作品タイトル不明
1046話 一緒にいてもいい……?
「ルリが好きだからかな」
「私が……?」
ルリの目が驚きに大きくなる。
ここまで感情を表に出すところ、初めて見たかもしれない。
妙な感慨深さを覚えつつ、話を続ける。
「俺は別に、聖人ってわけじゃないからな。誰でもなんでも救えるわけじゃないし、そんなことをするつもりもない。相手を選んだりするかな」
「……それなら、やっぱり理解できない。私のことを、どうして……」
「好きだから。一緒にいたい……そう思えるからだよ」
「……わからない」
ルリはうつむいてしまう。
他人からの悪意だけじゃなくて。
好意に対しても鈍感なのだろう。
なら、俺がそれをしっかりと伝えないと。
「理由なんていらないさ」
「いらない……?」
「感じる、っていうのかな」
「……わからない」
「そうか? そんなことはないと思うよ。ルリだって、ちゃんと感じているさ」
「え?」
顔を上げるルリに、そっと語りかける。
「ルリは、俺のことをどう思っている?」
「レインのことは……優しい」
「どうして、そう思うんだ?」
「色々としてくれた」
「それだけ?」
「……それと」
言葉を続けようとして、しかし、ルリは言葉が続かない。
考えている様子だ。
それでも、うまいこと言葉が思い浮かばないらしい。
「どうしたんだ?」
「……よくわからない」
とても困った様子で、ルリはぽつりとこぼす。
「こんなこと……初めて」
そう言うルリは、迷子になっているかのようだった。
どうすればいいかわからない。
どちらへ進めばいいかわからない。
そんな状態に陥っているのは……
「好きなんて……言われたことがない」
「……そっか」
「私、ずっと一人。それが当たり前だと思っていたから……わからないよ」
「わからないなら、知ればいいさ」
「知る?」
「ルリは子供だから、知らないことはたくさんある。俺だって、たくさんだ。だから、知らないことがダメってことはないから……俺と一緒に知っていこう」
「レインと……」
「そういうのは……どうかな?」
「……うん」
ルリは小さく頷いた。
それから、俺の手を握る。
「知りたい」
「ああ、知っていこう」
「うん」
「それと」と間を挟んで、ルリはさらに続ける。
「レインのこと、どう思っているか……ちょっとわかったような気がする」
「どんな感じ?」
「優しくて、温かくて……細かいところは、やっぱりよくわからない。ただ……」
ルリがこちらを見た。
その瞳に宿る感情は、優しいもののように感じた。
ルリの想いを感じることができたような気がした。
「よく、わからないけど……レインと一緒にいたい」
「そっか」
「私……一緒にいてもいい?」
「もちろん」
答えなんて決まっている。
考えることも迷うこともない。
すぐに返事をして、ルリの頭を撫でた。
ルリは、心地よさそうな感じで。
猫がするように目を細くする。
「俺も、ルリと一緒にいたいよ」
「本当?」
「もちろん」
「……嬉しい」
ルリが小さく笑う。
こんな笑顔なんて初めて見たかもしれない。
驚きと、それ以上に喜びで心がいっぱいになる。
もしも俺に子供ができたら、こんな感じなのだろうか?
ついつい、そんなことも考えてしまう。
「約束だ」
「約束……?」
「俺は、絶対にルリと一緒にいるよ。なにかあったとしても、すぐに助けに行く。絶対だ」
「……うん、約束」
俺達は、そっと小指を交わすのだった。