作品タイトル不明
394話 親睦を深めよう
その日は、そのまま不死鳥族の里に泊まることになった。
カナデとシフォンは人質のため、別の部屋に。
俺にニーナとリファ。
それと、シグレさんとサクラも一緒だ。
「うーん」
案内された部屋は、五人で使うにはやや狭い。
ただ、きちんと掃除されているらしく、汚れなんかはなくて綺麗だ。
ベッドもふかふかの布団と枕が用意されていて、冷遇されているわけじゃない。
たぶん、シグレさんとサクラがいるからだろうな。
もしも俺達だけだったら、どうなっていたことか。
その点、改めてシグレさんとサクラに感謝だ。
「でも……やっぱり、落ち着かないな」
カナデとシフォンは大丈夫だろうか?
人質ということで、牢屋などに入れられていないだろうか?
冷遇されたり、ひどい扱いを受けたりしていないだろうか?
二人のことが気になってしまい、ソワソワしてしまう。
意味もなく部屋の中をぐるぐると歩き回る。
「落ち着かないのかい?」
シグレさんは俺とは違い、ゆったりとどっしりと構えていた。
「はい、まあ……」
「大丈夫さね。確かに、不死鳥族は人間を敵視しているけど、レイン達がなにもしなければ手を出すことはない、と約束をしたからねえ」
「それを破る、という可能性は?」
「ないさね。約束を破れば、不死鳥族は人間以下となる。そんなことは、とてもじゃないけれど認められないさね」
「そういうものですか」
「そういうものさね」
シグレさんがそう言うのならば、俺の心配は杞憂なのかもしれない。
完全に気にしない、っていうのは無理だと思うけど……
過剰に気にかけるのはやめておいた方がよさそうだ。
でないと、ゆっくりと休むことができない。
レースは明日。
しっかりと休んで体力を回復させて、万全の状態にしておかないと。
「……よいしょ」
ふと、ニーナが座っていたベッドから降りて、トテトテと部屋の入り口に向かう。
「ニーナ、どこへ? そろそろ寝た方がいいと思うんだけど」
「え、えっと……その……あう」
なぜか赤くなる。
俺、変なこと言っただろうか?
「んー」
リファがニーナの顔を覗き込む。
そして、小首を傾げながら、サラリと言う。
「トイレ?」
「っ!?」
「トイレに行くの? なら、ボクも行く」
「うぅ……」
ニーナがものすごく恥ずかしそうにしていた。
まだまだ子供と思っていたけれど、やっぱり女の子。
そういうことをズバリと聞かれることは恥ずかしいらしく……
俺、ちょっと配慮に欠けていたかもしれない。
反省だ。
「そういうことなら、私も一緒しようかねえ。ここはダンジョンを元にしているから、ちょっとややこしい作りになっているのさ」
シグレさんが一緒なら安心だ。
部屋を出る三人を見送り……
「わふぅ」
サクラと二人きりになる。
トテトテとこちらに歩み寄り、尻尾を振りつつ、俺を見上げる。
「どうしたんだ?」
「オンッ!」
「もしかして、頭を撫でてほしいのか?」
「わふぅ」
正解と言うような感じで、サクラが頭を差し出してきた。
リクエスト通り、なのかはわからないけど、その頭をなでなでする。
「はっはっは……!」
ものすごくうれしそうにしていた。
尻尾が左右にブンブンと揺れていて、ちぎれて飛んでいってしまうのでは? と心配になるほどだ。
「そうだな……せっかくだし、良い機会かもしれない」
明日はサクラと組んでレースに挑むことになる。
こういうのは連携が大事だと思うから、今のうちに、できる限り仲良くなっておきたいと思う。
「なあ、サクラ」
「オンッ!」
「どうしてサクラは、俺に良くしてくれるんだ? シグレさんからは色々と聞いているんだけど、でも、サクラからはなにも聞いてないからさ。どうしてなのかな、って、できれば本人から聞きたいんだ」
「おふぅ……オンッ! オンオンッ」
当然のことながら、サクラがなんて言っているのかわからない。
俺はビーストテイマーだけど、さすがに、動物の言葉は知らないからな。
でも……なんとなくだけど、サクラの気持ちは理解できた。
自分で言うのもなんだけど、俺のことを好いてくれているみたいだ。
「その部分がどうして、ってことになるんだけどな。うーん、言葉がわからないのがもどかしい」
「おふぅ……?」
「ん? 心配してくれているのか? あはは、大丈夫。別に辛いとか苦しいとか、そういうわけじゃないから。ありがとな。サクラは、とても優しい子だ」
「オンッ!」
もう一度頭を撫でると、サクラはうれしそうに鳴いた。
その姿を見ていたら、言葉が通じないことで悩んでいた自分が、なんだか馬鹿らしくなる。
確かに言葉は通じない。
サクラがなにを言っているのかわからない。
でも、その心は通じているような気がした。
こうして一緒にいれば問題ないというような、そんな気持ちになる。
「俺は、サクラに信頼されているのかな?」
「オンッ!」
「なら、それに応えられるように……それと、裏切らないようにしないといけないな」
おいでおいで、と手招きをする。
サクラはさらにうれしそうにしつつ、俺の膝の上に乗る。
「おぉ、すごいもふもふ感が」
サクラはけっこう大きいから、膝の上に乗るとふわふわでいっぱいになってしまう。
それでも、その大きな体をぎゅうっと抱きしめてやる。
すると、ものすごくうれしそうにされて、俺の顔をペロペロと舐めてきた。
「俺さ、どうしてもやらないといけないことがあるんだ。絶対に助けないといけない子がいるんだ」
「わふぅ」
「だから……明日は力を貸してくれないか?」
「オンッ!」
「うん、ありがとう、サクラ。一緒にがんばろうな」
「オォーンッ!」
自分に任せろというように吠えるサクラの頭を、再び撫でるのだった。