作品タイトル不明
婚約者候補達のお茶会
あの日以降ルディルさんと会話は疎か、目が合うことも無くなってしまった。
私の周囲だけは静寂となった。
『だから、弱点でもなんでもいいからアイツをどうにかして』
ローレルが側近候補達に他の候補者の弱点などを探し蹴落とすよう不穏な会話をしているのを偶然聞いてしまった。
それは、ローレルだけでなく他の候補者達も考えていることなので忠告や先回りしてどうにかしようとは思わない。
「勝手にしていればいい」
貴族というのは足を掬われないように常に振る舞わなければならない。
清廉潔白である方が支持は受けやすいが、全てを利用しのし上がり誰も逆らえない強さを持っている貴族もまた生き残る。
自身の能力がどの立場で生きていくかは自身が決めること。
過去にローレルが選ばれたのは、選ばれる理由があった…それだけだ。
今のところ最有力候補を予想するも、皆決定打に欠け膠着状態。
我関せずの私のところに手紙が届く。
「お茶会の招待状?」
互いの状況が気になるのかカルリバル侯爵令嬢主催のお茶会が開催され、存在を消していた私にも招待状が届く。
過去にこんなお茶会が開催されたことはなかったので興味があった。
「ここでお茶会するのね……」
学園の一室を貸し切り高位貴族令嬢が集結する。
気品を漂わせながら腹の探りあい。
誰に付くべきか、自身を売り込む隙はないか、王子の婚約者の座を狙える隙はないのか、笑顔の下で様々な思惑が見え隠れしている。
「本日は私のお茶会に沢山の方に出席していただけて嬉しいわ」
カルリバル令嬢は今回の主催者であり、この場の主導権を握る。
既に『王子の婚約者は私で決定ね』と言わんばかりのオーラを纏う。
婚約者有力候補として名前が上がっている令嬢達は、事を荒げることはしない。
私としてはどんな会話が繰り広げられるのか、他人事のように参加している。
「今回私がお茶会を開催した理由としましては、皆さんとの関係を深めたいと思ったからです」
令嬢の言葉を疑うことなくそのまま受け取る事もできるが、実際の所カルリバル令嬢は他の貴族からの支持は希薄。
モリアンナ令嬢のように少数ではあるが信頼できる者が傍に居るわけではない。
ソバレリー令嬢のように趣味を通じて幅広い人脈が有るわけでもない。
ローレルのように王子の側近となり得る候補令息と親しい訳でもない。
彼女は爵位と侯爵の人脈により有力候補として名高くも、本人は最低限の淑女教育と教養を身に付けている程度。
敢えて誇れるとするならば、高位貴族として培われた上に立つ者としての威厳のある振る舞いだけ。
それらを踏まえた上で、人脈づくりの一環で今回のお茶会を開催したのは容易に想像がつく。
カルリバル令嬢の評価できる点は、裏工作なく堂々としているところ。
他の有力候補を招待しないという手段も取れるのに、潔く全員招待するところが気持ちが良い。
全く候補に掠りもしない私にさえ招待状を送るところを見ると、差別・偏見が無いのか、ローレルの弱点の為に私を呼んだのか。
考えればいくらでも挙げられるが、今のところその様な動きは見せていない。
「同じ婚約者候補として、今回お誘い頂けて大変嬉しく思います」
静かに応戦するのはソバレリー。
王子は今のところ誰を婚約者にするのか明確に断言していない。
誰が婚約者に指名されてもおかしくない状況。
主催者であるカルリバルの場を支配する雰囲気に飲まれそうだが、令嬢が婚約者だと王子の口から直接聞いた者はいない。
「……えぇ、皆さんとの交流は今後も必要になるでしょうから」
貴族であれば令嬢も情報交換や人脈を必要とされる。
二人の爵位を考えてもカルリバル侯爵令嬢とソバレリー伯爵令嬢は高位貴族の為、様々な場所で顔を会わせる事になる。
国の利益を考えるなら、不仲よりかは互いに協力関係が望ましい。
分かってはいても、王子の婚約者候補として競っている現在は難しい。
殺伐とした空気から逃れたいと思う令嬢もいれば、二人が互いに蹴落としあい共倒れし自身が婚約者にと隙を願う令嬢もいる。
この場の諍いには巻き込まれたくはないが、未来の王族との繋がりはほしいと考える者もいる。
今回のお茶会は多くの者の関心を引いている事は間違いない。
殺伐とした雰囲気の中、私は準備された紅茶を頂き運ばれたケーキに心を奪われていた。