軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

774話 こうなったらとことん

「にゃっほー」

「カナデ? それに、他のみんなも……」

すぐに王城に向かい、屋敷で得た情報をまとめてユウキのところに報告した。

証拠はないのだけど、シフォンの証言があれば信じてくれるだろう。

あと……俺の証言でもあるから、ユウキとサーリャさまなら信じてくれると思う。

そう考えるのはおこがましいだろうか?

なにはともあれ、俺達はその後の指示をもらうため、客間で待機することに。

そうして客間に移動したのだけど、そこにはカナデ達の姿があった。

「どうしてみんながこんなところに?」

「よくわからぬが、人間の王が我らに話があるみたいなのだ」

「宿に兵士がやってきて、城に来てくれないか、と頼まれました」

ルナとソラがそう説明してくれた。

ユウキだろうか?

不思議に思い客間で待っていると……

「申しわけありません、おまたせいたしました」

「サーリャさま?」

意外というか、姿を見せたのはサーリャさまだった。

ユウキも王もいない。

というか、侍女も護衛の騎士もいない。

城内とはいえ、単独行動をするなんて珍しいと思うのだけど……

「どうされました、レインさま? そんなに私のことをじっと見つめて……少し照れてしまいます」

「あ、いえ……」

「ふふ、冗談です。嬉しいのは本当のことですが」

反応に困ることを言わないでほしい。

あと、みんなの視線が痛い。

「さて」

こほんと、サーリャさまは咳払いを一つ。

それから表情を切り替えて、今まで見たこともないような厳しい顔になる。

「わざわざお呼び出してしまい、申しわけありません。どうしても内密にお話したいことがありまして……これからする話は他言無用でお願いいたします」

「その話は私達も聞いて問題ないのでしょうか?」

そう質問をしたのはセルだ。

一緒に調査を進めていたため、二人も一緒なのだけど……

「……」

サーリャさまと初めて顔を合わせるアクスは緊張のあまり石化してしまっている。

ある意味、よかった。

いつものようにサーリャさまを口説いたりしたら、さすがに不敬罪になるだろうし……今は気絶しておいてもらおう。

「ええ、もちろんです。別口だったとはいえ、私達が調査を依頼したのですから。ここで終わるとしても、話を聞く権利はあります」

「それはどういう……?」

「……私達の勝手な都合で真に申しわけありませんが、調査は打ち切らせていただきます」

勝手といえば勝手な話。

しかし、セルは驚くことはなくて、続きを促す。

「詳しい話を聞かせていただいても?」

「はい。実は……」

サーリャさまは険しい顔をして事情を説明する。

冒険者狩りはアリオスの仕業。

その調査を進めていく過程で、いくらかの貴族が謀反を企んでいることが判明した。

これ以上は冒険者の仕事じゃない。

国がやるべきことだ。

このまま調査を進めれば、貴族達が企む泥沼のような陰謀に巻き込まれてしまう。

そうなる前に撤退をしてほしい……とのことだった。

「ここまで調査していただいて心苦しいのですが……これ以上は、国がやるべきことです。下手に関わればどうなることか」

「そうなる前に、私達は手を引いてほしい、と?」

セルは厳しい表情だ。

サーリャさまの言うことは理解できるものの、セルとしても冒険者の誇りと意地がある。

どんな内容であれ、途中で依頼を投げ出すようなことはしたくないはずだ。

ただ、サーリャさまはそれを理解した上で、

「はい」

手を引いてほしいと、即答してみせた。

「……」

「……」

二人の視線が真正面から激突する。

火花が散っているかのような迫力で、それを眺めるカナデは尻尾をぶわっと膨らませていた。

「ふぅ」

ややあって、セルが小さなため息をこぼす。

「……わかりました。完全に納得したわけではありませんが、確かに、言っていることは間違っていません。その通りにします」

「ありがとうございます。それと、申しわけありません」

サーリャさまの視線がこちらに向いた。

「そのようなわけでして、レインさまも……」

「すみません。それ、無理です」

「え」

断られるとは思っていなかったのか、サーリャさまの目が丸くなった。

「貴族の謀反について、できることはほとんどないと思うんですけど……ただ、今回の件はそんな単純な話じゃないと思います」

貴族が謀反を企んでいる。

それだけなら簡単な話なのだけど……

でも、今回はそこにアリオスが関わっている。

勇者の称号を剥奪されたアリオスが国を恨み、貴族をそそのかして謀反を企んでいる……という話なら簡単だ。

ただ、それはないだろうと俺は判断していた。

かつてのアリオスなら、そんな短絡的な行動に出たかもしれない。

でも、魔族となったアリオスは別人のように落ち着いていた。

深い思考と視界を持っているように見えた。

「それに、アリオスが関わっているのなら、尚更ここで引き返すわけにはいきません。あいつのことを放っておくわけにはいかない。俺は……アリオスと決着をつけないといけません」

「レインさま……しかし、それは……」

「王女さま、私もレイン君に賛成かな」

話を見守っていたシフォンがそう口添えをしてくれた。

「レインくんが言うように、今回の件、単純な謀反とは思えないです。なにか別の目的があって……そして、それは謀反が子供のいたずらに思えるくらい、ひどいものなのかな、って思います。それがなんなのか、今はまだわからないですけど……ここで引き返したらダメです。絶対に」

「そうね、私も前言撤回して、勇者さまに賛成しようかしら?」

セルならそう言ってくれると思っていた。

危険ではあるのだけど、でも、残ってくれることが嬉しい。

みんな、この国と……そして、サーリャさまのことを考えてくれているんだ。

「……」

それでも尚、サーリャさまは難しい顔をする。

シフォン達の言葉を受け入れることができず、しかし、突き放すこともできず迷う。

そんな彼女に、俺は静かに声をかける。

「俺達なら大丈夫です」

「……あ……」

「色々な考えがあって、ユウキや王と一緒に検討を重ねた結論なんでしょうけど……でも、それだけじゃないですよね? サーリャさまは、俺達を危険に巻き込みたくない。そこが一番強い気がします」

「それは、その……」

「心配していただくのは嬉しいです。でも、これから大変なことが起きるかもしれないという時くらい、頼ってください。その……」

迷ったけれど、この言葉を伝えることにした。

「俺達は……俺は、サーリャさまの力になりたいです。あなたの友達だから」

「……レインさん……」

サーリャさまは目を大きくして……

次いで、わずかに涙を浮かべる。

でも、その顔は笑顔だ。

「ありがとうございます」