作品タイトル不明
213話 その他まとめてデート
とある休日。
休日といっても、店を営む人のように特定の休業日を定めているわけじゃない。
何日か冒険を重ねて……
みんなに疲れの色が見えてきたら、一日、休みにする。
そんなことを繰り返してきた。
そして今日。
休日が訪れたのだけど……
「レイン、早く来てください。時間は有限ですよ」
「さあ、レッツゴー! なのだ」
「みんなで、お出かけ……えへへ、うれしいな♪」
「んー♪ 楽しい一日になりそうやなあ」
ソラとルナ。
それとニーナとティナ。
俺を入れて五人で街へ繰り出していた。
カナデとタニアは留守番だ。
なぜかわからないが、理由を聞いたら『順番だから』と答えられた。
本当、なんのことだ?
街をのんびり散策したい、というみんなの意見で、適当に歩いて回ることにした。
このホライズンに拠点を構えてそれなりの時間が経つのだけど……
思えば、じっくりと見て回る機会がなかった。
だから、色々な発見があった。
例えば、隠れ家的なおいしい食事ができる店を見つけたり。
例えば、使い勝手のいい小物がお手頃価格で売られている店を見つけたり。
例えば、綺麗な景色を発見したり。
普段は見ることのできないものをたくさん見ることができた。
これからは冒険ばかりじゃなくて、こういう散策も大事にした方がいいかもしれないな。
「おっ、良い匂いがするのだ!」
「ホットドッグですね。レイン」
ルナとソラが期待に満ちた目で俺を見た。
二人だけじゃなくて、ニーナとティナもこちらを見ていた。
ニーナの尻尾は、期待するようにぶんぶんと揺れている。
他のみんなも、尻尾があったとしたら同じように揺れていただろう。
ついつい苦笑しながら、財布から銀貨を取り出した。
「ごはんもあるから、一人一本な?」
「わーい、なのだ!」
ルナが代表して金を受け取り、露店にダッシュした。
みんなもそれに続く。
「なんていうか……落ち着くなあ」
みんなと一緒に街を歩いて、散歩をして……
同じものを食べて、のんびりと過ごす。
いつまでもこんな時間が続いて欲しい。
そんなことを思った。
――――――――――
ホットドックを食べて……
ついでに、甘いドーナツを食べて……
そこで陽が傾いてきたので家に帰ることにした。
その途中だった。
「お?」
ルナが空を見上げる。
つられて上を見ると、灰色に曇った空が見えた。
やがて、ぽつぽつと雨が……
「わっ、わっ。雨やで! 急いで帰らんと!」
「まだ家まで距離があるぞ?」
「んっ……大丈夫、だよ」
ニーナが亜空間を開いて、中に手を入れた。
ごそごそとなにかを探すような仕草をした後、傘を抜き取る。
「おーっ、ナイスや、ニーナ!」
「雨が降るかもしれないなんて、よくわかりましたね?」
「んー……なんとなく。尻尾がゾワゾワ、ってしてたから」
野生の勘かな?
「はい……レイン」
傘は一本だけみたいなので、一番背の高い俺が持つことにした。
まずは、ニーナをおんぶする。
そんなニーナの頭の上にティナが着地。
ソラとルナは左右から抱きついてきた。
みんなコンパクトなので、ちょうどいい具合に傘の範囲に収まることができた。
雨もそれほど強くないので濡れることはない。
「とはいえ……ちょっと窮屈だな」
おしくらまんじゅうをしているみたいだ。
「我が姉よ。もう少しそっちに行ってくれないか? 我が濡れてしまう」
「そういうルナが離れてください。そんなに抱きついたら、レインが歩きづらそうにしていますよ」
「ふふん、これはわざとなのだ。当てている、というヤツなのだ。こうすると、世の男はみんな喜ぶと聞いたのだ」
「ルナ……そういうことをソラ達がしても、虚しいだけで、得られるものは何もないですよ……」
「レインよ、そうなのか? 我がこうして抱きついても、何も感じないのか?」
「えっと……ノーコメントで」
二人はまだまだ成長期だと思うから、あまり気にすることはないと思うんだが……
とはいえ、デリケートな問題なので口を閉じることにした。
「んぅ……レイン?」
「うん? どうした?」
背中のニーナがもぞもぞと動いた。
「わたし……重く、ない?」
「全然。むしろ、軽いよ」
「そっか……えへへ、よかった」
体重を気にしているのかな?
ニーナは全然太っていないし、そもそも、そういうことを気にする歳でもないと思うんだが……
なんだかんだで女の子、っていうことなのかな?
「なあなあ、レインの旦那。みんなに抱きつかれて、ちょっとしたハーレムやな。うれしいん?」
「それもノーコメントで」
「ふひひっ、うれしいんやろ? 照れてるんやろ? ソラもルナもニーナも、みんなちっこいのになあ。あかんでー、犯罪やでー」
「からかわないでくれ」
「ウチなりのスキンシップや」
「もっとまともな方法でお願いするよ」
ティナはこの状況をたっぷり楽しんでいるみたいだ。
ニヤニヤしている表情が容易に想像できた。
「ウチも抱きついたるで。ほら、うれしいやろ?」
「ん……わたしも、もっと……ぎゅうって、するね?」
「ソラも負けていられませんね。ぎゅううう」
「第一回、レイン抱きつき選手権なのだ!」
よくわからない謎の大会が開催されて……
家に帰るまでの間、みんなに抱きつかれることになった。
色々と困ったのだけど、でも、それだけみんなが心を許してくれているのだと思うとうれしい。
また散歩に行きたいな。
そんなことを思う、のんびりとした休日だった。