軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

313.子供は何人ほしい?

もうひとつのアナザーワールドの中。

遅れて中に入った盟約リアムがデュポーンと向き合っていた。

可愛らしい少女の姿でありながら、直前までラードーンと天変地異級の余波をだすほどの殺し合いを繰り広げていたデュポーン。

まずは攻撃をいなしつつ落ち着かせなければ――と盟約リアムは考えた。

――が。

「あっ、ダーリンだ!」

「え?」

「ダーーーーーーーリン!」

デュポーンはまっすぐと、「少女にしてはちょっと速い」程度の速度で盟約リアムに向かって飛びついてきた。

盟約リアムが慌てて抱き留めて、一歩二歩下がった程度で済んだ程の勢いだった。

デュポーンはそのまま盟約リアムに抱きつく。

いきなり抱きつかれたことよりも、予想外の反応に盟約リアムは困惑した。

「大丈夫……なのか?」

「なにが?」

「いや、まだその……昂ぶってるんじゃないかっておもってたから」

盟約リアムは言葉を選び、デュポーンに尋ねた。

しがみつくほどの勢いで抱きついだデュポーンは腕を盟約リアムの背中に回しつつも、上体だけをすこしのけぞった姿勢で盟約リアムを見あげた。

「ぶー、ダーリンはあたしの事わかってない」

「え? それは……どの辺の事を?」

「あたしが殺したくなるのはあいつらだけ。見境なくやったりなんてしないもん」

「ああ……そういうことか」

なるほどな、と盟約リアムは納得した。

ラードーン、デュポーン、そしてピュトーン。

三人の仲は決してよくない、むしろ最悪で宿敵、いや仇敵怨敵と表現した方が正しいであろうような最悪の仲だ。

事ある事に殺すといいあっているのも、実際の戦闘を目の当たりにしていると決して冗談ではないというのは分かる。

そんな犬猿どころではすまないレベルの仲だが、悪い意味でどこまでも特別だ、と言い換える事も出来る。

ラードーンとピュトーンは絶対ころす、けど他は別に。

デュポーンの言葉に盟約リアムはすぐに納得した。

「んふふ……でも、ダーリンすごいな」

「え?」

「本気でころしあうあたし達を引き離せる人間なんてダーリンしかいないもん。過去数百年さかのぼったところでも存在しないもん」

「ああ……そうなのか」

「ねえダーリン、あたし役にたった?」

「ああうん。すごく」

たぶん、という言葉を飲み込んだ盟約リアム。

まだあの新物質のテストはしていないからなんとも言えないが、デュポーンがラードーンと全力で協力してくれたのだから、という信頼感はある。

だから盟約リアムは素直に頷いた。

「ありがとう、たすかった」

「じゃあねえ――ご褒美にぎゅってして」

「ぎゅ?」

「そう、ぎゅって。おもいっきり」

「ああ……それなら後で、本物の俺にやってもらった方が」

「大丈夫、こっちのダーリンでも」

「ん?」

盟約リアムは【アナザーワールド】の入り口をちらっとみた。

そういうご褒美なら、デュポーンも本物の自分にやってもらった方がうれしいだろう、偽物の自分が偽物だと隠したままでやるべきじゃない、と思ったのだが。

デュポーンはなにやら全部お見通しの上でのおねだりをしてきているようで、それに盟約リアムが驚いた。

「もしかして……分かってたのか?」

「うん。魔法のダーリンでしょ。しかもダーリンのオリジナル、新しい魔法」

「そこまで分かるのか」

「もちろん!」

デュポーンは相変わらずしがみついたままで、得意げな表情をした。

盟約リアムはますます驚いた。

「分かっててご褒美をっていってたのか?」

「もちろん! だってその魔法、本物のダーリンじゃん?」

「え?」

「分身してるけど、生命力も魔力も記憶も知識も同じところから同時に使ってるんでしょ」

「あ、ああ……それも分かるのか?」

「もちろん!」

盟約リアムはかなり驚いた。

この一瞬の間で、新たに開発した【盟約召喚】の詳細を全て見抜かれるとは思っていなかった。

驚きはしたが、すぐに「さすがデュポーン」ともおもった。

「それだけ同じだったら本物のダーリンじゃん。腕切り離して飛ばしてるのとかわらないじゃん」

「それはちょっと想像したくない絵面だな……」

が、理屈は分かった、と盟約リアムはおもった。

ならば、と彼はデュポーンのおねだり通りぎゅっと抱きしめた。

抱きしめられたデュポーンは嬉しそうに、同じように抱きしめかえしてきた。

殴り合いの衝撃波で山一つ消し飛ばせるほどの力をもっているのに、デュポーンの抱きつきは人間のとなんら変わらなかった。

「えへへ」

「これでいいのか?」

「もうちょっと」

「ああ」

「そういえば、ねえダーリン」

「うん?」

「ダーリンは子供は何人くらいほしい?」

「……へ?」

「あたしね、ダーリンが大好きだから体が人間と同じくらいになっちゃうから、ダーリンの 仔(、) は産めて十人位じゃん? それ以上だと他の子にやってもらわないとって思うんだ」

「それ以上って……なんでそんな話に?」

「え? だって仔の数ってそのまま雄の強さの象徴になるじゃん?」

「……」

盟約リアムはぽかーんとなった。

「ダーリンくらいすごかったら1000人くらい作るべきだと思うけどどうかな」

「えーっと、それはまあ、おいおい考えるよ」

「そう? わかった。あたしは十人くらいね」

「ああ、うん。わかった」

盟約リアムは苦笑いした。

限りなく人間っぽく見えて――

「えへへ……」

温もりも柔らかさも、笑顔も何もかも人間っぽく見えるが、やっぱりスケールが人間のそれを大きく飛びだしているなあ、と、リアムはおもったのだった。