軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

138.建国

迎賓館の中、大きなテーブルを置いた部屋の中で、俺はデビッドに向き合って座っていた。

俺達の後ろにはそれぞれ、エルフメイドに親衛隊兵と、最初に会った時と同じ組み合わせの部下たちが控えている。

あの一件があったから、レイナを始めとするエルフ達は最初から不機嫌さ全開で、向こうの親衛隊兵はデビッドがまた何かやらかさないかとハラハラしているのが手に取るように分かる。

そして、俺達の間には、カーディナルを始めとする、教会の聖職者達がいた。

今、調印のまっただ中である。

教会――大司教カーディナルの立ち会いの下、俺とデビッドがそれぞれ文書にサインしている。

友好を結ぶという内容の、同じ文書だ。

それをそれぞれサインすると、聖職者達がいったん回収して、カーディナルに渡す、それをカーディナルがチェックしてから。

「よろしい、では交換してそれぞれもう一度署名を」

カーディナルから文書を受け取った聖職者が、また俺とデビッドにそれぞれ運んできた。

先にデビッドがサインしたそれを受け取って、俺も指定の所にサインをする。

更にそれを聖職者が回収して、カーディナルが受け取って確認すると。

「よろしい。ここにおいて、ジャミール王国とリアム=ラードーンの友好が結ばれました」

「けっ!」

デビッドは悪態をつきつつ、椅子を倒すほどの勢いで立ち上がり、そのまま出口に向かってスタスタと歩き出した。

主のいきなりの乱行、親衛隊兵はいかにもハラハラした表情で、デビッドと俺、そしてカーディナルを交互に見比べた。

俺もカーディナルに視線を向けた。

カーディナルは小さく頷き、「任せろ」と言わんばかりにデビッドに問いかけた。

「王子殿下、どこへ」

「もう調印はおわったんだろ、俺は帰る」

「殿下、それはいくら何でも――」

「調印はした、文句があるのか?」

そう言い捨てて、デビッドは脇目もふらず、一直線に部屋から出て行った。

最後に思いっきり扉を叩きつけようとした――のを、先読みしたっぽい親衛隊兵がドアを押さえて音を立てないようにした。

そうして残ったのは、俺とレイナたちと、そしてカーディナル達だ。

「ふう……申し訳ありません、リアム陛下」

「いや、カーディナルさんが謝ることじゃないですよ。ああいうのは……しょうがないです」

まったく見た目は似ていないのにもかかわらず、俺はアルブレビト――ハミルトン家の長男の事を思い出した。

今の俺(リアム) の兄であり、ハミルトン家の跡取りでありながら、色々とやらかした上反省もない男だ。

デビッドの行動を見てると、なんとなくアルブレビトの事を思い出してしまう。

「さて、これで調印が終わったわけですが……リアム陛下に一つ、ご提案があります」

「なんですか?」

「近い将来、リアム陛下に我々の総本山、聖地ウルダウにお越しいただければと思っております」

「聖地……?」

『首都の様なものだ』

総本山か。

しかしそこに俺を招いてどうするんだ?

俺の疑問が顔に出たのか、カーディナルはふっ、と微笑んで説明をした。

「その時、ジャミール王、パルタ大公、キスタドール王もお招きしたいと考えております。リアム陛下を交えて、王たちの会合を開きたいと考えております」

「えっと、はい」

なんかすごい話だな、それは。

まあ、それは必要な事かもしれない、というのが俺にも何となく分かる。

それぞれの組織のトップが、集まって顔をつきあわせるだけでも意味がある。

もちろん、今のデビッドみたいにケンカ別れしない、という但し書きはつくけど。

カーディナル大司教が、更に総本山である聖地ウルダウに招くというのなら、そういう事はないだろう。

『ふふっ』

ラードーンは笑った。

何がおかしいんだろう。

『それだけではあるまいよ』

……?

「えっと、それはどうして?」

ラードーンに聞いてもいいんだけど、話を持ってきたカーディナルが目の前にいるんだ、直接聞いた方が早い。

「はい、リアム陛下に『王』になって頂くためです」

「王に? えっと……」

どういう意味なのか、ちょっと分からなかった。

俺はまだそういうつもりはないけど、まわりは既に俺を「王」に担ぎ上げている。

なし崩しだけど、そういう感じになっている。

その上で何を……?

「失礼ながら、三国は実際のところ、リアム陛下を王とは認めない見方が大半でしょう。魔物の国など……という声が少なからずありましょう」

「そうですね」

「そこに、我々が他の王とともに招いて、一堂に会させる。そうなれば、教会がリアム陛下を正式に王と認めたも同じです」

「なるほど……」

俺に権威を付ける、ということなのか。

「まだ、リアム陛下との付き合いも浅いのですが、陛下がもっとも、平和志向であることがわかります」

「そうかもしれない」

というか、ケンカ――戦争をこっちからふっかける理由がないからな。

「ですので、リアム陛下には是非正式に王になって頂いて、この地域の平和に寄与して頂きたく」

「わかりました」

俺は即答した。

「そういうことなら断る理由がなにもありません」

「おお、ありがとうございます」

カーディナルは嬉しそうに破顔した。

カーディナルのもくろみは成功した。

実際にまだ王たちが集まる前なのにもかかわらず、教会が「四王会議」という名目で俺達を召集すると発表すると、ジャミール、パルタ、キスタドールが一斉に俺――リアム=ラードーンを国として承認した。

国が成り立つ上で重要な要素。

国民、領土、自治権。

そして――他国とやり合って、認めてもらう事。

最後のピースがようやく揃い、リアム=ラードーンは正式に国として動き出したのだった。