軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

最後のパーティー

何事もなかったかのようにするのは難しいが、なんとかパーティー開始。

過去とは違い、私はまだ会場にいる。

今回断罪されたのは私ではなくローレルのように思えるも、ローレルは追放などされず居心地は悪そうだが会場の隅で身を潜めている。

過去の私よりもローレルの罪が軽いのは、過去の私はそれ程罪を犯していたのだろう……

「ニルヴァーナ嬢」

振り向くと王子が傍に。

そして、王子の後方には何かを期待している人達が待ち構えている。

「はい」

「僕とダンスをしていただけませんか?」

ダンスの……誘い?

過去も今も総合しても始めての経験。

以前だったら嬉しいと感じていたかもしれない。

今回の私は卒業パーティーを楽しむ気はない。

「申し訳あり……」

断る私を先読みした王子は、私の耳元まで顔を寄せ小声で話し掛ける。

「良いのか? 雰囲気は多少変わったとしても先程迄の緊張感は残っている。当事者の君が率先してパーティーを楽しむ姿勢を見せないと、この雰囲気は変わらないんじゃないのか?」

王子の言い分も分かる。

私がいつまでも会場の片隅で静かにしていれば、周囲も気になって卒業を祝う気分になれないかもしれない。

未だに残る緊張感を払拭するには私が王子の誘いを受け、ドレスや制服など気にしていない素振りでダンスを楽しむ姿を見せるのが一番なのかもしれない。

何となくだが、周囲も私が王子とダンスをするのを望んでいるような視線に思える。

「……では……一曲だけ……」

私は王子の手を取りダンスホールへと足を踏み入れる。

パーティーを騒がせた張本人を避けているのか王子の為なのかは分からないが、私達が歩くと人が避け自然とホールの中心に導かれていた。

頃合いを見計らっていたのか音楽が始まり王子のリードでダンスが始まる。

貴族が通う学園ではダンスの授業がある為多少は踊れる。

得意とまではいかない私でも軽やかに踊れると感じているのは、王子のリードがあってこそだとわかる。

緊張しながらもダンスに取り組んでいると、視界の隅に私を睨むローレルの姿を発見。

「気にする事はない」

「ぇっ?」

「ダンスに集中すれば良い」

私がローレルに視線を向けていたのに気付いたのか、王子に窘められる。

惨めだった過去。

蔑まれ、笑われた人生。

卒業式に王子とのダンスなんて考えられない。

二回人生を経験しておきながら初めてのダンス。

とても緊張し、良く分からないうちに終わった。

パートナーである王子に一礼をし、逃げるよう離れる。

「……ひゃっ」

ダンスホールから抜け出そうとするも王子に腕を捕まれた。

「……このまま離してしまうと、令嬢が何処かに行ってしまいそうで……」

何故私を気にするの?

私と王子はそこまで親しいわけでもないのに。

犯罪者を見逃さないあなたの目から逃れられないの?

「何を……言っているんです?」

震える声で笑顔を見せた。

誤魔化せただろうか?

「令嬢にとって嬉しいかどうかは分からないが、ニルヴァーナ嬢は歴としたキャステン公爵の血縁者だ。誰になんと言われようと公爵令嬢だ。私が保証する」

「や……めてくださぃ」

「……ヴァ-ナ嬢?」

私があの家族に『娼婦の娘』と今でも洗脳されていると思い、王子は良かれと調べてくれたのだろう。

そんな事、私には必要ない。

「私の父は何処か遠くにいるんです」

あの人が私の本当の父だなんて思いたくない。

私はあの男に一度だって褒めてもらった事はないし、笑顔を向けられたこともない。

優しさも知らなければ、愛なんて……

「……いやっ、それはあの家族が……」

「私はそう思いたいんです」

王族の言葉を遮る失礼な行為をしたが、それ以上に王子の言葉を受け止める余裕が私にはない。

愛を知らない私に、ちゃんと何処か遠くに私を愛してくれる家族が居るのだと思いたかった。

私の思いに漸く王子は引き下がり、それ以上何も言わない。

「失礼します」

ダンスホールに王子を置き去りにし、私が一人立ち去ると入れ替わるように女生徒がすれ違って行く。

振り返ると王子の周囲を女性達が囲んでいた。

「……そう言えば、婚約者と側近の発表はまだなのね」

過去、私が入場したのを見計らい断罪。

義姉に虐げられていたと王子に訴えていたローレルがその場で婚約者となり、学園でローレルと共に王子の傍を片時も離れなかった者達が側近として公表された。

これから発表があるかもしれない。

「私には……関係ないけどね」

令嬢達が王子とのダンスを巡っている間に、私は会場から抜け出す事に成功。

暇そうにしていた御者に急いで屋敷に戻るよう指示。

「はぁ……分かりました」

私がパーティー会場で何かしら粗相でもして追い出されたのだろうと判断した御者は、小さく溜め息をしてから頷く。

御者の不快な態度も今日が最後だと思い怒りを抑さえ、馬車に乗り込み屋敷を目指す。