軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

301話 おまたせ

「まずいのだ! 連中、街の門にとりついたぞ!?」

魔法を連発しつつ、ルナが焦りを含んだ声で言った。

その近くで戦っていたカナデ、タニア、ニーナが振り返り、街の方を見る。

魔物の群れが槍のような陣を形成して、街に向かい突撃を繰り返していた。

冒険者と騎士が一致団結して防ぐが、それも長時間は続かない。

激しい攻撃に絶えきれず押されてしまい、穴ができてしまう。

そこから魔物がなだれこみ……

一匹、また一匹と魔物が門にとりついた。

門の上に残った冒険者と騎士達が迎撃に当たるが、いかんせん数が多すぎた。

一匹倒す間に三匹が登ってきて、対処不可能に陥ってしまう。

「ルナ、魔法でまとめて吹き飛ばせないの!?」

「他の人もまとめて吹き飛ばしてしまうのだ!」

タニアの悲鳴のような問いかけに、ルナも悲鳴のような答えを返した。

「あたしの火球やブレスも巻き込むからダメ。なら、ニーナにカナデを送ってもらうしか……」

「あう……ごめん、なさい。目的地がはっきり見えないと……転移は難しい、かも」

「ならなら、私があそこまで走って……うにゃー、邪魔!」

そうはさせるものかと魔物がわらわらと群がってきて、カナデがうっとうしそうに大きな声をあげた。

拳を連打して、さらに回転しつつ蹴りを繰り出す。

触れるもの全てを吹き飛ばす独楽のようだ。

しかし、それで敵を倒すことはできても、その場から移動することができない。

救援に向かいたいけれど、そうすることが不可能な状況に陥っていた。

「ソラとティナは!?」

「我が姉ならば、この先で魔法を連打しているのだ! 姉がいなくなると、さらに大量の魔物がなだれこんでくるから、配置転換は難しいぞ」

「ティナ、は……あっちで撹乱してるから……やっぱり難しい」

「まずいわね……! このままだと冗談抜きで洒落にならない事態になるわっ……あの鬼族の子は!?」

タニアが慌てて周囲を見回して……

少し離れたところで、孤軍奮闘しているリファを見つけた。

リファはクリオスの住民や、そこに住まう鬼族との連携は磨いてきたが、カナデ達と一緒に戦うのはこれが初めてだ。

うまい具合に連携をとることができず、邪魔をしないように離れて戦い……

結果、一人だけ孤立することになってしまっていた。

「ま、まずいのではないか? リファはかなり強いっぽいが、いくらなんでも一人であの数は辛いのだ」

「ああもうっ、次から次に問題が……!」

「リファのところには私が行くよ! うにゃんっ」

カナデが特大のジャンプを見せて、打ち上げられる砲弾のごとく空を飛んだ。

いや、空を駆けた。

そのまま放物線を描いて……

リファが戦う隣にぴたりと着地する。

着地するついでに、その場にいた魔物を上から押しつぶしていた。

「びっくり」

空から降ってきたカナデを見て、まったくの無表情でリファがそう言った。

「手伝うよ!」

「んっ」

カナデが加わったことで、リファがのびのびと戦い始めた。

やはり、一人であれだけの数を相手にするのはさすがに厳しかったのだろう。

最強種故に負けることはないが、疲労は蓄積されていく。

しかしカナデが加わったことで体にも心にも余裕ができた……という様子だ。

「あっちはあれでよし。で……肝心の門の方は」

どうするべきか?

タニアは迷う。

いつの間にか仲間達を指揮する立場に回っているが……

本来、このような頭脳労働は苦手なのだ。

基本的に、おもいきり暴れている方が気楽だ。

ここにきて、いつも指揮をとってくれているレインのありがたみがよくわかる。

戦いながら、こんなにも頭を回転させていたのだろうか?

尋常ではない。

本当に人間だろうか?

人間の皮をかぶった最強種ではないか?

ついついタニアはそんなことを考えてしまう。

「とにかく、レインが戻るまではなんとかしないと……!」

「どうするのだ!?」

「ここはルナとニーナに任せるわよ!」

答えを待たずに、タニアは背中に翼を生やして飛び立った。

空からも襲い来る魔物達を蹴散らしつつ、一気に門へ移動した。

勢いよく門の手前に降り立つ。

その衝撃で地面にヒビが入るが、そんなことは気にしてられない。

気にしてるヒマもない。

「みんなっ、伏せて!」

タニアの叫び声に、門の上にいた冒険者と騎士達は慌てて頭を抱えて伏せた。

タニアがなにをしようとしているのか?

それはわからないが、経験上、やばいということは理解したのだ。

タニアは翼を大きく広げて……

ブレスで門ごと魔物の群れを薙ぎ払った。

ただ、本気のブレスというわけではない。

かなり加減して、威力が減衰したブレスだ。

門を破壊することはなく……

しかし、門に取り付いた魔物を吹き飛ばすことはできて……

門を乗り越えて街になだれこもうとしていた魔物を蹴散らすことに成功した。

それでも安心することはできない。

すぐに増援の魔物が押し寄せてきて、タニア達を飲み込もうとする。

「はぁっ!!」

タニアに襲いかかろうとしていた魔物を、ステラの剣が切り裂いた。

「ステラ! あんた、いつの間に」

「タニアと同じだ。門を守らなければならないと思い、ここまで戦線を下げた。いや、下げざるを得なかったというべきか……とにかく、これ以上はダメだ」

「わかってるわ!」

ここが最終防衛ラインだ。

この後ろには街がある。

力を持たない人がいる。

自分達がここで食い止める。

タニアとステラは決意を固めるが……

その決意を砕くように絶望がやってくる。

「な、なんだ、あれは……」

ステラが愕然とした様子でつぶやいた。

その視線を追いかけて……タニアも唖然とする。

「あれ……魔物なの?」

巨大な山のようなものが動いていた。

仲間なんて関係ないというように、行く手に広がる魔物達を踏み潰して……

大地を鳴らしながら歩く。

ジャイアントトータス。

小さな丘ほどもある、巨大な亀の形をした魔物だ。

速度は非常に遅いが、その巨体から繰り出される攻撃は、城壁や門を一撃で破壊する。

さらに甲羅は鋼よりも高く、防御力も高い。

Aランクにカテゴリーされている魔物だ。

「なによあの化け物……!」

「まずいぞ、タニア! あれはジャイアントトータスだ。あいつの攻撃なんて受けたら、門は簡単に壊れてしまう」

「なら……その前に倒してあげる!」

タニアが必殺のドラゴンブレスを放つ。

本日何度目のブレスだろうか?

さすがに疲労を覚えていた。

それでも全力の一撃だ。

これに抗うことができるのは、同じSランクの最強種か魔族くらいだろう。

そう思っていたのだけど……

「なっ!?」

ジャイアントトータスは甲羅の中に手足と頭を引っ込めて、防御態勢を取る。

そこにブレスが直撃するが……

爆炎が晴れた後、ジャイアントトータスは何事もなかったかのように手足と頭を出して、歩みを再開した。

「おかしいでしょ!? なんであたしのブレス直撃して、平然としてられるのよ!?」

「ジャイアントトータスの能力は高いが、特に防御力に優れているんだ。その防御力を突破できる者はほとんどいないと言われていて……それ故に、Aランクにカテゴリーされている」

「ああもうっ、ふざけた亀ね!」

苛立たしそうにタニアがワシャワシャと髪をかき乱した。

それだけ焦りを覚えて、混乱しているのだろう。

「こうなったら、元の姿で戦おうかしら……?」

ドラゴン形態になればあんな亀に負けることはない。

タニアはそう思い、考える。

ただ、周囲に対する被害がとんでもないことになりそうだ、と思った。

基本的に冒険者や騎士達は門の方に集結しているが、それでも全員というわけじゃない。

あちらこちらで陣を組み、懸命に戦っている人達がいる。

下手をしたらそんな人達を巻き込んでしまう。

「くっ……どうすれば……!」

「……こうすればいいんじゃないか?」

「えっ」

「ファイアーボール・マルチショット!」

どこからともなく複数の火球が飛来して、ジャイアントトータスの足元で炸裂した。

ジャイアントトータスにダメージを与えることはないが……

地面に大きな穴があいて、そこに足をとられたジャイアントトータスは動けなくなってしまう。

的確に弱点を見抜いて、行動に移した者は……

「レインっ!!!」

「おまたせ」