軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

248話 魔道具の行方

改めて、一からアクスとセルに今回の事件について説明した。

俺は無実であること。

サーリャさまに助けてもらったこと。

殺害現場を記録した魔道具が怪しいということ。

それらを説明した後に、アリオスが所有する魔道具をどうにかして手に入れたいということを話した。

話を聞いたアクスとセルが難しい顔になる。

「あの魔道具か……確かに、怪しいといえば怪しいな」

「調査に必要だからという騎士団の要請を、貴重なものだから、と言ってはねのけているらしいわ」

いくら貴重なものだとしても、事件が解決されれば、そのまま返却されるはずだ。

騎士団も大事な証拠品を壊すようなヘマはしないだろうし……

アリオスとしても、俺を犯人に仕立てたいのならば、喜んで魔道具を貸し出すだろう。

それなのに、アリオスは魔道具を手放そうとしない。

執拗なまでに手元に置いておこうとする。

魔道具を調べられたらやましいことがある、というように見えた。

「アクスとセルなら、騎士団が魔道具を手にする日を調べられるだろう?」

「できないことはないが……時間がかかるぞ? 明日明後日だとしたら、間に合うかどうか……」

「いいえ、その心配はいらないわ」

「どういうことだ?」

「私、勇者が騎士団に魔道具を貸し出す詳しい日時を知っているの」

「「えっ?」」

俺とアクスは揃って驚きの声をあげた。

まさか、俺が来ることを想定して、あらかじめ動いていた……とか?

ついついそんなことを考えるが……

さすがにそれはないという感じで、セルが苦笑する。

「言っておくけれど、偶然よ? あの後、騎士団に協力して事件の調査をしていたの。アクスも同じよ。本当にレインが犯人なのか? そのことを突き止めるために、それぞれ別行動をして、調査をしていたわ」

「い、言っておくけどレインのためじゃねーからな!? あの事件については、俺も納得できないところがあって……だから、俺自身が納得するためにしていたことだ!」

「……ありがとう」

「ばっ、おま……素直に礼なんて言うな。調子が狂うだろ」

「アクス。男がツンデレをしても気持ち悪いだけよ」

「セルはツンしかないな……」

久しぶりの二人のやりとりに、思わず笑ってしまう。

「……話が逸れたわね。まあ、そういうわけだから……私達は今、騎士団と行動を共にすることが多いの」

「レインが脱走したことで、一気に慌ただしくなって……俺は姫さまの捜索に駆り出されている」

「私はそのまま、事件についての調査。騎士団の中でも、あの事件について疑問に思う人はいるらしく、細かい検証が進められているの。ただ……勇者が邪魔をしているわ。あの勇者、なんとしてもレインを有罪にしたいみたいね。勇者の権力を使い、早く裁きを下すように手を回してきたわ。バカな男ね。そんなことをすれば怪しまれるのに」

「はは……」

相変わらずというか、セルはキツイことを言う。

それが懐かしくもあり、なんともいえない気持ちになった。

「レインが脱走したことで、勇者も焦りを覚えたんでしょうね。捜査を進めたいらしく、散々渋っていた魔道具の貸し出しを許可したわ」

「それはいつ……?」

「明後日よ。受け渡しの場所は、騎士団本部。よほど他人に魔道具をいじられたくないみたいね。勇者立会の元、検証が行われるらしいわ」

明後日か……

なかなかに微妙な時間だ。

準備をするために、もっとたくさんの時間が欲しいところだけど、ないものねだりをしても仕方ない。

「助かったよ。おかげでなんとかなりそうだ」

「今の情報だけでいいのか? ……多少は手伝ってもいいぞ?」

「ありがとう。でも、十分だ。それに、俺に協力したことがバレると二人の立場も危うい」

「バカやろう……俺らのことを気にしてる場合じゃねえだろ」

アクスは怒ったような顔になるが、それ以上は何も言わない。

「必要があれば声をかけてちょうだい。協力は惜しまないわ」

「その時は頼りにするよ」

アクスとセルに感謝の笑顔を見せて……

俺は外に出た。

――――――――――

部屋に残されたアクスとセルは、それぞれ微妙な顔をする。

「あいつ、かなり追い込まれてるはずなのに、俺らの協力はこれ以上はいらない、って……大丈夫なのかよ?」

「大丈夫ではないでしょうね。こんな状況なら、人手は一人でも必要なはずよ」

「なら……!」

「私達を巻き込みたくないのでしょうね」

「……」

「今ならまだ、事が露見しても私達に問題が及ぶことはないから……だから、軽い一歩だけにしておく。まったく……必要以上に優しいところも変わらないのね」

「でもよ、そんなの……」

「わかっているわ。納得していないのは私も同じ。だから……勝手に動くことにしましょう。私達が勝手に動くことについて、レインに止める権利なんてないものね」

「よしっ、さすが俺のセルだ! そう言ってくれると信じていたぜ!」

「誰があなたのものなのよ」

「ぐはっ」

お約束というように、セルに殴られるアクスであった。

――――――――――

決して十分とはいえない時間の中で、魔道具奪取のための準備を進めた。

時にサーリャさまに相談をして、知恵を求めた。

サーリャさまは王女という立場だ。

上に立つ者として、騎士団の情報に精通していた。

一から図面を起こしてもらい、騎士団本部の見取り図を書いてもらった。

隠し通路や、今は使われていない小道なども記載されていた。

これを一から作り上げたのだから、とんでもない記憶力だ。

その他、考えられる限りの準備をして……

そして、当日を迎えた。

――――――――――

「レインさん、気をつけてくださいね……いざという時は、魔道具は諦めて自分の身を第一に考えてください」

「はい、わかりました」

見送りに来たサーリャさまに、しっかりと頷いてみせる。

すると、なぜか苦笑されてしまう。

「まったく……レインさんはわかりやすいのですね。今のはウソでしょう?」

「それは……」

「カナデさんたち仲間のためなら、多少の無茶は仕方ない……そんな顔をしていますよ」

「……そんなにわかりやすいですか、俺?」

「ええ、とても」

まいったな。

余計な心配をかけないように……と思ったのだけど、サーリャさまには全てお見通しだったらしい。

「絶対に無事に戻るように」

「それは王女としての命令ですか?」

「いいえ。お願いですわ」

「……わかりました。なるべく、がんばることにします」

「はい、期待していますよ。レインさんは、この国に……いいえ。この世界になくてはならない人だと考えています。そんな方が、こんなところで消えてしまうなんて……そんな悲惨な結末を私に見せないでくださいね?」

大げさなんだけど……

でも、サーリャさまが心配してくれていることは伝わってきた。

俺はしっかりと頷いて見せて、街に飛び出した。

一昨日と同じように、野鳥と野犬と仮契約をして、周囲の探索を行う。

以前とは違い、今は昼なので片時も油断できない。

人が多く、騎士団本部への道を探すだけでも一苦労だ。

それでも、なんとか誰にも見つかることなく、騎士団本部の裏手にたどり着いた。

野鳥と野犬の頭をそれぞれ撫でて、仮契約を解除した後、裏手の扉から中へ入る。

ここは物置だ。

使われないものばかりが押し込められていて、そのために鍵もかけられていない。

中へ通じる道なんてものはないが……道がなければ作ればいい。

「俺に道を教えてくれ」

ネズミと仮契約をして、部屋を調べてもらう。

鋭い感覚を持ったネズミは部屋の端の方へ移動して、小さな穴から奥へ消えた。

長年の老朽化で、ここの壁が薄くなっているのだろう。

音を立てないように、慎重に壁を剥がすと……

騎士団本部に繋がる道が現れた。

「もうちょっとだけ付き合ってくれよ」

ネズミに案内を頼み、狭い通路を進んでいく。

度重なる改築で使われなくなった通路らしく、埃だらけだ。

咳き込んでしまいそうなので、ハンカチを口に巻いた。

目に埃が入り涙がにじんでしまうが、おかげで人影はない。

ネズミの案内で奥へ移動して……

やがて、人の声が聞こえてきた。

「……ほら、これでいいんだろう? あなた達の言うように、魔道具は貸し出すことにしよう。しかし、とても大切なものだから、取扱にはくれぐれも注意してほしい」

聞こえてきたのは、アリオスの声だった。