作品タイトル不明
王子視点
現在ニルヴァーナ・キャステン令嬢に肩入れしてしまっているのを自覚している。
王族は常に公平であらねばならないのに、令嬢の境遇を知ってしまうと、つい……
「私に何か出来ることはないだろうか?」
踏み込んでしまいたくなる。
たが、今は婚約者候補の選別中。
ニルヴァーナ嬢だけと時間を取り他の令嬢とはしなかったとなれば、周囲の勝手な憶測からニルヴァーナ嬢を攻撃する可能性がある。
令嬢の助けとは言わないが少しでも環境が改善されればと思っている。
私の安易な行動が却って令嬢を追い詰めるような事になってほしくない。
なので、他の令嬢とも時間を作ることにした。
私がニルヴァーナ嬢を誘った時、周囲に人がいたとは言え
『婚約者候補を決めるべく全員と時間を取る』
という建前が果たして伝わっているのか不明だ。
もしかしたら、私と令嬢が『二人で過ごした』事のみが噂として回る可能性もある。
不確かな情報が一日でどれだけの人数に広まるか分からなかったので、二番目の候補者を誘う時は周囲にも私の意図が伝わるよう多数の生徒がいる時を狙った。
あらぬ誤解を与えぬように急いで次の候補者を誘う。
そして昼休み、多くの生徒が食堂に向かう途中を選んで相手を食事に誘った。
高位貴族令嬢のみとは言え人数がいるので、放課後のお茶会だけでなく昼食を共にする事にした。
食堂という人目もあれば、王子による婚約者候補の選定中というのが一気に拡散されると考えた。
そして、その噂に利用するのが……
「キャステン公爵令嬢」
私の予想通り食堂へ向かう昼休みの廊下で声を掛ければ、誰もが私の言葉で動きを止める。
「……まぁ、ラルフリード様っ」
令嬢は振り返り私を確認すると、満面の笑みで私の名を呼ぶ。
「……先日から婚約者候補である令嬢達と一定の時間を取っている。キャステン公爵令嬢も候補者の一人と言うことで、これから食事の時間を私に頂けないだろうか?」
キャステン公爵令嬢と言ってしまうとニルヴァーナ嬢とどちらかなのか判断付きにくいと分かりながらも『キャステン公爵令嬢』と呼んだ。
「はいっ、勿論。それじゃあ、行きましょうか?」
令嬢は人目があるのも気にすることなく腕を絡め到底淑女とは思えない行動をする。
私達の会話を聞いていた周囲も今後私が婚約者候補である令嬢達と時間を共にすることを理解したはず。
昨日のニルヴァーナ嬢とのお茶会より、キャステン公爵令嬢が目を惹いてくれたので今後私が候補者達と時間を作ることは広まるだろう。
私としては計画が成功したと言える。
「……はぁ」
無意識にため息をついていた。