作品タイトル不明
995話 ラストバトル・その7
「くっ……!?」
ありとあらゆる最強種の力が流れ込んできた。
その膨大な力と魔力に、体がバラバラになってしまいそうになる。
それでも、耐えた。
その上で制御してみせた。
「……よしっ」
力はまだ暴れているけれど、どうにか制御できる範囲だ。
猛獣を手懐ける時のような感覚で力と向き合い、うまくコントロールする。
「レイン、それって……」
ユウキがこちらを見て驚いた。
他の二人も同様だ。
ラインハルトも目を少し大きくしていた。
「『共鳴』……か」
「あなたの真似だけどな」
本当は、『並列覚醒』までいきたいのだけど……
さすがに、それは無茶がすぎるというもの。
『共鳴』も、ギリギリのところで成功させただけ。
『並列覚醒』なんてやろうとしたら、まず間違いなく失敗してしまうだろう。
というか……
そもそもの問題、俺は不可能だろう。
ラインハルトは四人の最強種と契約をして、その『覚醒』の力を同時に使っている。
平然とした顔をしているものの、その負担はとんでもなく大きいだろう。
対する俺は、十種の最強種と、プラス幽霊のティナと魔王のエーデルワイス。
それだけの覚醒を同時に使用したら、どうなるか?
まず間違いなく、膨大な力を受け止めきれずに自爆してしまうだろう。
これが限界だ。
でも……
「一目見ただけで、その力の構造を見切り、己のものとするか……以前、指導していた時も思ったが、やはり天才だな」
「ありがとう、と言うべきなのか?」
「他意はない。素直に褒めているだけだ。ただ……」
ラインハルトが構える。
「それでも、俺が負けることはない」
「いいや。この力で……みんなの力で、あなたに届いてみせる!」
俺は前に出た。
「「ファイアーボール!」」
シフォンとユウキが魔法を放つ。
牽制。
それと、広がる炎が視界を塞いで、うまい具合にこちらの姿を隠してくれた。
その隙に、エーデルワイスも前に出た。
「我が主よ、合わせろ!」
「了解だ!」
エーデルワイスは、魔力をまとう拳で。
俺はクサナギで。
それぞれ、全力の一撃を叩き込む。
「ちっ」
ラインハルトは、先に召喚した魔剣でこちらの攻撃を受け止めた。
攻撃は防がれてしまうものの……
それはつまり、直撃したら危ない、ということだ。
そう前向きに解釈することにして、さらに連打。
「「おおおおおぉーーー!!!」」
俺が『共鳴』を使ったことで、エーデルワイスのとんでもない動きにもついていけるようになっていた。
全力の彼女と共に並び、次々と攻撃を繰り出していく。
こんな時になんだけど、エーデルワイスは今、なにを思っているだろう?
彼女は魔王だ。
そして、ずっと一人だったはずだ。
でも今は、俺が隣にいる。
遅れることなく、横に並んで、一緒に歩いていくことができる。
そのことを良しと想ってくれているのなら、嬉しい。
「やるな」
「あなたこそ!」
俺とエーデルワイス、二人がかりの攻撃でも、ラインハルトの防御を打ち崩せない。
さきほど、エーデルワイスが一人でラインハルトを吹き飛ばしたものの……
たぶん、まだ力の扱いに慣れていなかったのだろう。
時間が経つにつれて、ラインハルトの力と魔力が安定していくのを感じる。
その動きが洗練されていく。
ラインハルトが『並列覚醒』を使ったのは、たぶん、片手で数える程度。
それ故に慣れていなかったものの……
俺達との戦いで順応し始めている。
俺を天才と称賛したものの……
本当の天才は、あなただ。
ただ、負けるわけにはいかない。
エーデルワイスは、魔王の力を駆使して。
俺も、みんなの能力をフル活用して。
次々と手を変えて、様々な攻撃を繰り出していく。
「……強いな。これだけの力を持ちながら、なぜ、お前は王になろうとしない?」
「なんだって?」
「お前のような強者が王となれば、今以上に、人間達をうまくまとめることができるだろう。愚かな行いも止めさせることができる。なぜ、そうしない?」
本気で言っているのか?
「そんな事、不可能だ」
「器ではないと?」
「そういう問題じゃない。上に立つ者に求められるのは力じゃない。強者が王になったとしても、その力で押さえつけることしかできない。そんなの恐怖政治じゃないか」
「それのなにが悪い。恐怖政治だとしても、平和を維持できて、悪人達を一掃できるのならば、それは正解ではないか?」
「そんなものは長続きしない。そもそも……俺達は、言葉がある。互いを理解することができる。それなのに力で解決しようとするなんて、焦りすぎなんだよ……あなたは」
「焦ってなんていない。何百年と世界を見てきて、導き出した最良の答えだ」
「わからないでもないけど、でも……!!!」
ラインハルトの怒りはわかる。悲しみはわかる。
でも……
ナタリーさん、ステラ、ホライズンの人々。
アクスにセル。王都で優しくしてくれた人達。
クリオスでは、最強種と人間が仲良く暮らしていて……
だからこそ、俺は違う答えにたどり着いた。
人間を切り捨ててしまうなんて、できるわけがない。
「殺すことが最良なんて答え、認めるわけにはいくかっ!」