軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

130.事実を告げただけ

「「「…………」」」

夕方になって、貴賓用の宿に案内するために、カーディナル一行を迎賓館から連れ出したら、全員が敷地を出たところで呆然として言葉を失った。

「どうしましたか?」

カーディナルも例に漏れず絶句していた、それを不思議に思って、横から見上げながら聞いた。

「リアム王。この……灯りは?」

「ああ、これ」

俺は頷き、町の方を見た。

夕方になって、急速に暗くなっていく街中の至る所で点いてきた、ライトの光。

もはやこの街の「当たり前」になった、生活インフラの一つ。

「魔法ですよ」

「魔法、ですか?」

「というか魔導書みたいなものですね。夜を照らす光と、生活に使う火と水。この三つを自由に出せる魔導書を、全員の家に繋げてあるんですよ」

「繋げてある?」

カーディナルは更に首をかしげた。

「これです――ノーム」

俺はしゃがんで、土の精霊を呼び出した。

カーディナルと一緒に来た聖職者がざわついた。

「ノーム、道路の一部を引っぺがしてくれ」

命令すると、土の精霊ノームは楽々と命令通りに、道路の一部を引っぺがした。

その下からハイ・ミスリル銀の舗設部分が見えてきた。

「これは……まさか!?」

「ええ、ハイ・ミスリル銀です。これで古代の記憶――魔導書みたいなのを作って、全員の家に繋げてるんです」

「ぜ、全員……」

ますます絶句するカーディナル。

彼は周りを――街を見回した。

一緒について来た聖職者達のざわつきも更に大きくなった。

「ハイ・ミスリル銀って……あの超希少な魔法素材のことか?」

「それを街全域に?」

「まさか……いくら何でもあり得ない」

ほぼ全員が信じられないって顔をする。

しかし、実際にハイ・ミスリル銀が埋まっていて、更に暗くなっていきやってきた夜に対抗するために、街の至る所からライトの光が灯されている。

信じられないけど信じざるをえない――皆がそういう顔をしていた。

うーん、言わない方が良かったかな。

『うむ、その通りだ。我が指摘するべきだった』

え?

それって、どういう事だ?

『お前は駆け引きなど考えないで、魔法を――ふふっ、そうだな、自分が開発した魔法を自慢する気持ちで教えたんだろう?』

うっ……。

ラードーンに痛いところを突かれた。

たしかに……それはある。

魔法に憧れて、こんな魔法を開発して、街全体が使える魔法の網を作り出した。

それを自慢する気持ちが……確かにあった。

ラードーンにそれをつかれて、急に恥ずかしくなってきた。

『いいや、お前はそれでいい』

え?

今度のは……どういう意味だ?

『機密かどうかの駆け引きは、まわりの人間がすればいい。そういう意味だ』

「……」

俺は首をかしげた。

機密とか駆け引きとか、どういう意味なんだ?

さっきからラードーンの言うことがいまいち分からない。

俺が自慢したという指摘みたいに、はっきりと言ってくれないとよく分からない。

魔法の事なら分かるんだけどなぁ……。

「失礼、取り乱してしまいました」

聖職者達の中で、カーディナルが一番早く落ち着きを取り戻した。

一行のリーダーたる大司教がそうなったのをきっかけに、他の者達も次々と落ち着きを取り戻した。

「これはすごいですね。魔物――失礼、悪い意味ではありません。魔物の街ならではの光景、といったところでしょうか」

「え? それは――」

『ここは頷いておけ』

「――まあ、そうですね」

理由はよく分からないが、ラードーンのアドバイスがとんできたから、俺は喉まで出かかった言葉を引っ込めて、ラードーンの言うとおりにした。

魔法以外の事はラードーンの言うことを聞いとけば間違いない。

今までの経験とラードーンに対する信頼から、俺はそうした。

「他にもなにかあるのですか?」

「えっと……」

『テレフォンくらいは教えても構わん』

「そうですね、こういうのがあります――」

俺は言われた通り、テレフォンの事を教えるために、魔法を使ってレイナを呼び出した。

魔物の中で、こういう時無難に応対してくれるのが、エルフのリーダーであるレイナだ。

『およびですか、ご主人様』

レイナの声がして、聖職者達はまたざわついた。

前に自然と三者通話になったときに、テレフォンをしている時に、俺と使い魔契約してる者達以外にも聞こえた方がいい場合もある事に気づいて、テレフォンの魔法を少し改良した。

テレフォンをした方の意志で、まわりに声が聞こえる様に出来る効果だ。

「レイナ、皆さんの部屋は用意ができてるか?」

『はい。エルフメイド隊一同、お越しをお待ちしてます』

「すぐに着くからそのまま待機してて」

『分かりました』

あまり意味のないやりとりを終えて、俺はテレフォンを切った。

そしてカーディナル達を向いて、説明する。

「これはテレフォンといって、離れた所にいる者と会話が出来る魔法です」

「そ、そのような魔法、聞いた事がないですが……」

「作りました」

「な、なんと!?」

カーディナルが驚き、聖職者達がさっと顔色を変えた。

ほぼ全員の顔が強ばっている。

いや、これは……怯えてる?

なんで怯えてるんだ?

「作ったというのは、魔法を開発したと言うことですか?」

カーディナルが聞いてきた。

『お前が開発した魔法の数を教えてやれ』

ラードーンから指示が飛んできた。

なんでここで数を……? と思ったが素直に従うことにした。

「はい。えっと……開発した魔法の数は、10くらいですか」

「じゅ、10!?」

「ばかな、そんなに!?」

「で、伝説級の魔術師でもそんなにはないぞ」

「ほら吹いてるんだろ」

「いやしかし、実際にあんな見た事もない魔法があるし……」

ざわつきがまた大きくなった。

理由はよく分からないけど、全員が俺に怯えだしているように見えた。

『これが駆け引きだよ。初歩の初歩だがな』

なるほど。

よく分からないけど、ラードーンが狙った通りの反応だって事か。

『お前の正当な報酬だよ』

「……?」

やっぱり、ラードーンがいう駆け引きの意味がよく分からなかった。