軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

336話 リファの食事

「さてと……こんなところかな?」

それほど大きいところじゃないから、食料や水の補充にちょっと苦労したけど……

それでも、必要な分を確保することができた。

一人で持ちきれないほどの量で、後で届けてもらうように手配しておいた。

これで十分だろう。

空を見ると、ちょうど太陽が真上に来ていた。

昼時だ。

「まずは昼を食べて……それからみんなと合流して、今後の相談をして……明日には出発できるかな?」

今後の予定を考えつつ、空腹を満たすために食事ができるところを探す。

といっても、小さい街なので場所は限られている。

結局、今使用している宿で食べることにした。

「おっ」

リファとニーナを発見した。

二人も昼ごはんだろうか?

相席をしようとして……

とんでもない光景を目撃して、慌てる。

「あーん……はむっ」

「んっ」

リファがニーナの腕に噛みついた!?

ニーナは軽く体を震わせるが、同意の上なのか、リファを振りほどこうとしない。

そのまま、リファに身を任せて……

リファはリファで、どこか満足そうな顔をしつつ、ニーナの血をちゅうちゅうと吸う。

「ちょっ……リファ、ニーナ。なにをやっているんだ?」

「あ……レイン。こん、にちは……」

「ん、こんにちは」

二人共、ものすごく落ち着いていた。

一人、慌てている俺がバカみたいだ。

「なんで、リファはニーナに噛みついて……?」

「食事」

「え、食事?」

「そう、これは食事」

「……ど、どういうことだ?」

「ボクは吸血鬼。血が食事」

「あ、そういえば……」

衝撃的な光景に動揺していたけれど……

リファが言うように、吸血鬼という種類の鬼族は、時に血を食事とする。

能力を使う時は血が必要になるために、時に血が足りなくなるらしい。

そういう時は、他者から供給してもらうのだとか。

「ボク、ニーナをいじめてないよ。理解した?」

「ああ……うん、そうだな。ごめん。俺が早とちりした」

「いいよ。驚くのが普通」

そんな話をしつつ、リファはニーナの血をゆっくりと吸い続けている。

その度に、ニーナはぴくぴくと体を震わせていた。

「ニーナ、痛くないか?」

「ん……へ、平気。どちらかと、いうと……あふぅ」

妙に色っぽい吐息がニーナの唇からこぼれた。

気持ちよくなっている?

「吸血する際は、特殊な麻酔が牙から出ている。痛みをなくすためと、血を分けてもらうお礼のようなもの」

俺の疑問に答えるように、そんなことをリファが教えてくれた。

「ふう……ごちそうさま」

「どう、いたしまして……」

満足した様子で、リファはニーナの腕から口を離した。

犬歯で噛まれた跡が残るものの……

リファがぺろりと舐めると、それもすぐに消えた。

アフターケアも万全らしい。

「レインは……どう、したの?」

「ごはんを食べようと思って」

「一緒に……食べよ?」

「ああ、そのつもりだったよ」

一緒のテーブルについた。

その際、なぜか二人が席を移動して、俺を真ん中に誘導する。

「わたし、も……ごはん、これから」

「ボクも一緒に食べる」

「リファは血を飲んだのに?」

「血は能力を使用するために必要なもので、空腹は満たされない。ごはんはごはんで、ちゃんと別に食べないとダメ」

「なるほど」

俺は焼き魚、リファは焼き肉、ニーナはサラダセットを頼んだ。

食べるもの一つでも、それぞれに個性が出るからおもしろい。

注文した食事が運ばれるまでの間、リファとニーナと雑談を楽しむ。

なんてことのない話だけど、でも、それが楽しい。

「じー」

ふと、リファが俺を見つめた。

正確に言うと、俺の首の辺りに視線を向けていた。

「どうしたんだ?」

「レインの血、おいしい?」

「いや、どうだろう……さすがに、それはわからないけど」

「飲んでみてもいい?」

どうやら、リファはまだ満足していなかったみたいだ。

物欲しそうな目をしつつ、じっと視線を注いでくる。

それと、時折、舌なめずりしていた。

もはや苦笑するしかない。

「あー……お手柔らかに頼む」

「いいの?」

「あまり痛くしないでくれよ?」

「任せて」

リファは、表情こそ変わらないものの、どこかうれしそうにしつつ、椅子の上で膝立ちになった。

そうして俺の首元に口を寄せて……

「あむっ」

そっと犬歯を突き立てた。

チクリとした痛みが走るものの、それはすぐに消えてしまう。

代わりに甘く痺れるような感覚が広がる。

確かに、ぜんぜん痛くない……というか、気持ちいい。

酒に酔っているような感じで、体がふわふわとしてきた。

リファはどうなんだろう? 俺の血で満足できているだろうか?

気になり、軽く首を動かして視線を横にやると……

「ふあ……!」

初めて見るような感じで、目をキラキラさせているリファがいた。

「こんな血、初めて。甘くてコクがあって深い香りがして……あむあむ」

「ちょ……!?」

リファは夢中になって俺の血を吸う。

吸い続けるものだから、軽く目眩がしてきた。

やばい、貧血か?

そんなになるまで飲まれているなんて……

リファのヤツ、手加減を忘れている……というか、全力で吸血していないか?

このままだと、さすがに……

「ダメ……だよ?」

やばいと思ったところで、ふっと、肩にかかるリファの重みが消えた。

振り向くと、吸血する体勢のまま、一つ隣の席へ移動していた。

「……あれ?」

「リファ、やりすぎ」

ニーナが、めっ、と怒る。

それで、自分が我を失っていたことを思い出したらしく、リファは申しわけなさそうな顔になる。

「……レイン、ごめん。ボク、やりすぎた」

「気にしないでいいよ。ちょっとびっくりしたけど、でも、特になんてことはないし」

「ボクがあんな風になるなんて……うかつ」

なにやら吸血鬼としての矜持があるらしく、リファはわりと本気で落ち込んでいた。

我を忘れて吸血するなんて獣と同じ、という風に考えているみたいだ。

「むう。でも、ボクが我を忘れるなんて……不思議」

「あー……それ、俺が原因かもしれないな」

「どういうこと?」

「俺の血は普通じゃないみたいだから」

「……あ」

少し考えて、納得したような感じでリファが小さくつぶやいた。

俺にも勇者の資格があることは、この前、リファにも説明しておいた。

勇者の資格というのは、神の血をわずかながらに継いでいるということだ。

つまり、普通の人の血とは違うわけで……

そのせいで、リファは夢中になってしまったんだと思う。

「納得。ボクが我を忘れたのも仕方ない。でも、悪いことをした。ごめんなさい」

「いいよ。これから気をつけてくれれば」

「これから、ということは、また飲んでもいい?」

「あ、ああ……たまになら」

ものすごい勢いでリファが食いついてきて、ちょっと引き気味に答えた。

「やった。ふふふ」

早まっただろうか?

にっこりと笑うリファを見て、そんなことを思う俺だった。