軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1042話 冒険者から主夫へ

「アクス!」

振り返ると、懐かしい顔があった。

Aランク冒険者。

何度かパーティーを一緒して……

それだけじゃなくて、危ないところを助けてもらったことがある。

以前は各地を転々としていたのだけど、一年前、相棒のセルと結婚すると同時にホライズンに拠点を構えた。

以来、仲良くさせてもらっている。

「やっほー、アクス。レナちゃんも元気?」

カナデは、にっこり笑顔でアクスがおんぶする赤ちゃんに声をかけた。

赤ちゃんは、「うだー!」と元気に返事をする。

赤ちゃんは、アクスとセルの子供だ。

半年くらい前に生まれた。

子供の存在も定住を決める判断に関係しているらしい。

「カナデは、ホライズンに帰ってきていたんだな。最近はレインしかいないから、張り合いがなかったな」

「なに? 私がいなくて寂しかったの? ダメだよ。そういう禁断の恋は、特に興味ないから」

「ちげーよ!? 俺はセル一筋だ!」

「わかってるよー。子供のために、冒険者を休むくらいだもんね」

アクスはAランク冒険者なのだけど、今は子育てのため休業中だ。

セルも休業してて……

今は、二人で一緒に飲食店を開いている。

……って、そうか。

「せっかくだから、アクスのところで食べるか」

「お、なんだ? 飯の話をしてたのか? って……なんだ、そのガキは?」

「……」

ルリが俺の後ろに隠れた。

意外と人見知りするのかもしれない。

カナデは大丈夫だったんだけど……

種族が関係しているのかな?

「まさか、お前達、いつの間に……」

「ふふーん。ま、そういうことかにゃ」

「いや、違うから」

勘違いするアクスと、それに便乗するカナデ。

やれやれとため息をこぼす。

「こんなに大きな子供がいるわけないだろ」

「そこは……気合でなんとかなるんじゃねーか?」

「ならないならない」

ひとまず、ルリのことを簡単に説明した。

今は、人間と魔族のハーフということは伏せておいた。

アクスのことを信頼していないわけじゃないけど……

ただ、簡単に広げていい情報じゃない。

タイミングを見て相談することはあるかもしれないが、今はその時じゃない。

「飯ならうちで食っていくか?」

「そうさせてもらうよ」

「おう! へへ、お前らのために腕を豪快に振るってやるぜ」

「なんか言い方おかしくないか?」

――――――――――

アクスとセルの飲食店でごはんを食べて。

軽く話をして。

その後、帰路を歩く。

「美味しかったねー、ルリちゃん」

「……うん」

「なにが一番好き? 私は、お魚のフライかなー」

「……ハンバーグ」

「うんうん、ハンバーグも美味しいよね。また食べに行こうか」

「行く」

カナデとルリは手を繋いでいた。

ルリは、素っ気ないように見えるけど、あれが普通だ。

特に人見知りすることなく、カナデと話をしている。

微笑ましい光景なのだけど……

「……レイン」

「……ああ、わかっているよ」

鋭い表情を見せるカナデに、俺は静かに頷いてみせた。

帰り道の途中。

後ろに複数の気配を感じた。

それは今も後をつけてきている。

さらに数が増えて。

そして、敵意も増していた。

なにが目的かわからないけど、ろくでもない連中なのは間違いないだろう。

「カナデはルリを頼む」

「うん、任せて」

「俺はここで……」

たぶん、相手は十人以上。

数は圧倒的だけど、しかし、強者の気配を感じることはない。

Cランクの冒険者くらい、かな?

それならなんとかなる。

俺一人で問題ない。

カナデも俺のことを信頼してくれているらしく、ルリの護衛に専念してくれるだろう。

「よし。それじゃあ……」

「「フラッシュインパクト!!」」

爆音。

そして、悲鳴。

突然、炸裂した魔法に不審者達は吹き飛ばされていた。

かろうじて無事だった不審者の一人が、魔法を唱えた二人に向けて怒声を放つ。

「て、てめえ、何者だ!?」

「ふっふっふ……我はルナ! 精霊族のルナ! 悪に名乗る名は持ち合わせておらぬ!」

「思い切り名乗っているじゃないですか」

ソラとルナだった。