軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

230.解除

【アナザーディメンション】で開いた扉、向こうの世界から何かが飛んできた。

金属的で、自然物じゃなくて人間が作ったもの。

ただ何をどうやって作られたのか、見てもわからなかった。

まるで鳥のような、翼のようなものがひろがっているが、それは角張っていて

、片面が不思議な光り方をしている。

なんだろうあれは――。

「あれは『ウチュウタンサキ』っていうのらしいよ」

「ウチュウ……なに?」

「ウチュウタンサキ。あの翼みたいなのは太陽の光をうけて雷の力を生みだすためのものみたいよ」

「太陽の光を雷に?」

【アナザーディメンション】のヒントをくれた、最初に次元の壁を開いたデュポーンがまるで俺の心を読んだかのような感じで言ってきた。

「そう。その雷の力であれを動かしてるって。向こうだとほとんどのものが雷の力でうごくんだって」

「雷の力で……?」

不思議に思って、ついそれを考え込んだ。

魔力であれこれ動かしたり魔力を別種の力に変えたりという話なら分かるし、俺には何種類いや何十種類と思いつく。

だけど雷の力でそれをするとなるとまったく分からないし想像もつかなかった。

「考えてもむだなんじゃないの?」

「――っ! たしかに!」

デュポーンの言うとおりだった。

その事を考えてもきっと無駄なんだと思った。

魔法とはまったく違う理屈で動いてそうで、だったら俺がいくら考えようと分かるはずがないと思った。

それに、本質な所で魔法に近い何かを感じたからついつい考え込んでしまったが、今はそれ所じゃない。

魔力を確保して、【ドラゴンスレイヤー】を解除する。

それが今一番大事な事だ。

俺は改めて次元の向こうを見つめた。

例の人工物がまっすぐ飛んできた。

まっすぐ一直線に飛んできたが、ちょっとズレる感じだった。

「【アナザーディメンション】」

追い【アナザーディメンション】をした。

人間一人が通れる程度だった裂け目を一回り大きくした。

「――っっ!」

瞬間、体にものすごい負荷が掛かってきた。

裂け目を大きくしようとしたら、まるで反発するかのように力がかかって、俺の体を締め付けてくる。

全身の骨がミチミチと軋みを上げるほどの締め付けだった。

「大丈夫なの?」

デュポーンが聞いてきた。締め付けられた瞬間に思わず寄せてしまった眉間をそのままに、にこりと笑みをつくって答える。

「大丈夫だ、ゴムを必要以上にひっぱったら締め付けられただけみたいなものだから」

リアムに転生してから初めて知った、高級品のゴムの感触を思い出して、それを使って例えた。

「ゴムってよくわからないけど、だったら大丈夫みたいね」

「……ああ」

そう、デュポーンの言うとおりだ。

だったら、大丈夫、だ。

もっと言えば今の状況なら。

なにがあろうとも大丈夫にする。

これしかなかった。

深呼吸して、意識を強く保つ。

ゴムが締め付けてくるのならそれ以上の力で押し開けばいい。

そう思って、追い【アナザーディメンション】分の裂け目を維持した。

向こうの世界の人工物が飛んできた。

裂け目ギリギリを擦って、こっちの世界に飛び込んできた。

その瞬間に崩壊が始まって、俺は【タイムストップ】で時間を止めて、それを消化した。

「ぐっ……がはっ!」

予想通りと、予想以上が同時にきた。

予想通りなのは、次元の裂け目。

次元の裂け目といえど、時間が止まっている間は「ゴムが戻らない」から、締め付けはゼロになった。

予想以上なのは、それが持つ魔力。

向こうの世界の人工物、ウチュウタンサキ。そいつが崩壊して、魔力に変換された量が予想の遙か上だった。

仮に数字にすれば、ケタが文字通り一つは違う、そんな膨大な量。

【タイムストップ】で止めた時間の中であっても圧倒的な量。

消化するのに胃もたれする、いや胃袋が破裂しかねない量だった。

だが――。

「有難い」

にやりと口角を持ち上げ、つぶやく。

言葉にだしてつぶやくことで自分を鼓舞した。

そう、有難い。

今の状況なら魔力はあればあるほどいい。

ラードーン、デュポーン、ピュトーン。

伝説の三竜に効果を発揮するほどの大魔法【ドラゴンスレイヤー】。

それをなんとかするには、魔力がいくらあっても困ることはない。

「ラードーン……デュポーン……ピュトーン……」

止まった時間の中で三人の名前を呼びながら、体がはち切れそうな魔力を飲み込んでいく。

そして――

かっ、と目を開く。

ここから先は「時間との勝負だ」。

時間が止まった世界、【タイムストップ】の中。

それは皮肉にも魔力を消費し続ける「タイムリミット」アリの世界。

解除するか維持するか――維持したままの方が魔力を保っていられる。

【タイムストップ】の消耗分を考慮しても維持したままのほうがいいと判断して、維持し続けた。

そのまま巨大な魔晶石・ブラッドソウルに向き直る。

手をかざして、ウチュウタンサキから飲み込んだ魔力を一気に吐き出す。

ブラッドソウルが反応する、巨大魔法【ドラゴンスレイヤー】が発動する。

「――リリース!」

【ドラゴンスレイヤー】はタイムリミットありの魔法。

魔法は作られた人の目的がそのまま効果にあらわれる事がおおい。

タイムリミットありの魔法はほとんどの場合、それをネタに交渉や取引に使うから、解除法はある。

俺は【ヒューマンスレイヤー】をそうしたし、【ドラゴンスレイヤー】もそうだった。

その解除にはおそらく発動した以上の魔力を必要としたが。

「ありがとう」

ウチュウタンサキの膨大な魔力はやはり有難かった。

俺はお礼の言葉を口にしつつ、【ドラゴンスレイヤー】の解除の最後の一歩を踏み込む。

止まった時間の中、魔力の光が拡散の兆しを見せる。

そして――時は動きだして。