんだけど、意図しない所からなんだかんだでもれるものなんだよ」

「それがないのがすごいんだね」

「ああ、炭程度なら漏れてもいいけど、それ以上の熱量が入るとやっぱり完全に閉じきった方がいいらしい。それがまったく漏れないのはすごいなって」

「それを考えたダーリンがすごいんだよ! その辺にいるバカだと精霊を召喚したら攻撃にしか使わないし」

『うむ、凡百どもではこの発想はなかろうな』

「そういうものなのか」

デュポーンもラードーンもそういってくるからそういうものなんだろうなとおもった。

不思議でもあった。

このサラマンダーとノームの組み合わせは大した発想じゃない。

そもそも召喚出来ないっていうのなら、リアムに転生する前の俺がそうだったから分からなくないけど、両方召喚できてそれで発想に出てこないのはちょっと不思議だった。

そうこうしているうちにサラマンダーが土の玉から出てきた。

出てきたサラマンダーはなにやら困った顔をした。

「どうした?」

サラマンダーはこたえなかった。困った顔で何か伝えようとはしている。

「なにかあったのか? ノーム、その玉をあけてくれ」

状況を確認しようと、ノームに命じて土の玉をほどいてもらう事にした。

玉が分解されると、中からさらさらさら――とラードーン達がつくったそれがこぼれ落ちた。

「……なにも変わっていない?」

さらさらと地面におちたそれをじっと観察する。

こぼれる様も、こぼれ落ちた後も。

サラマンダーとノームのコンビで超高熱で熱したはずなのに見た目の変化はまったくない。

念の為【アイテムボックス】から紙を一枚取り出して「砂」の上に落してみると、触れた瞬間紙が炎上して一瞬で灰になった。

熱はうけているが、見た目にまったく変化がない。

見た目が変わらないからうかつに触って火傷をした鉄鍋――という、リアムに転生する前の記憶がよみがえった。

「すごいな……これ」

「そりゃね、ダーリンが注文したどんな力をうけても壊れない物質だもん」

「ああ……そうだったなあ……」

その事を思い出して、俺は微苦笑した。

そうだった、確かにそうだった。

二人の力を借りたのはそもそもがそういう理由だった。

強大な力を受けても、街の魔物達に代わる代わる殴られても壊れないものがほしかった。

それを考えれば、サラマンダー一体にちょっと焼かれたからといってすぐに形が変わるようならそもそも用なしってことでもある。

最初は砂鉄のように溶かして塊にする、って考えてたけどやり方を変えなきゃと思った。

俺は少し考えた、次の方法を考えた。

ふと、サラマンダーとノームに気づいた。

まだ召喚してるサラマンダーとノームはしゅん、と落ち込んでいるように見えた。

「ああ、ありがとう。おちこまないでいい、むしろこれの硬さがわかってよかった」

サラマンダーとノームにお礼をいって、召喚をといた。

そして、やり方を考える。

頭の中に浮かんできた方法を試そうとした。

目をつむって深呼吸、そして魔法を唱える。

「【盟約召喚:リアム】――3連!!」

魔法の光が広がって、次の瞬間俺が四人になった。