軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

166.ヴリトラは三度死ぬ

ヴリトラは見ていてかわいそうになるくらい落ち込んだ。

さすがにちょっと可愛そう過ぎて、見かねた俺はちょっと取りなすことにした。

まずはデュポーンの方を向いて、聞いてみた。

「本当に覚えてないのか?」

「うーん」

ヴリトラにせがまれても興味なしと一蹴したデュポーンだったが、俺に聞かれると首をかしげてそれなりに真剣に考えてくれた。

「うーん」

「……」

「うーん、どうだったかな」

「……」

「うーん、うーん」

「分かったもういい」

俺はデュポーンを止めた。

ちらっとヴリトラをみると――さっきよりも更に落ち込んでしまっていた。

よかれと思って聞いてみたが、逆効果になった。

俺の質問に答えようと真剣にうんうん唸るデュポーン。

それを一分近くやってもまったくとっかかりすら出てこない状況はヴリトラに絶望を突きつけて、とどめを刺すような形になってしまった。

「ラードーンは知らないのか?」

方向性を変えて、ラードーンに聞いてみることにした。

ラードーンとデュポーンは同じ時、同じ 世界(、、) に生きてきたもの同士。

デュポーンは性格的に会っていても覚えてないと言われるとまあ納得で、逆にラードーンは相手側の人間でも知っていて覚えている可能性がある。

そう思って聞いてみると――

『うむ、一言で言えばやつの信奉者だ』

――ビンゴ。

ラードーンは覚えていた。

「信奉者」

『そうだ。といっても一方的につきまとって、「俺が一番デュポーン様の役に立てるんだ」と主張しては、あれこれと空回っていたな』

「ああ……」

まだ呆然としているヴリトラをみた。

納得だ。

今もまさにそうで、一方的にやってきて、色々とやってみたがそもそものデュポーンに覚えられていないという盛大な空回りを見せていた。

そう思うと同情を禁じ得ない。

「てめえが……」

「え?」

ショックから立ち直ったのか? と思ったら、ヴリトラはゆらり――と俺の方を向いて、怖い目で俺を睨みつけてきた。

「てめえが……デュポーン様をたぶらかしたのか」

「いや――」

「うおおお!」

ヴリトラは絶叫しながら俺に飛びかかってきた。

直後――ヴリトラがビームで消滅した!!

「――タイムシフト!!」

俺はとっさに魔法をつかった。

時間を巻き戻せる魔法、タイムシフト。

それで限界ギリギリまで巻き戻した。

すると、直前にビームで消滅したヴリトラの姿が戻った。

「てめえが……デュポーン――」

俺はとっさにデュポーンの手を引いた。

時間を巻き戻す前、デュポーンは俺に襲いかかるヴリトラを一瞬で消滅させた。

反応すらできなかった問答無用の一撃で地上から消し去った。

理由はたぶん、ヴリトラが俺に「無礼な事をした」から。

このままだとまたヴリトラが消し飛ばされる。

止めないと。

止めないと――だけど、タイムシフトでほとんど魔力を使い切った。

時間を巻き戻して、なおかつ対処できる様に時間の余裕を持たせたけど、その分魔力の余裕がゼロになった。

今の魔力だと、デュポーンはおろかヴリトラさえも止められない。

どうしよう――

「――っ」

俺はとっさに、デュポーンを抱き寄せた。

手を引いた勢いそのままで、腕の中に引き込んで抱き寄せた。

「……ダーリン♪」

デュポーンは一瞬びっくりしたが、すぐに上機嫌になって、向こうから逆に強く抱きしめてきた。

俺に抱き寄せられたのが効いて、ヴリトラなんてまったく意識からすっ飛んでいた。

これでヴリトラは助かった――のだが。

「な、なな、なななななななななな――」

命は助かったが、そのかわり精神的なダメージを負った。

俺がデュポーンを抱き寄せて、デュポーンがそれを受け入れて恋する乙女な表情をした。

その事で、ヴリトラは盛大にバグって――これはこれでかわいそうになってしまった。

「……あっ」

「うん?」

「そっか……そかそか」

俺の腕の中から抜け出すデュポーン。

ニコニコしながら俺を見つめてきた。

「どうした」

「やっぱりダーリンってすごいね」

「うん?」

「助けたんでしょ、そいつ」

「ああ、気づいたのか」

「うん、ダーリンの顔で、それにまるで未来予知したみたいにあたしを止めたしね。タイムシフトなんでしょ」

「ああ」

俺は頷いた。

デュポーンはさすがに賢い。

三頭の神竜の一頭だけあって、観察力も洞察力もすごい。

普段は幼い感じがして色々とどうなのか、って思うところもあるけど、そこはさすがというところだ。

ラードーンと本質的にはやっぱり同じなんだなって思った。

「ふふ、やっぱりダーリンってすごい」

「そんなにすごいすごい言うことでもないんじゃないか」

「そんなことないよ。あたしが殺そうとした相手を守れる人間なんて、この世でダーリンしかいないもん」

そうなのか……そうかもな。

「だから――うふふ」

デュポーンはそう言って、再び俺に抱きついてきた。

「ああっ!」

話している間にショックが和らぎ、それで復活してきたヴリトラは。

タイミングが悪く、またまたまた精神的に打ちのめされたのだった。