作品タイトル不明
1047話 遺恨
俺は、ソラとルナと一緒に、ホライズン騎士団支部を訪ねていた。
事件について、ステラに相談するためだ。
色々と際どい話をするかもしれないので、ルリは留守番。
カナデは、いざという時のために一緒についててもらった。
「……ふむ」
秘密厳守と前置きをして、ステラにルリのことを話した。
奴隷商人から保護したこと。
それとは別に、何者かが狙っていること。
そして……人間と魔族のハーフであること。
今後、協力してもらう上でそれらの情報共有は必須と考えて、話した。
ステラだからこそ話した。
「なるほど。貴重な情報、感謝する」
話を聞き終えたステラは、背筋を伸ばして頭を下げた。
「いや、感謝されるようなことじゃ……」
「これで感謝しなければ、なにに感謝しろというのか。とても難しい問題だ。そして、とても繊細な情報だ。それを話してくれたというのは、私を信じてくれたということ。レイン……そなたの信頼と友情に、改めて感謝を」
「変わらないな、ステラは」
「レインこそ」
互いに小さく笑う。
ソラとルナが膨れた。
「むぅ……この二人は、本当にただの友情なのでしょうか? 少し怪しいですね」
「レインよ。我らというものがありながら、他の女性に気を取られるのはよくないぞ? まあ、どうしてもというのならば、我らが面談してやらぬこともないが」
「なんの話だ、なんの」
いや、まあ。
二人が心配する気持ちはわからないでもない。
一応、みんなと付き合うことにした。
だから、できる限り気を使っているつもりだけど……
こういうところで不安にさせてしまうこともあるか。
冒険者としてだけじゃなくて、恋愛の技術も上げていかないとなあ。
「私は別に、レインのことは……し、しかし、面談をしてもらえるというのなら、その機会を逃すというのも」
「ステラ?」
「な、なんでもないぞ!? なんでも!」
聞こえなかったことにしておいた。
「ごほん……話を戻すが、事情は理解した。その上で、こちらからも情報を提供できると思う」
「え、本当か?」
「騎士団の強みは、冒険者と同じように、各地で集めた情報を共有できることにある。専門の部隊もあるから、情報収集に関しては冒険者より上だと自負している」
ステラは得意そうに言う。
「騎士団のネットワーク……確かに、それはすごそうだな」
「だろう? なかなかバカにできないものだぞ」
「それならば、我ら精霊族のネットワークも……」
「最近は、移動手段として利用されることの方が多いですけどね」
張り合おうとするルナ。
それに水を差すソラ。
ついつい苦笑してしまう。
「精霊族の知識、情報についても期待したい。これから私が話す内容になにか気づいたことがあれば、教えてほしい」
「うむ」
「それで、ステラはどのような情報を手に入れたのですか?」
「断定はできないが……ルリという少女を狙う組織の情報だ」
「「「っ!?」」」
思っていた以上にすごい話が飛び出してきた。
自然と笑みが消えて、心が引き締まる。
「それは本当か?」
「繰り返しになるが、断定はできない。ただ、情報を見る限り、関連性は高いと思う」
「……聞かせてくれないか?」
「もちろんだ」
ステラ曰く……
とあるテロ組織が存在するという。
その組織の大半は魔族で構成されていて、現状の世界に不満を持つ。
人間の支配を認めるわけにはいかない。
共存なんてありえない。
魂と誇りに賭けて、人間を許すことはできない。
故に、堕落した世界を壊す。
「……過激な話だな」
「彼らにとっては本気なのだろう。そのための準備も進められていると聞く」
「そこまでの情報を掴んでいながら騎士団が動いていないのは?」
「単純に、拠点が不明なのが一つ。それと、世の情勢を見ると、魔族を相手になかなか軍事行動はとれないのだ」
人間が魔族を虐げた歴史が消えることはない。
その事実が公にされたこともあり、魔族に関する扱いはとてもデリケートなものになっていた。
彼らに謝罪をして、できる限りのことをするべきだ、という声がある。
そのような人達が、どのような理由であれ魔族に対して軍事行動を行うと知れば、大きく反発するだろう。
一方で、魔族は敵であることに変わりなくて、滅ぼすべきだと過激な主張をする人もいる。
ステラの話を知れば、嬉々として戦いを広げようとするだろう。
世界はひとまずの平和を得た。
でも、それはとても脆い。
薄氷の上を渡るようなもので、ちょっとしたことで崩壊しかねない。
「彼を放置すれば絶対的に、そして大きな被害が出るという確実な証拠が必要なのだ。そこに至っていないため、今はまだ、なにもできない」
「もどかしいな」
「なに。ある意味、良いことでもある。戦いで決着をつけるよりも、まずは話を……と考えられるようになったからな。現状も、そこまで悪いものではないさ」
ステラらしい意見だ。
「ところで」
ソラが挙手した。
「その組織の話が出てきたということは、ルリは、そこと関係があるんですか?」
「可能性の話だ。最近、組織が探しものをしていると聞いた。人を探しているみたいだ」
「……それがルリだと?」
「わからない。ただ、このようなところで、このようなタイミングで人間と魔族のハーフが表に出てくる……できすぎているとは思わないか?」