作品タイトル不明
1067話 勇者の特権
家で情報を整理した後、再び外に出た。
それから、シフォンの案内でホライズン騎士団支部へ。
「よく来てくれたな、二人共。歓迎しよう」
ステラが笑顔で迎えてくれた。
はて?
情報を得るという話だったけど、騎士団で得られるのだろうか?
「こんにちは。私がシフォンです」
「ああ、話は聞いている。会えて光栄だ」
「こちらこそ」
二人は握手を交わす。
そういえば初対面だったか。
「それで、例の件だけど……」
「ああ、こっちだ」
今度はステラの案内で、騎士団支部の奥へ。
厳重な警護の扉を潜り。
地下に降りて。
犯罪者などが収容されている牢に。
こんなところで情報収集?
不思議に思うものの、二人のやることに間違いはないだろう。
ひとまず疑問は飲み込んで、おとなしく後ろをついていく。
「ここだ」
少し歩いたところで、さらに厳重な扉に案内された。
堅牢な作りというだけではなくて。
魔法によるロックもかけられているようだ。
とんでもない犯罪者でも収容されているのだろうか?
「ありがとう。ステラさんは……」
「私も同行しよう」
「うん。そうしてもらえると助かるかな?」
「よし。では……頼む」
ステラは、見張りの騎士にそう声をかけた。
見張りの騎士は敬礼をして、それから扉のロックを一つ一つ解除していく。
かなり厳重なため、ロックを解除するだけで五分ほどかかってしまう。
「行こう」
ステラを先頭に部屋に入る。
中は薄暗く、近づかないと違いを認識できないほど。
もちろん窓の類はない。
ただ、極小サイズの通気口は作られていた。
扉と同じように強固な牢が設置されている。
その中に一人の男性が。
「ふむ……久しぶりの客人じゃな」
こんなところに閉じ込められているとは思えないくらい気楽な様子で、老人が言う。
白髪と長い髭を見ると、それなりの歳なのだろう。
服の上からわかるくらい、体も痩せ細っているのだけど……
ただ、不思議と力強さを感じる。
単純に痩せているわけではなくて、極限まで無駄な肉を絞った結果なのかもしれない。
現に、この老人から強い圧を感じた。
ステラが前に出る。
「私は、ホライズン騎士団支部、団長のステラだ。ラウル・ラズナで間違いないな?」
「うむ、その通りじゃ。この儂が、かの大怪盗と呼ばれたラウル・ラズナであるぞ」
老人は誇らしげに言う。
大怪盗?
聞いたことがないけど……
「……この人は、50年以上前に王都を……ううん。世界を騒がせた怪盗なの」
シフォンが、そっとそう教えてくれた。
「怪盗……?」
「うん。ラウル・ラズナに盗めないものはない……そう豪語して、実際に、ありとあらゆるものを盗んだらしいの」
単純な金に始まり……
厳重に保管されていた特殊な武具や魔道具。
あるいは、国の上層部しか知らないような機密情報。
時に、人心を盗んでみせて、絶大な支持を得たという。
そのような感じで国を、世界を翻弄したらしいけど……
そこまでされて、さすがに国が黙っているわけがない。
国全体が動くことになり、世界を巻き込むかのような大掛かりな作戦が展開されて……
そして、どうにかこうにかラウル・ラズナを逮捕したという。
以降、厳重な警備と監視下に置かれることに。
さすがのラウル・ラズナも、厳重な監視下の元、自身の自由を盗むことはできず……
今に至るという。
「すごい人なんだな……」
「知る人ぞ知る、生きた伝説みたい。私も詳しくは知らないんだけど、当時は、この人一人になにもかもが翻弄されたんだって」
「見てみたいような、でも、悪夢のような……って、あれ?」
そんなとんでもない人が、どうしてホライズンに?