作品タイトル不明
1007話 願い
「さすが、妾の娘達。うまくやってくれたようじゃな」
落ちた要塞を見て、アルは誇らしげに胸を張る。
そんな彼女に、スズが呆れた様子で言う。
「娘ばかですね。うちのカナデちゃんの力あってこそですよ」
「あー! それを言うなら、タニアちゃんのおかげだよ?」
「フィーニアも、きっと役に立っていると思いますが」
「えっと……ニーナも、いざという時はやる子ですよ」
スズだけではなくて、他の面々もかなりの親ばかであった。
自分の娘が活躍していると信じて疑っていない。
「あとは、要塞を破壊して完全に機能を停止させるだけじゃな。人間達と魔族が一緒ならば、問題はないじゃろうが……」
シグレが難しい表情になる。
その後を、フウリが引き継いだ。
「問題は、ラインハルトだね。彼を止められるかどうか……」
「「「……」」」
この場にいる親達は、揃って難しい顔に。
皆の予想が正しければ、ラインハルトは人知を超越した力を持つ。
いくら勇者の血を引いているとはいえ、人が敵う相手ではない。
ラインハルトを倒す。
あるいは止めようとするには、それ相応の力が必要になるだろう。
それこそ……魔王のような。
「さすがに……心配ですね」
「なぁに、問題はないんじゃないかな」
「あなた?」
暗い表情を作るスズに対して、夫であるフウリは呑気に言う。
「レインくんは、娘が認めた相手だからね。きっと、こちらが想像する以上のことをしてくれるさ」
「ですが……」
「カナデの目と想いを信じるよ」
「……そうですね」
スズは苦笑して、一つ頷いた。
娘が信じた相手を、親が信じないわけにはいかない。
レインなら、きっとうまくやるだろう。
そう想うことができた。
「私も、レインくんなら、って思うよ! それに、すごくすごーーーく寂しいけど、レインくんならタニアちゃんを任せられるし」
「待つのじゃ。それは、妾の娘達に任せるべきじゃろう」
「いえ、ここはフィーニアが……」
「サクラも悪くないぞ?」
よくわからない争いが勃発してしまう。
それを見て、スズは苦笑した。
「今、私達にできることは、ただ一つ……祈り、願いましょう」
平和を。
そして、笑顔を。
それだけを想い、『親』は、最後の戦いを駆け抜けていく。
――――――――――
作戦が成功して、要塞は落ちた。
戦線を押し戻すことも成功した。
あとは、要塞の完全破壊。
それを達成すれば、目的を完遂することができる。
ただ……
「皆のもの、ここが勝負の仕掛けどころだ! それぞれが持つ力を最大限に発揮して、己の任務を全うしろ! その任務は、要塞の破壊だけではなくて……自分の命を守ることも入っていることを忘れるな!」
「「「おおおおおぉーーー!!!」」」
ココロの号令で、騎士や冒険者などの混成軍が突撃する。
ゴーレムなどが迎撃に出てくるものの、それらを打ち倒していく。
「私達も負けてはいけません。この争いに……この星の悲しみの連鎖を止めるために、今こそ、立ち上がる時です。全軍、前へ」
「おっしゃぁ! いくぞ、てめえら!」
ジルオールの合図で、カシオンを始めとする魔族達も今まで以上の激しい攻勢に出た。
人間と魔族が肩を並べて戦う。
そこに他の最強種も混ざり……
夢のような光景が広がっていた。
このような時だけど、それが嬉しくて、ジルオールは笑みをこぼしてしまう。
ココロも小さく笑っていた。
二人だけではない。
この戦場にいる皆が希望を抱いていた。
優しい未来が待っていると信じて、笑顔になっていた。
心に抱くものは希望。
欲するものは未来。
そんな願いを胸に戦う。
想いを届けるために、前に進んでいく。
……ここは戦場だ。
本来なら、血が流れて悲鳴があふれる場所だ。
しかし……
今は違う。
祈りが。
希望が。
そして、願いがあふれていた。
それらは力となり、レインの元に届く。