軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

306.可愛らしい

魔法を唱え、前方十メートルくらいの所に俺人形をだした。

間髪いれずに、そのまま【マジックミサイル】を放つ。

【マジックミサイル】は孤の軌道を描いて飛んでいって、俺人形にあたった。

爆発が起きる攻撃魔法、それで煙が巻き起こったが俺人形は何事もなかったかのように仁王立ちしていた。

煙が晴れた後、俺人形の姿がはっきりと見えてきて、体の前方に数字がうかんできていた。

数字は「7」だった。

「それが今の魔法の魔力量、ということか?」

いつものように背後で腰に手を当てて眺めていたラードーンが聞いてきた。

「ああ。厳密には当った分の魔力量だ」

「ふむ?」

「魔法って使った魔力が完全に魔法になるわけじゃないだろ?」

「……そうか、人間の肉体だとそうだったか」

「え? どういうこと?」

簡単な説明のつもりが、ラードーンの口から聞き捨てならない言葉が飛び出してきた。

それまでは肩越しにラードーンに振り向いてたけど、体ごと完全に向き直った。

「生物によって魔法の変換率というか、魔力の損耗率というか、そういうものに差が出るのだ」

「へえ、そうだったのか」

「同じかまどでも、鍋の素材次第で湯が沸く速度も変わってくるだろ?」

「ああ」

なるほど、と俺は頷いた。

「確かに、純粋な鉄鍋だと沸くのが速いけど、混ざり物の安物の鍋だと中々沸かなかったな」

「それと同じで、100の魔力で90の魔法がだせる生き物もいれば、95もいて、もっと上の生き物もいる。人間はたしか八割程度だったかな」

「そうなのか」

「 二重に(、、、) 損耗しているからな」

「ラードーンは?」

「我は100だ。ああ、気になるだろうから先に言っておくがあの二人も我と同等で100だ」

ラードーンは唇を尖らせてそういった。

少女の姿になった状態での発言だからか、いつものデュポーンやピュトーンを敵視する言葉もなんだか可愛らしくみえた。

とはいえそれにはまったく触れなかった、もっと気になる事があったからだ。

「だったらおれも、8割からもっと効率よくすれば更に上を目指せるのか」

「いや、それはない」

ラードーンは即否定した。

「え? なんでだ?」

「お前の魂は何故か特別でな、我をすまわせられる理由でもあるのだが、既に99%位の効率がだせているとおもっていい」

「そうなのか」

へえ、とおもった。

俺の魂が特別なのはラードーンと出会った時にも聞いた言葉だし、何より俺自身まあまあの心あたりがある。

だからラードーンのいう「99%」にも信憑性があって、納得した。

「その効率は我が知る限り我ら三人に次ぐもの、人間では当然ダントツにすごいものだ」

「そうか。残り1%なら手の空いたときに 詰め(、、) ればいいか」

「ふふ、それでもやらないわけではないのだな」

「そのうちやるよ」

80から90まではたぶん簡単にいけるけど、99から100は下手すれば人生をかけた大研究になる。

すぐにどうこうなるものじゃないはずだから、いずれ目指す目標として頭の片隅に留めておくことにした。

あらためて、とおもった。

既に俺人形は消えている。

そこでもう一度俺人形をだして、今度は【パワーミサイル】をはなった。

今度は「20」という数字がでた。

「うん……だいたい……体感と同じくらいだな」

「今の全力だとどうなる?」

「やってみる。アメリアエミリアクラウディア――」

新しい俺人形に、前詠唱込みの最大単発魔法をたたき込んだ。

地震かと錯覚するほどの地揺れが起きたあと、俺人形はやっぱりけろっとしていた。

そうして出た数字は――「4096」だった。

「こんなものか」

「こんなものだろうな」

俺とラードーンは頷きあった。

これで魔法は完成した。

俺の魔力を計るための魔法が完成した。

「……」

「どうした、急に考え込んで」

「ああいや、せっかくだし、これを俺以外の人にも使えるようにしたいと思って」

「ふふっ、相変わらずの向上心だな。確かにあれば便利ではある、が、自分自身を推し量るのと他人にそうするのとではまったく話がちがうのではないか?」

「ああ、だから――別の魔法として作った方がよさそうだ」

「うむ、その方が良いだろう」

ラードーンからもお墨付きをもらった。

自分の魔力を計る魔法はこれで完成だとして、そこから改良して別の魔法にするという形で考えた。

「方法は?」

「3通り思いついた」

「一番実現性の高いものは?」

「……」

俺は口をつぐんだ。

ラードーンがいう「一番実現性の高いもの」はちょっと言いにくかった。

「どうした」

「いや……一番のやつはその……前段階でちょっとな」

「魔法の話なのにお前にしては珍しく口が重いな」

「まあ、な」

「はなしてみろ、お前のそれにはいつも楽しませてもらっている。なんでも手伝ってやるぞ」

「なんでも?」

「うむ」

「じゃあ……」

俺は意を決して口を開いた。

「ラードーン、デュポーン、ピュトーン。三人の協力がほしい」

「……」

ノリノリで「何でも」と言ったラードーンだったが、一瞬にしてブスッとした表情に変わった。

それもまたちょっと可愛らしかった――とは言わないでおいた。