軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第16話 ニックとの関係

外見以上に傷みの激しかった孤児院の修復は1日ではとても終わらず、不足した材料をアレンが追加で買いに行ったりしながら3日かけてやっと完成した。外見から雨漏りしているだろう事がありありとわかるその姿は一変し、立派とは言えないまでも生活するには十分な頑丈さを取り戻していた。

「本当にありがとうございました。さあ、みんなも」

「「「ありがとうございました!!」」」

仕事が終わった事を伝えたアレンとニックに向かい、院長が、それに続いて孤児院の子供たちが感謝の言葉を大きな声で伝える。その姿にニックは顔を赤くしながらそっぽを向き、アレンは子供たちの姿に、自分の弟妹たちの姿を重ね合わせて笑顔を返した。

以前の孤児院の傷み具合からいっても、孤児院が決して裕福ではない事は明らかだ。しかし子供たちは痩せすぎているというようなこともなく、その目は楽しげにきらきらと輝いていた。それは前院長の教えが引き継がれている事をアレンに感じさせた。

アレンが膝を曲げ、目線を子供たちに合わせながらニッと笑みを浮かべる。

「またおもちゃが欲しくなったらこのおじさんに伝えろよ。近所に住んでるからきっと見かけるはずだ」

「「「うん!」」」

「馬鹿やろう! 何言ってんだ、手前は。おもちゃなんて大層なもんじゃねえよ。材料の切れ端だろうが」

「いや、子供が怪我しないように丁寧に角まで削って、色々な形を作ってって立派なおもちゃじゃねえか。と言うか作るのは否定しないんだな」

「あー、もう知るか。俺は行くぞ」

そう言って背中を見せたニックへと仕方ないなとばかりに視線をやり、2人のやりとりに首を傾げていた子供たちにアレンが言葉を続ける。

「その積み木なら作ってくれるってさ」

その言葉に子供たちから歓声が上がる。子供たちが手に持っている積み木はニックが材料の切れ端がもったいないから手慰みに、と言って作り始めた積み木だった。アレンも手伝ったのだが、手慰みの割に注文が多く、大工としての技術の粋のこもったおもちゃに相違なかった。

大きい子から小さい子まで遊べるようにと様々な形を作り、さらには角や表面を念入りに滑らかにしたのだから。

別れの挨拶をすませたアレンがずんずんと歩くニックへと近づいていく。そしてアレンがニックの肩を叩き、それに対してニックはアレンをぎろりと睨んだ。

「お前、そういうお節介なとこ直せよ」

「いや、お前が素直に自分の気持ちを言うなら、俺もお節介なんてしねえし。というか嫁さんに好きって伝えたいって言ってた時だって……」

「ばっか、それは関係ないだろ!」

余計な事を口走りそうになったアレンの口を、ニックが慌ててふさぐ。今でこそ仲の良い夫婦であるニック夫妻であるが、その出会いから告白までの経過についてはニックにとっては恥部以外のなにものでもなかった。

そしてアレンもその事を知っている。なぜならそれに少し関わっていたからだ。というかお節介を焼いただけなのだが。

「そんなことより、やっぱレベルアップってのはすげえんだなって今回の事で思い知ったわ。あれだけ体力がつくならレベルアップの罠が人気になるのもわかるな」

「まあな。俺としては低いレベルならある程度は簡単にレベルアップするし、最初からレベルアップの罠を使うのはもったいないって思うけどな」

「でもモンスターと戦うんだぞ。万が一って考えると普通の奴は尻込みするぜ」

ニックの唐突な話題転換に苦笑しながらアレンが応じる。実際、ニックの言う事に一理あるとはアレンにもわかっていた。なぜなら冒険者になって死にそうな目にあったのは一度や二度ではないからだ。

アレンの場合、幼く、伝手もコネも技術もないアレンをどこも雇ってくれず、弟妹を養うためにやむを得ず冒険者になったのだ。そしてそれは特に珍しい理由ではない。冒険者の中には貧困にあえぎその結果冒険者となった者が多くいるのだから。

自らの命をチップにして金を稼ぐとも言える冒険者に。

「まあモンスター次第ではある程度のレベル上げは可能だぞ。もちろん安全のために引率は必要になるが」

「その引率の金額が……んっ、そういやアレン。お前、今回の払った金額は少なすぎるから他のなにかで返すって言ってたよな」

「言ったな。思ったより大規模だったし、まさか3日がかりになるとか思わなかったからな。まさか……」

嫌な予感にアレンがニックの顔をうかがう。その予感が正しいものである事を証明するかのように、ニックはニヤリとした笑みを浮かべていた。そしてそれはニックの次の言葉によって完璧になる。

「よし、俺のレベル上げを手伝え」

「げっ! だから俺はギルド職員でもう冒険者じゃねえって」

「昔とった杵柄って言うだろ。それにそんなに危険なところまで行くつもりはねえよ。家族がいるんだし。だからアレンが安全に連れていける範囲で構わねえよ」

パンパンとアレンの肩を豪快に叩くニックの姿に、レベル上げのためだけではなく、お金を使わせないような恩返しにという気遣いを感じたアレンが苦笑する。

「わかったよ。だけど俺が休みで都合が合うときだからな」

「おう。楽しみにしてる。じゃあな、アレン」

「嫁さんと娘さんによろしくな」

「……娘は渡さんからな」

「馬鹿か、お前は?」

そんな言葉を交わしながら自分の家へと戻るために道を曲がるニックと別れ、アレンは依頼の完了を報告するために冒険者ギルドへと歩を進める。

ニックを効率よく、そして安全にレベルアップさせるならどのダンジョンのどこにすべきか、そんな事を考えながら。

ライラックの街が栄えている理由の1つに4つのダンジョンが周辺にあることが挙げられる。北にはアレンが普段ギルドの職員として働いているスライムダンジョンがあり、西にはつい先日までネラとして攻略していた鬼人のダンジョンがある。

とは言えこの2つのダンジョンはライラックの隆盛に大きく関わってはいなかった。現在は少々事情が違うようだが。

「準備はいいな。じゃあ行くぞ」

「おう」

アレンが用意した初心者用の装備を身につけたニックを引き連れ、アレンが今向かっている南にあるダンジョンこそが、4つあるダンジョンの中で最もライラックに良い影響を与えているダンジョンだった。

多くの冒険者を呼び込み、そしてそこから産出されるモンスターの素材はライラックの産業の基幹となり、そして造られた製品は高値で取引されていく。そんな好循環の源となっているのだ。

冒険者時代、アレンが単独でダンジョンへと行く場合は鬼人のダンジョンが主だったが、臨時パーティを組んだ場合はほとんどの場合このダンジョンへと潜っていたことからもそれがうかがえる。

「久しぶりだな。ライラックのダンジョンへ入るのも」

始祖がこのダンジョンを攻略したことにより、このライラックの街を治める領主家が始まったという話が残っており、それ故に街の名を与えられたそのダンジョンの入口をアレンは感慨深げに眺めていたその時だった。

「おやおやー、半端者、残飯拾いのアレンじゃねえか? 冒険者から逃げた負け犬が何しに来やがった」

2人にそんな嘲りの声がかかったのは。