軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

278.安全確保11連

約束の地の果て。

一般的に国境と呼ばれている所に、俺の魔法で赤い壁が作られていた。

他国では最近「レッドライン」と呼ばれているそれが見える所に一人でやってきた。

「【エアマイン】」

手をかざし、魔法を唱える。

魔法の光が凝縮され、目の前の空間の一点に集まって、砂粒ほどの大きさになった。

大きさこそ砂粒ほどだったが、放つ輝きはそうとは思えないほど大きなものだった。

極限まで熱した金属のように、まばゆい光を放っている。

「……うん」

それを確認し、更に魔力をそそいで 仕上げる(、、、、) と、それまで輝きを放っていたそれがすぅ、と消えた。

まばゆい輝きを放っていたそれが一瞬にして消えてしまった。

足元に転がっている石ころがあったから、それを一粒拾い上げて、粒のあったあたりに放り投げた。

石が「粒」にあたった瞬間大爆発が起きた。

一瞬にして爆風が俺を包み込んだ。

あらかじめマジックシールドを張っていたから、俺にはダメージはない。

爆風の中、俺は「よし」とつぶやく。

実地のテストに満足した。

『罠か』

視界が土埃でまだ戻らない中、普段は声だけの存在、ラードーンが話しかけてきた。

「ああ、アオアリ玉を参考にして作り直した」

『作り直す必要があったのか?』

「成功率をあげるためだ」

『ほう?』

ラードーンの興味を持ったときの返事が返ってきた。

短くともすれば素っ気なく聞こえる返事だが、実際は話の内容に興味をもってくれてるときの返事なんだと、長い付き合いで分かっている。

「アオアリ玉を空中に浮かして、何かの引き金で地上に降ろす――それじゃ手順が一つ多い。もっとシンプルに触れれば爆発するものを地上に置いた方が確実だ」

『代わりに威力が落ちているようだが?』

「これでも充分だろ、そもそもアオアリ玉じゃオーバーキルだ。全員が全員ラードーン級って訳でもないし」

『ふふっ。たしかに、これでも人間くらいは優に吹き飛ばせそうではある』

「威力が落ちても数を揃えられる――【エアマイン】31連!」

無詠唱で多重魔法を使う。

目の前の空間に輝く光の粒が行使した31個出来て、それがほぼ同時にパッと消えた。

「数を揃えられればそれだけで力になる」

『うむ、一つの真理だな』

「あとは……」

つづいて、俺は【アイテムボックス】を唱えた。

アイテムボックスの中から小さな塊をとりだした。

それは指の先端くらいのサイズの、布の塊だ。

それを一端地面に置いて、【ニードル】で突きやぶった。

破けた布の中から霧状のものが漏れ出した。

『今度はなんだ?』

「ピュトーンの眠りの霧だ」

『ほう?』

「ピュトーンにあげた枕の一部だ。こうやって持ってきて破くと吸い込んだ霧が放出される」

『こんなものも用意してたのか?』

「普段から持ってた」

俺はそういい、アイテムボックスから枕を取り出して、ラードーンに見えるようにかざして見せた。

「使った後のものは回収してこの中に置いてる」

『ほう』

「廃棄法を考えるの後回しにしてたけど、今なら役に立つ」

そういってる間にまわりに霧が拡散した。

量が量だから、この程度だと大した害はない。

そもそもすぐさま害がでるようなものじゃないのだ。

ピュトーンの眠りの霧が脅威なのは、本人の体から絶え間なく放出しているという事、その一点につきる。

絶え間なく発散し続け、更にピュトーンはその気になれば月単位で眠っていることもある。

したがって、それを一度喰らってしまうと、同じように月単位で眠り続ける事になる。

神竜たるピュトーンは一ヶ月寝たままでもどうもしないが、人間は介護無しに一ヶ月寝ることなんてできない。その前に食事やら水分やらがとれなくて生命を維持出来なくなる。

だから、これは脅威ではない。

本人じゃない、放出しきったらなくなるものは「ちょっと眠らせるだけ」の効果しかない。

だから脅威ではない。

それでも十分だ。

「アメリアさんの演奏はどんなに長くても半日だから、強制睡眠のこの霧との相性は抜群だな」

空気中にしかけた爆弾も、この眠りの霧も。

アメリアの要望を叶えるためのしかけだ。

極端な話半日さえもてばいいから、それならやりようはいくらでもあった。

いくらでもある中からまずは二つ試しにしかけてみた。

『眠りの霧に仕掛け爆弾か。そこまで重ねる必要はあるのか?』

「この前までなんだ」

『うむ?』

「街の魔力が切れたことだ。前はあれでも問題ないと思ったけど、今回の事でいくつか予備があったほうがいいっておもった」

『うむ』

「物事には絶対なんてないんだろうな。だけど、予備を何度も重ねてやれば絶対に少しでも近づけられるはずだ」

『……驚いたな』

「なにが?」

不思議になって、聞き返した。

『むかし、それなりの人物から聞かされた危機管理の極意とよく似ている』

「そうなのか?」

『うむ。予備を重ねる事で安全性を100%に近づけさせる理屈だ。そいつも絶対はないといっていた』

「そうか」

ラードーンがいう「それなりの人物」と同じ答えにたどりついたのは、俺にかなりの心強さを与えてくれた。

『まあ、そいつは失敗したがな』

ラードーンは愉しげな感じでいった。

「失敗した? なんで?」

『何でもかんでもそうやろうとしたからだ。なす事全てに予備とその予備またその予備の予備を用意していたら、あらゆる事の負担が大きくなりすぎてな』

「ああ……」

何となく分かった。

絶対はない、でも重ねる事で絶対に少しでも近づけさせることは出来る。

そうなると、どこまで重ねてどこで妥協すればいいのかという考え方になってくる。

そして、あらゆる事にそれをやろうとしたら全ての事に二倍三倍かそれ以上の労力がかかるということでもある。

それは確かに負担、いやどこかで破綻するのが目に見えている。

「大丈夫、俺は今回だけだ」

『うむ』

ラードーンが納得してくれた。

そう、今回だけだ。

今回はアメリアの頼みを実現するために、アメリアの演奏中の安全――いや安寧を確保するのが目的。

演奏が長くても半日程度の、一回こっきりだから、いくら重ねても問題ない。

「あと9――全部で11くらいは重ねるつもりだ」

『うむ。次はなんだ? みせてもらおうか』

俺の考えにラードーンは賛同し、つぎの仕掛けを楽しみにしてくれたのだった。