作品タイトル不明
453話 猫と犬
色々なことが起きて……
そして、色々なことをしなければいけないと判明した。
ただ、敵の目的や居場所がすぐにわかることはない。
しっかりと情報収集を行い、分析をして、それから割り出していくことになると思う。
今まで、好き勝手をしてくれたモニカ。
そして、今もなお一緒にいるであろうアリオス。
二人には、ふざけたことをしてくれた落とし前をつけないといけない。
今度は、こちらから反撃に出る番だ。
……とはいえ、肝心の情報が集まっていないので、今はなにもできない。
いざという時に備えて、体を休めるだけだ。
「本当に、色々なことがあったからな。みんなも疲れているだろうし、しっかりと休まないと」
そんなわけで、俺は、家の周囲を散歩していた。
ちなみに一人だ。
誰かを誘ってもよかったんだけど、あいにく、みんなどこかへ出かけていたんだよな。
「ん?」
少し離れたところに、カナデを見つけた。
一緒にいるのは……サクラかな?
「……」
「……」
二人はじっと見つめ合い、
「にゃんっ!」
「オンッ!」
互いに吠える。
「にゃん?」
「オン?」
「にゃー」
「オフゥ……」
「みゃーん!」
「オーンッ!」
「にゃ……はっ!?」
おもしろおかしいやりとりを交わしていたカナデだけど、こちらの視線に気がついて、ビクリと震えた。
かあああぁと、恥ずかしそうに頬を赤く染める。
「れ、レイン!? いつの間に!?」
「えっと……ごめん?」
「謝らないで! なんか私、すごく痛い子みたいじゃない」
「いったい、なにをしていたんだ?」
「サクラと話をしていたんだよ」
「あれ? 言葉、わかるんだっけ?」
「わからないけどね。でも、鳴き声のトーンとかで、なんとなくはわかるよ」
「オンッ!」
カナデの言葉を肯定するように、サクラが高く鳴いた。
以前も、会話のようなことをしていたけど……
猫と犬。
案外、言葉が通じるものなのかもしれない。
それと、二人の相性がいいのかもな。
「オンッ! オンオンッ!」
サクラがこちらを見て、なにかを求めるような目を向けてきた。
ただ、俺にわかるのはそこまで。
具体的になにを求めているのか、そこまではわからない。
「カナデは、サクラがなんて言っているかわかるか?」
「散歩に連れて行ってほしいんじゃないかな?」
「散歩?」
「うん。レインと一緒に散歩に行きたいみたい」
なるほど。
呀狼族は犬と似たところがあるから、散歩も大好きなのだろう。
思えば、家に帰ってきてから数日経つけれど、一度も散歩に連れて行っていない。
サクラからしたら、けっこうなフラストレーションかもしれない。
「ごめんな。散歩のこと、すっかり忘れていたというか、思いつかなかったよ」
「オンッ!」
「気にしないで、だって」
「じゃあ、今からさっそく散歩に行くか?」
「オフゥ」
「わーい、だって」
カナデの通訳は正しいのだろう。
その証拠に、サクラの尻尾がぶんぶんとはちきれんばかりに横に振られていた。
「リードは……別にいらないか。とりあえず、街を一周する感じで……ん?」
「にゃー……」
どことなくうらやましそうな感じで、カナデがサクラを見つめていた。
次いで、こちらに求めるような視線を送る。
もしかして、カナデも散歩を?
首輪をつけて、リードを繋いで……
「って、そんなわけがないだろう」
一瞬、頭の中で、してはいけない想像をしてしまう。
ぶんぶんと頭を振り、おかしな想像……というか、妄想を追い払う。
「カナデも、一緒にサクラの散歩に行くか?」
「いいの?」
「いいよ。っていうか、別に断りを入れるようなことでもないだろう?」
「それはまあ、そうなんだけど……なんていうか、その、抜け駆けにならないかなー、なんて」
もじもじとしつつ、どこかもどかしそうな感じで言う。
なるほど、そういうことか。
俺とカナデは、今、微妙な関係なわけで……
そのせいで、ちょっとした遠慮が出てきてしまったのだろう。
これは俺のせいだな。
都合の良い話かもしれないけど……
できる限り、以前と変わらないように接してほしいと思うし、そのために、俺は色々な努力をしていかないといけないと思う。
「一緒に行こう」
カナデに手を差し出す。
「俺は、カナデも一緒にいてほしい、って思うよ」
「……レイン……」
「だから、ほら」
「うんっ!」
カナデは満面の笑みを浮かべて、俺の手をしっかりと握るのだった。
そんな俺達を見たサクラは、やれやれというような感じで、高く鳴いた。