軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

305.見物料

ラードーンは俺の中にもどらず、一歩引いた所で腰に手を当てている。

何かあったときにまた対処してくれるという感じだった。

それが有難くて、言葉に甘えることにした。

俺は目を閉じ、意識を集中する。

「アメリアエミリアクラウディア――」

前詠唱で魔力を高めて、両手を前方に突き出す。

魔力を放出し、構築する。

目の前の空けた空間に、97体の蝋人形っぽい俺の人形ができた。

「まとめてだしたのか」

「改良のためだから。普段は開発中は全部成功しないけど、今回は失敗でも形にはなるから」

「……ああ、後片付けが出来ない事への改良か」

「そういうことだ」

俺は微苦笑した。

あのままだと人形は一回だしてしまうと俺の力では処分出来なくなってしまう。

測るたびいちいちラードーンか、あるいは他の誰かに処分してもらうのは魔法として欠陥がありすぎる。

そのための改良ということでやっている。

人形を作り出す事自体は出来ているから、珍しく魔法の開発段階なのに「パッと見全部成功」している状況になった。

「どうするつもりだ?」

「とりあえずは――ああ」

ラードーンに答えようとした瞬間だった。

97体のうちの一体が「プシュッ!」と、空気が抜けるような音とともに弾けて、きえてしまった。

「ああ、これだと失敗だな」

「ふむ?」

「時間経過で消えるような仕組みにしようとおもって。何かしても、あるいは何もしなくても。決まった時間で消える、って感じにしようって」

「なるほど、それがもっとも無難だ。そうなると――」

ラードーンが納得している間にも、3体ほどが同じようにプシュッと音を立てて消えた。

「早く消えすぎるのは失敗ということだな」

「遅すぎてもな」

そういって、ラードーンとしばらくの間みまもった。

97体の俺人形は次々と消えていったが、半分ほどが消えたところでそれがとまった。

残りの半分――数えたら46体の俺人形が消えずにそのままでいた。

「長いな」

「いくら待っても消えない方の失敗だと思う」

「ふむ。ならばこれも消そうか」

「たのむ。この後消えてもどのみち長すぎる」

「うむ」

ラードーンは頷き、細い腕を前方に突き出した。

そのまま「クンッ!」と二本指をすくい上げるような形で天に向かって突き上げた。

広範囲の魔法攻撃が残った46体の俺をまとめて吹き飛ばし、一瞬にして全部が消滅した。

「ありがとう」

「うむ」

「……アメリアエミリアクラウディア」

気を取り直して、もう一度前詠唱からの俺人形を作る。

独力の上限近い97体をもう一度作る。

ラードーンの「クンッ!」で焦土化した地面にもう一度ずらっと整列する俺人形、97体。

作り出してから、しばらく待つ。

するとまたプシュプシュ、プシュプシュと消えだした。

しばらく待つと、今度は全部がきえた。

「うむ、さすがだな。一度で調整してくるとは。相変わらず魔法にかけてはすごいなお前は」

「いや、調整はこれからだ」

「どういうことだ?」

「もう一度やるからみてて」

「うむ」

アメリアエミリアクラウディア――三度、前詠唱からの俺人形を97体作る。

そのまま待つ事数十秒、すると。

プシュプシュプシュ――と、俺人形が一斉に消えだした。

最初に消えたのと最後に消えたのと、その時間差は3秒に満たない。

「ほう」

「俺専用の測定に使うのなら、これくらいの時間で消えてくれた方が一番長さとしては最適だ」

「なるほど、それが『調整』か」

「ああ――だから」

数えて四回目の前詠唱、からの俺人形97体。

つくって、また待つ。

すると――ぷしゅっ!

音が一回だけ聞こえた。

97体が綺麗に全部まとめて消えた。

まったく同じタイミングで消えて、その音が重なり合ってまるで一回の音に聞こえた。

「よし」

「……さすがだな」

四回目の成果をみたラードーンから感嘆の声があがった。

魔法が成功した事も嬉しいけど、ラードーンに褒められるのもめちゃくちゃ嬉しい。

「時間制限で解除するといったものの多少の『遊び』はあるもの。それをこうも、寸分のずれもなくまったく同じタイミングで消えるようにするとは」

「さっきの失敗がはずかしかったからな」

ラードーンに消してもらうしかなかった最初の俺人形。

アレは言い訳の出来ないくらい完璧な失敗だった。

「失敗というからにはもう少し恥ずかしがったらどうだ?」

ラードーンがいつもの楽しげな表情で言ってきた。

「ラードーンしか見てないからな」

「うむ? 我だといいのか?」

「俺がダメなところはラードーンにいつも見られてるし、見られるのが一つくらいふえたって今更だろ」

「たしかに、魔法以外てんでダメだからな、お前は」

「だろ?」

本当にそうだとおもった。

リアムに転生する前はもうすこしまともだったような、そうでもない様な気がしなくもないんだけど、今はもう魔法以外は本当にダメダメなんだって痛感している。

もっとも、魔法が出来る喜びの方が大きいし、憧れの魔法をこれだけいろいろやれるんだからそれでいいと思っている。

「それをいつもフォローしてくれてありがとう」

「なあに、かまわんよ」

ラードーンはクスッと笑った。

「魔法を行使するお前のすごいところをいつも見せてもらっている。その見物料だ」

ラードーンはそういった。

うん、やっぱりラードーンに魔法の事を褒められるのはうれしかった。