軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

23.Aランク討伐依頼

「……んあ!?」

ピクッとなって、俺は目が醒めた。

魔法の練習をしていたら、いつの間にかうたた寝をしていたらしい。

起き上がって、伸びをする。

真白い天井が見えた。

というかまわり全部が白一色だ。

アナザーワールドの中で、魔法の練習をしていたら、いつの間にか寝落ちをしてたようだ。

最近は、このアナザーワールドを便利使いしている。

毎日のように泊まっている。

アナザーワールドは、術者が中にいる限り、何があっても消滅しない。

今はまだ完全にマスターしていないから、使い終わって、外にでて、またアナザーワールドを使うとまっさらな新しい空間が出来る。

実質、自動的に片付いてくれる宿の様なものだ。

完全にマスターしてしまうとこの特性も消えてしまうから、ちょっともったいないなって気がしている。

このアナザーワールドの空間は他の人間も入れる。

入れる人間は二種類ある。

一つは、術者――つまり俺が許可をだした人間。

まあ当たり前の話だ。

もうひとつは、魔力で押し切ってはいってくる人間。

イメージとしては、鍵のかかってないドアを、内側から押さえるのと外側から押して開けるの、力の比べっこのような感じだ。

それは下手な鍵とか、警護よりも安全だと思った。

便利かつ、安全。

それらが合わさって、俺は度々アナザーワールドで寝泊まりするようになった。

そして、その魔導書を手に入れてから早一ヶ月。

毎日やり続けた結果、発動時間が大幅に縮んで。

今や、10分でアナザーワールドを出せるようになっていた。

「もう! こいつかったーい!」

樹齢100年の樹がごろごろしている森の中、その開けたところで、俺とアスナはモンスターと戦っていた。

体長が二メートル近い、巨大なカエルのような見た目のモンスターだ。

見た目こそカエルだが、アスナが樹を駆け上って数メートル上から落下しながらナイフを突き立ててもちょっとしか刺さらないほど、その皮膚はものすごく硬い。

まるで岩石のようだ。

ジャイアントフロッグ。

俺達がギルドから依頼を受けて、討伐しに来たモンスターだ。

Aランクの依頼らしいが、騎士になった俺に、テストの意味合いも込めてギルドから依頼された。

「アメリア・エミリア・クラウディア――サラマンダーよ、出てこい!」

魔導書を もったまま(、、、、、) 詠唱を交えて七体のサラマンダーを召喚した。

炎の精霊は俺の号令で、一斉にジャイアントフロッグに飛びかかっていった。

「よけろアスナ」

「分かった!」

ジャイアントフロッグの刺せなかった背中を蹴って、大きく飛び退けるアスナ。

途中でツタをつかんで、振り子の感じでジャイアントフロッグから離れた。

間髪入れずにサラマンダーたちがジャイアントフロッグに取り憑いた。

炎が巨大ガエルを灼く。

カエルが炎のトカゲに噛みつく。

精霊は、術者の魔力を媒体に、この世に顕現している。

それを「受肉」と表現する術者もいる。

その表現通り、精霊は肉体のようなものを持っている。

ジャイアントフロッグは炎上しながらも、サラマンダーの肉体を次々とかみ砕いていった。

「リアム!」

「炎じゃダメみたい。槍をぶつけるから、同じところにたたみかけて」

「了解!」

大声で叫んだあと、もう一度詠唱をして、やっぱり7発のアイスニードル――氷の槍をジャイアントフロッグの眉間に集中するように放った。

次々と一点を穿とうとする氷の槍、貫けこそしなかったが、ジャイアントフロッグは大きくよろめいた。

そこにアスナが飛びかかった。

持ち前の身軽さで、ピョンピョンピョンと、ジャイアントフロッグの頭部に飛び移った。

そして、両手で逆手にガッチリ構えたナイフを眉間に振り下ろす。

ガツン! ガツン! ガツン!! ――ズプリ。

それまで岩を叩いているような音だったのが、肉を裂く音を立てて、眉間にめり込んだ。

ジャイアントフロッグが咆哮した。

カエルの鳴き声ではない、野獣の――しかも苦痛の咆哮だ。

その咆哮は、シームレスに怒りの咆哮に移行した。

肌にピリピリと突き刺さってくる殺意。

次の瞬間、ジャイアントフロッグが口を大きく開いて、息を吸い込み始めた。

腹から大きく膨らんでいく。

ただでさえ大きいのが、もっと大きく膨らんでいく。

「きゃ!」

「来たか! 戻ってこいアスナ」

「うん!」

ナイフを抜いて、飛んで戻ってきた。

「来たんだな?」

「うん、すっごいビリッときた」

アスナが言った直後、ジャイアントフロッグの膨らんでいく巨体が放電を始めた。

これが、ジャイアントフロッグの一番やっかいなところだ。

怒り状態になると、体を膨らませつつ全身から電気を放出する。

その効果範囲は、じつに半径百メートルほど。

森の中では逃げようがないと言ってもいい距離だ。

だが。

俺は備えていた。

備えているからこそ、詠唱で七連までしか使えなかった。

アナザーワールド。

戦闘開始からずっと魔導書をもったまま使っていたのが、ようやく発動した。

「入れ!」

「う、うん!」

初めてみるアナザーワールドに戸惑いつつも、俺に言われたとおり中に入った。

俺も中に入った。

二メートル四方の白い空間の中にはいった。

そして、外ではジャイアントフロッグが放電を始めた。

その電気は草木を、そして逃げ遅れた小動物達を焦がしていったが、アナザーワールドの中には入って来られなかった。

「すごい、こんな魔法も使えたんだ」

「あの放電が生物特有の機能だからな。魔法だったら危なかったかもしれない」

「そういうものなの?」

「ああ」

「へえ……でもやっぱりすごいね」

俺達は、絶対に安全な、アナザーワールドの中で、ジャイアントフロッグの放電を眺めていた。

放電は一分間続いた。

まわりが黒焦げになった。

放電しきったジャイアントフロッグは元のサイズに戻って、ぐったりしていた。

「いくぞ」

「うん!」

俺とアスナはアナザーワールドから飛び出した。

俺はアナザーワールドを一回消して、魔導書を持ったまま再発動しながら、詠唱で七連の攻撃魔法を放つ。

アスナは両手のナイフでジャイアントフロッグを切り刻む。

放電しきってぐったりしているジャイアントフロッグは、なすすべもなく攻撃を受ける。

一番やっかいな発狂放電をアナザーワールドでスルーした後、攻撃を集中させて、ジャイアントフロッグを倒した。

Aランク相当の依頼を、俺達は無傷でクリアして、ギルドマスターを盛大に驚かせた。