作品タイトル不明
676話 姉妹の再会
夜。
イリスは、一人外に出て夜風を浴びていた。
レイン達は家の中だ。
ユウキとサーリャが泊まることになり、友好を温めている。
できることなら、イリスも一緒したかったのだけど……
今は、それ以上に大事な用があった。
「……」
待つ。
月夜を見上げながら、じっと待つ。
ひたすらに待つ。
そして……
「イリス」
静かな声が夜の闇に響いた。
振り返ると……
十六枚の翼を持つ天族、オフィーリアの姿が。
「オフィーリア姉さま……なのですか?」
イリスの声は震えていた。
そっと手を伸ばして……
しかし、ビクリと震えて、伸ばした手を引っ込めてしまう。
もしも幻だったら?
都合の良い幻覚を見ているだけだったら?
だとしたら、立ち直ることができないかもしれない。
確認するのが怖い。
「……」
イリスは前に進むことができず、下を向いて、立ち尽くしてしまう。
そんなイリスを見て……
小さく、本当に小さくではあるが、オフィーリアは口元に笑みを作る。
「大きくなったと思いましたが、まだまだ子供なのですね」
「……あ……」
オフィーリアがイリスを優しく抱きしめた。
温かくて、ふわりとした感触。
それと、ドクンドクンという心臓の鼓動。
オフィーリアは、確かにそこにいた。
「うっ……」
イリスは肩を震わせて、しばらくの間……泣いた。
――――――――――
「……みっともないところを見せてしまいましたわ」
あれから少し。
落ち着きを取り戻したイリスは、ぐすっと小さく鼻を鳴らしつつも、涙は止めていた。
そんなイリスを見て、オフィーリアは小首を傾げる。
「あら。みっともないところだなんて、思っていませんよ」
「そうなのですか?」
「ええ、昔もよくこうしていたではありませんか。同い年の子にからかわれて、お姉ちゃんと泣いてきて……」
「そ、そのようなことを持ち出さないでください!」
「しかし、私はそちらの印象の方が強く……そうそう、おねしょ癖はもう治ったのですか? よく布団を濡らして、私のところに泣いてきて……」
「やめてくださいません!!!?」
次々に恥部を叩きつけられて、イリスは涙目だった。
さきほどとは違う意味の涙だ。
「ああもう……本当に、オフィーリア姉さまは変わらないのですね」
色々と動揺させられたものの……
なんだかんだで、そのおかげでオフィーリアがまったく変わっていないことを知ることができた。
イリスにとってオフィーリアは、姉のような存在だ。
血は繋がっていないものの、小さい頃から面倒を見てくれて助けてくれて、心の底から信頼している。
彼女が生きていたことはとてもうれしい。
ただ……
「オフィーリア姉さまは、どうして無事だったのです?」
人間に捕まり、かろうじて脱出して……
その当時のイリスは、まずは復讐を後回しにして、仲間の救出を試みた。
しかし、調査をすると絶望的な状況で……
あれでは誰も生きていないだろう、という判断に至った。
直接、目で確認していなくても、そう思ってしまうような悲惨な状況だったのだ。
それなのに、オフィーリアはどうやって生き延びたのか?
「もちろん、オフィーリア姉さまが生きていてくれたことはうれしいですわ。ただ、あの状況からどうやって? と疑問の方が強く……」
「そうですね、それは当然の疑問でしょう。私も、あの時は死を覚悟しました」
オフィーリアは、どこか遠い目をして語る。
「……私を助けてくれたのは、マスターです」