作品タイトル不明
770話 事件は静かに進む
アリオスの件、魔物が王都に侵入していた件。
それらを冒険者ギルドやユウキに報告して、さらに調査を進めた。
しかし、大きな成果はない。
変わらず冒険者狩りは続いているものの、以前よりも頻度が落ちた。
俺達に目撃されたことで、アリオスは活動を控えるようになったのか?
それとも、なにか別の思惑があるのか?
判断が難しいところなのだけど……
後手に回っていることは間違いない。
なので、この辺りで攻勢に出ることにした。
――――――――――
調査を始めて数日後。
俺達は一度、冒険者ギルドの客間に集合した。
「すんすん、すんすん」
昔、アリオスが着ていた装備の匂いをサクラが嗅いでいた。
こうして匂いを嗅いで覚えてもらうことで、サクラにアリオスの追跡をしてもらおう、という作戦だ。
呀狼族を犬と一緒にしたら失礼なのかもだけど……
現状、他に取れる手がない。
「うん! ぼく、覚えた!」
それと、なんだかんだサクラは乗り気だった。
こちらを見て、目をキラキラと輝かせる。
偉い? 偉い? と言っているかのようだ。
「ありがとう、サクラ。おかげでなんとかなるかもしれない」
「えへへー」
頭を撫でると、サクラの尻尾がはちきれんばかりに横に振られた。
「さっそくアリオスの追跡を始めたいけど……」
誰をメンバーにしよう?
サクラは当然として、俺も一緒に行くべきだろう。
アリオスのこと、他の人に任せるわけにはいかない。
かといって、大人数での追跡は好ましくない。
気取られてしまう可能性が高い。
「俺とサクラ。それと、イリスとシフォン。この四人で追跡しよう」
「「「えー」」」
カナデを筆頭に、残りのみんなが不満の声をあげた。
ここのところ別行動をしてばかりだったから、それをよしとしていないのかもしれない。
「ふふ……あいた」
イリスが勝ち誇るような顔をしたため、軽くデコピンをしておいた。
「みんなで行くと察知されて、逃げられるかもしれないだろう?」
「それはそうだけど……うにゃー」
「でも、少人数だとレイン達が危いのだ」
「大丈夫。無理をするつもりはないし、アリオスの隠れ家を見つけることが目的だから、戦うつもりはないよ」
「ほむ。それならば……」
「甘いですよ、ルナ。レインのことだから、誰かが襲われたりしていたら、必ず割って入るでしょう」
「レインの旦那が誰かを見捨てるとか、ありえへんもんなー」
「心配」
「えっと……」
褒められているのか、これ?
それとも、日頃から無理をしすぎと怒られているのだろうか?
「約束するよ。無茶はしない。シフォンも一緒だから、その辺りはきちんとサポートしてくれるはず」
「あら? そこでわたくしの名前が出てこないのはなぜでしょう?」
どちらかというと、イリスは喜んで場をかき乱すタイプだからな。
「みんなは今まで通り、情報収集を頼む。ただ、半分はいつでも動けるように待機しててくれ」
「らにゃー!」
――――――――――
「レイン、こっち!」
少し先をいくサクラは、立ち止まり、こちらを振り返ってぶんぶんと手を振る。
隠密行動が基本なのに、思い切り目立ってしまっている。
……まあいいか。
傍から見れば王都の観光を楽しんでいるように見えるだろう。
アリオスの潜伏場所に近づいてきたら警戒しないといけないが、まだその様子もない。
それに、サクラはじっとするのが苦手だからな。
今はのんびりさせた方がいい。
「……ねえ、レイン君」
ふと、シフォンが真面目な顔で問いかけてきた。
「前の勇者は、いったいなにを企んでいるのかな? 冒険者狩りなんて……」
「ろくでもないことに間違いないだろうけど……わからないな」
「一緒のパーティーにいたレイン君でも?」
「あの頃と比べると、アリオスはずいぶん変わったから」
ヤツがなにを考えているのか、なにを目的としているのか。
さっぱりわからない。
ただ、アリオスが俺に執着していることだけはわかる。
今回の事件もそれがきっかけになっている可能性が高い。
だからこそ、絶対に解決しないといけない。
「到着!」
しばらく歩いたところでサクラが足を止めた。
その先にあるのは……大きな庭を持つ貴族の屋敷だった。