軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

227.藍は青より出でて

男達を倒したあと、空を見上げた。

「そろそろかな」

時間を確認する。

多分だけど、ラードーンから言われた「のんきに一日見て回った」の一日が過ぎた頃だとおもった。

一度ラードーンに連絡をとってみようと思った。

【スカイリンク】経由で、リアムネットを使って、ラードーンとの音声をつなげた。

「ラードーン? 聞こえる」

『うむ、きこえておるぞ』

「街は全部見て回ったけど、時間の方はどうかな?」

『その前に小僧よ、そろそろ人間どもに襲われる頃じゃと思うがどうなのか?』

「……」

『小僧?』

「ああごめん、驚いただけだ」

そう、驚いただけだ。

俺は襲われた事にびっくりしたけど、ラードーンはそれも全部予見してたみたいだ。

「すごいなラードーン、これも予想してたんだ」

『予想というほどの事ではない。選択肢を狭めていって、おのずとそうとしか出来ないように仕向けただけじゃ』

「えっと……それって……」

もっと難しい事なんじゃ? って思った。

予想というより操ったって事だよな。

いやまあ俺も魔法でなら相手を操る事ができるかも知れないけど、ラードーンが言ってるそれは魔法じゃないよな。

魔法じゃないのに魔法のような鮮やかな手口。

ラードーンはやっぱりすごいなと改めて思った。

『では次の段階じゃ』

「わかった」

俺は頷いて応じ、ラードーンが「ひとまず合流じゃ」といったので、彼女の所に飛んでいくことにした。

街の上に、俺とラードーン、そしてデュポーン・ピュトーンの5人が集まっていた。

ドラゴンたちは人間の姿、軍服姿で、その服をなびかせながら飛んでいる。

「えっと……ここは?」

「この真下が元凶の住み家じゃ」

「元凶?」

俺は真下を向いた。

そこは魔物の街にある俺の屋敷よりも一回り大きくて、造りも豪華な屋敷だ。

「元凶って、だれ?」

「大公様とやらの屋敷じゃ」

「ちなみにいまそいつ一人だけだけどね。全員【ヒューマンスレイヤー】で黙らせた」

デュポーンは横から会話に入ってきて、楽しげにいった。

「そっか、そうだよな。大公が今回の元凶だもんな」

「うむ、今から仕上げに入る――がその前に」

「その前に?」

「手札の確認じゃ。今のままでもよいが、【ヒューマンスレイヤー】を改良できればいう事は無い」

「改良? たぶんできると思うけど、何をどうするの?」

「倒れた 我ら三人(、、、、) の姿を思い出してみよ。【ドラゴンスレイヤー】と小僧の【ヒューマンスレイヤー】の一番の違いはなんだと思う?」

「えっと……」

俺は記憶を探った。

何が違う、といわれても今ひとつピンと来なかった。

「そう思ってのう、今のわしらの姿を収めさせてきた。リアムネットといったか? それで確認してみるのじゃ」

「あ、うん」

俺は言われたままリアムネットにつなげた。

【スカイリンク】のおかげで、大公の屋敷の真上――敵国まっただ中でもリアムネットが使えた。

スラルンからの連絡があったので、それを開いてみた。

すると、倒れている今のラードーンら三人と、スラルンスラポンが一緒に映っている絵が出てきた。

「ああっ!」

記憶ではピンとこなかったけど、見た瞬間すぐに分かった。

【ドラゴンスレイヤー】と俺の【ヒューマンスレイヤー】の最大の違い、それはかかった相手の近くにガイコツが砂時計をもって現われているかいないかの点だった。

「これがないじゃろ?」

「あ、ああ。別にいらないかなと思って」

「小僧ならそうであろう。今からでもつけられるか?」

「できるけど、新しい魔法になるから、今かけてる分は変わらないぞ?」

「問題ないのじゃ」

「そうそう、下にいる相手に見せるためにかけ直せればいいだけだから」

「……大公を脅すため?」

「そういうこと」

俺はなるほどと頷いた。

だったらと、四人から古代の指輪を返してもらって、それを新しい【ヒューマンスレイヤー】に作り替えた。

新ヒューマンスレイヤーとか、ヒューマンスレイヤー2とかにしようと思ったけど、本で読む限り現存してる魔法も、昔の人がつくって改良を何回も加えて今の形になったってあった。

それで名前にそういうのがなかったから、【ヒューマンスレイヤー】も改良したけど【ヒューマンスレイヤー】のままでいいと思った。

ラードーンの注文通り、【ヒューマンスレイヤー】に改良を加えたのを、もう一度古代の記憶として作り直した。

それを四人分作り直して、四人に手渡す。

「これでいいと思う」

「ふむ、一度確認してみた方がよいかもしれんのう」

「だったら俺にかければいい」

「ほ?」

「え? いいの?」

ラードーン達は驚いた。

四人揃ってびっくりして、見開いた目で俺を見つめてきた。

「ここに人間は俺しかいないし、それに」

「それに、なんじゃ?」

「【ヒューマンスレイヤー】はすぐに解除すれば害は一切ないから何も問題ない」

「「「「……」」」」

四人は一瞬きょとんとした後、まるで示し合わせたかのように一斉に大笑いしだした。

「な、なんだ?」

「くくく、案外【ヒューマンスレイヤー】は小僧に効かぬのかもしれんな」

「え?」

「その考え方、人間とちょっと違うもんね」

「えっと……」

「頭で分かっていても実際にそういえる、そうできるのはいないわね」

ドラゴンたちは俺を囲んで、なにやら楽しげに、よく分からない事を言い合っていた。

なんだろう? と首をかしげた。

「くくく、では言葉通り、小僧を実験台にするのじゃ」

「ああ」

俺は頷き、ラードーンに向き直った。

ラードーンは指輪型の古代の記憶をはめて、俺にむかって手を突き出す。

そして、魔法を放つ。

「これは残念」

「え? 成功してるよね」

「だからじゃ、種族は人間のままということじゃ」

「ああ、さっきの話ね」

さすがに流れは理解できたけど、ますます困って苦笑いしてしまう。

【ヒューマンスレイヤー】がきいてきた、意識が徐々に遠のいていくのを感じた。

気を張って意識を保つと、俺のそばにもう一人の俺が現われた。

もう一人の俺は砂時計を持っている。

砂時計の砂が落ちるのとともに、体が腐り落ちていた。

「ほう?」

「どう、かな」

意識が遠のくのを根性で保つ。

ラードーンは【ヒューマンスレイヤー】を解いた。

砂時計をもったもう一人の俺が砂時計ごと消えた。

そして、それをやったラードーンはにやりと笑った。

「いいアレンジじゃ。120点やるのじゃ」

と、めちゃくちゃ褒めてきたのだった。