作品タイトル不明
949話 逆転の発想
「少しいいか?」
ルナが挙手した。
なにやらアイディアがあるらしく、自信たっぷりの笑みを浮かべている。
「うむ。精霊族の色々と小さい小娘よ、発言を許可する」
「色々と小さい!? なんなのだ、ケンカを売っているのか!? エーデルワイスだって、そんなに大きくないではないか!」
「ふっ」
「むきゃー! それでも勝っているし、みたいな顔がむかつくのだ!」
「落ち着きなさい」
「ふぎゃん!?」
ソラは、どこからともなく取り出したハリセンでルナをはたいた。
日々、ツッコミが過激に……というか、慣れてきているような気がする。
二人は、そのうち人々を笑わせる仕事に就くのだろうか……?
「話が脱線していますよ。ほら、なにか思いついたのでしょう?」
「むぅ……我が姉は、いつも通りバイオレンスなのだ。そんなだから、我と同じ色々と小さいままなのだ。体ではなくて、心も……」
「……」
「あ、いえ。ごめんなさい、すみません」
ソラに睨まれて、ルナは慌てて頭を下げた。
口調が普通になっているところを見ると、相当に焦っているみたいだ。
……ソラは怒らせたらいけないからなあ。
「それで……ルナよ。なにかアイディアがあるというのか?」
「うむ。ここは、逆転の発想なのだ!」
ルナは自信たっぷりに言う。
「空を渡る方法を考えるのではなくて、古城を落とす方法を考えればいいのだ!」
「ふむ?」
「ラストレムナントは、恐らく、魔法で空を飛んでいるのだろう? 重力を打ち消しているという方法もあるが、それにしては、やけに安定しているからな。ならば、その魔法を打ち消すか。あるいは、それ以上の強い負荷をかけることで、古城を落としてやればいいのだ」
「「「……」」」
敵地が空を飛んでいるのなら、大地に落としてしまえばいい。
なんて大胆な発想だ。
それは思い浮かばなかった、という様子で、この場にいる大半が驚いていた。
アルさん達も驚いていた。
「おーっ! いいね、いいね、それはすごくいいアイディアだと思うよ!」
「……待ちなさい、カナデ。あのルナが、こんなまともなアイディアを出すとは思えないわ」
「ソラも同意見です。もしかしたら、このルナは偽物かもしれません」
「ってことは、モナやな!?」
「ふふ。一人で敵陣にやってくるとはいい度胸ですわね。教育してさしあげますわ」
「敵、やっつける!」
「んみゃあああああーーーーーっ!!!? なんでそうなるのだ!?」
偽物扱いされたルナがキレた。
頭を抱えつつ奇声をあげて、バンバンバン! とテーブルを叩く。
「皆の我に対する扱い、認識が酷いのだ! なぜ、聡明で華麗で優雅な我が、ここまで疑われなければならん! 我こそ、至高の叡智を持つ奇跡の美少女なのだ!!!」
「「「そういう発言がアウト」」」
「ぐぬっ」
自覚はあったらしく、ルナが怯む。
とはいえ、今のやりとりで偽物ではないと理解したらしく、みんなは警戒を解いた。
……適当発言で本物と認められるなんて、とても複雑な気持ちだろうな。
「えっと……話を戻すけど、今のルナのアイディア、どう思いますか?」
他の皆に問いかけた。
しばしの沈黙。
考える時間が欲しいのだろう。
「……うむ。妾は問題ないと思うぞ。というより、それが最適解じゃろうな」
最初にアルさんが賛同の意を示した。
スズさん達も続く。
「浮いているのなら叩き落してしまえ。ちょっと乱暴ですが、でも、とてもわかりやすいですね」
「私が上からドカーン! ってやろうか?」
「俺もやるぜ?」
「二人共、そう簡単にはいきませんよ。もっと綿密な計画を立てないと」
「まあ、儂らは問題ないな。人間達はどう思う?」
シグレさんが王に問いかける。
王はゆっくりと頷いた。
「ええ、問題ありません。空中要塞を攻めるとなると手段が限られてしまいますが、ただの地にある要塞を攻めるのならば、とれる手はいくらでもあります」
「乗り込んで暴れることも簡単だな!」
「アクスの思考回路並に簡単ね」
「へへ、褒めるなよ」
褒めてない。
誰もが同じことを思っただろう。
「もちろん、私も賛成だけど……でも、どうやって古城を落とすの? 北大陸の果てなら、なにもないと思うから下の被害は気にしなくていいけど……」
「この城よりも大きい城を落とすというのは、ちょっと現実味に欠けますねぇー」
ミルフィーユがもっともな意見を口にした。
彼女が言う通り、古城を沈めるのはとても難しいだろう。
物理的に叩き落とすか。
空を飛ぶ力を断つか。
どちらにしても、とても厄介な問題で……
そして、ラインハルト側も黙ってみていることはしないだろう。
古城の飛行能力を確実に奪う方法。
そして、なるべくスマートに、そしてスムーズにいく方法を考えなければいけない。
しかし、古城に関する情報は少ない。
そんな状態で、どれだけの策を考えることができるか……
「主さま」
「我が主よ」
コハネとエーデルワイスが口を開いた。
コハネはいつものように優しい表情を。
しかし、どことなく自信に満ちた表情を。
エーデルワイスは、いつものように不敵な笑みを口元に。
「私の中に、ラストレムナントに関する知識、及び内部の構造を記憶しています。その中に、飛行能力を維持するための動力炉の場所も確認しています」
「その動力炉はとても硬く、常時、結界も展開されているだろう。もちろん、護衛の兵器もいる。ただ、私ならば全て打ち砕くことができるぞ?」
ラインハルトは、ラストレムナントという切り札を持ち出してきたものの……
でも、こちらには最初の最強種と魔王という規格外の存在がいる。
ルナの策を実行することは可能だ。
「わかった、二人を頼りにさせてもらうよ」
「はい、お任せください」
「ああ。私に任せるがよい」
「その上で……」
部屋に集まる皆を見回して、力強く言う。
「皆の知恵を結集させて、これ以上ないほどの策を考えよう」