作品タイトル不明
317話 VSヴァイス
カムイを手にして、何度かヴァイスと切り結ぶ。
ヴァイスは鬼族の人達を操る魔力の糸を武器にして、こちらの攻撃を受け止めていた。
また、タイミングを見て攻撃をしかけてくる。
魔族と戦うのはこれが二度目。
ただ、人型の相手は初めてだ。
細心の注意を払い、隙を見せないように攻撃と防御を交互に繰り返す。
幸いというか、今のところ一人でも戦うことができている。
しかし……妙だ。
ヤツの動きが中途半端というか、時々、突然動きが鈍くなる。
そんなことがあるのだけど、こちらの攻撃が届くことはない。
まるで遊ばれているような……?
「ふむ……そろそろ頃合いか」
「なんだと?」
「見てみろ、おもしろいものが見られるぞ」
ヴァイスが大きく距離を取り、後退した。
わざわざこんなことをするくらいだ。
罠の可能性は低いと思い、ひとまず、こちらも手を止める。
その時だった。
「うぅっ……あ、ううう……うぁああああああああああぁぁぁっ!!!!」
戦場を揺さぶるような、強烈な叫び声が駆け抜けた。
その声は……リファ!?
慌てて振り返ると、リファが涙を流していた。
「お兄ちゃん……! お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃんっ!!!」
「リファ……これは……」
「どうだ、おもしろいだろう?」
ヴァイスが口元を歪ませて、醜悪な笑みを浮かべていた。
「もう会えないと思われていた兄と再会することができた。感動的だな」
「あれは……お前の仕業なのか……?」
「ああ、そうだな」
「なぜ……あんなことを……?」
「おかしなことを聞くのだな。おもしろいからに決まっているだろう?」
さも当然のように、ヴァイスはそう答えた。
こちらを煽るわけではなくて、それ以外の回答はないというような、そんな顔をしている。
あぁ……そうか、そういうことか。
たった今、理解した。
こいつは……敵だ!!!!
「貴様ぁっ!!!」
「むっ!?」
気がつけば体が動いていた。
駆けながら、ナルカミから針を飛ばして牽制。
さらにワイヤーを飛ばしてヴァイスを拘束して、そこにカムイで斬りかかる。
しかし、相手も簡単にやられてはくれない。
拘束された状態でありながら、自由に動かせる指をくいっとやり、魔力の糸をいくつも重ねて盾と化して、俺の攻撃を防ぐ。
「やれやれ……儂が話している最中だというのに、いきなり斬りかかってくるか。これだから人間は……」
「黙れ! 貴様の話なんて、もう一言も聞きたくない!!!」
体が熱い。
怒りが次から次にこみ上げてきて、どうしようもない。
暴走する体を止めようとしたり、荒ぶる心を落ち着けようと、わずかに残った理性が奮闘するものの……
しかし、結局、そんなものはすぐに消えてしまう。
怒り。
怒り。
怒り。
果てしない憤怒が俺を突き動かす。
魔族は人だけじゃなくて、他の生き物とも相容れない。
生きとし生けるものの天敵だ。
だから、互いに牙を剥くことは理解できる。
戦い、その結果、死んでしまうことも理解できる。
ただ……でも、相手の死体をおもちゃのように扱い、その尊厳を踏みにじり、リファのような女の子を傷つけることが許されるわけがない。
そんなことは絶対に認めない。
こいつだけは……!!!
「やれやれ……怒りに任せて戦うとは。人間とは愚かだな。そのようなことをしては、十の力を発揮することはできなくなるというのに」
ヴァイスの両手の指から魔力の糸が伸びた。
計十本。
もう死体を操る必要はないというように、その全てを俺に向けて、攻撃に転換する。
十本の魔力の糸が生き物のように不規則にうねりながら、襲いかかってきた。
前から、後ろから、右から、左から、上から……
ありとあらゆる角度から、俺の逃げ道を塞ぎ、食らいついてくる。
「ファイアーボール・マルチショット!」
前から迫る三本の魔力の糸は、魔法で迎撃をして……
「物質創造!」
死角から迫る魔力の糸は、石の壁を生成して受け止めた。
「甘いな」
「っ!?」
さらに十本の魔力の糸が編み出された。
それらは直上から迫り、流星雨のごとく俺に向けて降り注ぐ。
「くっ!」
「まだまだ終わらない」
さらに十本の魔力の糸が追加されて、空間が埋め尽くされる。
計三十本の魔力の糸。
それらは牢獄のように展開されて、俺の逃げ道を封じて……
そして、体を貫く。
「ぐっ!」
どうしても避けることができず、右腕と右足をやられてしまう。
針に貫かれたようなもので、傷口自体は小さく、出血は少ない。
ただ、痛みは相当なもので、体を動かそうとすると痺れるような衝撃が広がる。
「どうだ? これが儂の力だ」
「……」
「儂の魔力の糸は攻防一体。相手に逃げる隙を与えることなく、また、攻撃を許すこともない」
「……」
「言っておくが、これが限界ということはない。まだ数十本の魔力の糸を……」
「黙れ」
「む?」
痛みが走るが、そんなものは気にしない。
右腕と右足を貫かれて、軽く動かすだけでも衝撃が走るけれど、でも、そんなものは気にしない。
気にしていられない。
だって、俺よりも傷ついている人がいるんだ。
兄を失い……
その兄を戦いの道具にされて……
リファの心は、この場にいる誰よりも傷ついているんだ。
そんなふざけたことをしでかしたヤツ。
魔族……ヴァイス。
絶対に許さない!!!