軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第12話 勘違いは駄目です

翌日、土砂降りの雨。

大嵐でない限り、予定の変更はありません。

まぁ聖女は馬車移動なので、雨でも問題ありません。ただ浄化するときに雨に降られるというものです。

ですが私の乗る馬車に守りの加護をかけ、馬車の護衛につく聖騎士にも守りの加護を与えて出立しました。

雨の日の移動は、良い思い出がありません。

「ズルいです」

「何がですか?」

馬車が動き出したところで、向かい側に座るラフェシエンから文句を言われてしまいました。

何がズルいのですか?

「彼らには守りの加護を与えて、護衛騎士である私には何もないのですね」

……必要ないでしょう。

ヒュドラを一撃で倒した者にとって、私の加護など些細なものです。

「加護をかけた馬車の中にいて、何が必要なのですか?」

そもそもこの馬車自体に加護をかけたのです。中に乗っている私たちに加護など必要ありません。

「気持ちの問題です」

「私の心は昨日の時点で半減しています」

あのパンとスープだけでは私の心は維持できません。

旅先で贅沢は言いたくはありませんが、このような旅の楽しみなど食べ物しかないのです。

「それではこちらはいかがですか?」

ラフェシエンは私に油紙に包まれたものを差し出してきました。

なにですか?

包みを開けると、中から焼き菓子が!

チラリとラフェシエンを窺い見ると、食べていいということなので、遠慮なくいただきます。

一口サイズのクッキーに樹の実が入っています。小麦の香ばしい香りにナッツの風味がまじり、とても美味しいです。

変にこだわっていないところがとてもいいです。

王都のお店だと、これは本当に食べていい色なのかという毒々しい感じのお菓子が流行っているようで、あまり好みではないのです。

勝手に外にでることができないので、護衛の女性騎士のお勧めを買って来てもらっていたのでした。

「美味しいです」

「お口にあって良かったです」

ん? これはもしかして、流れ的に代わりに加護をかけろということなのでしょうか?

……わからないふりをしておきましょう。

二日目は思っていたよりも順調に進み、二回ほど小物の魔物によって足止めをされるぐらいで済みました。そして二つ目の村の浄化石の浄化を昼過ぎには終えることができたのでした。

「ありがとうございます。ありがとうございます」

と、何度も村長に頭を下げられましたが、これはお務めなので、聖女としては当たり前のことなのです。

私はすぐに馬車に戻るために、村長と土砂降りの雨の中で話をしていました。

そして、護衛についている聖騎士たちは、馬車の点検と戻るルートの確認をしていたので、私の側にはいなかったのです。

「なぁ! あんたら強いんだったら魔物をやっつけて……」

そこに子供が目の前に飛び出てきて、私の外套を掴んできたのです。

私は思わず、後ろに下がろうとしましたがバランスを崩してしまいました。

「ひっ!」

まさか男の子が飛び出てくるとは予想外すぎます。

ですが、男の子は最後まで言えずに、泥水の中に倒れ込んでしまいました。

「聖女様に触れるなど子供でも許されない」

「申し訳ございません! 申し訳ございません!」

青い顔色をして地面に伏す村長。

後ろに倒れる私を抱えるラフェシエン。

あの子供、死んでいないですよね。

あ、むせているので、泥水の地面に倒れただけのようです。

確かに子供だと、聖女に触れてはいけないとは知らないことかもしれません。

私も王都に来るまで、そのようなことは知りませんでしたから。

「村長さん。子供だと知らないこともあるかと思います。しかし、なにか遭った場合は村の責任問題になりますので、気をつけてください」

「はい、きちんと言い聞かせておきます」

雨に打たれながら、ガタガタと震えている村長さんに、これ以上いうわけにもいきませんが、先ほどのことも言っておかないといけません。

「それから、私たちは魔物討伐に来たわけではなく、浄化にきたのです。この者たちは私の護衛であって、魔物討伐の傭兵ではありません。そのこともきちんと教えてあげてください」

子供があのように言ったということは、大人の誰かが子供にそう吹き込んだからです。

こういう勘違いはいけません。

「それでは、戻りましょう」

これ以上私がここにいるのは良くないことです。

……あの、私は自分で歩けますので下ろして欲しいのですが。

何故か私はラフェシエンに抱えられたまま、馬車に乗り込んだのでした。

「だから、言ったではないですか。すぐに馬車の中にお戻りくださいと」

そして私はラフェシエンに、村長と話をしていたことを怒られています。

しかしですね。ことが終わればさよならではなくて、村の様子も確認したかったのですよ。

私は濡れた外套を脱いで、座席に座ります。

「はぁ、ああは言いましたけど、私たちには別の目的もありますよね?」

「しかし……いいえ、私も油断していたところがあります。申し訳ございませんでした」

そうですわよね。まさか雨の中、子供が飛び出てくるとは予想外でした。

「主よ。大気から恵みの水を与え給え『ウォレアマーゼ』」

「それは飲水を得るための加護で、水分を取り払う加護ではないはずですが?」

謝罪しているはずのラフェシエンから、小言を言われてしまいました。女性騎士からは便利ですねと言われたのですけど。

集めた水分は、そのまま馬車の外に捨てます。

こうして本日の役目を終えた私は、滞在している町に向けて出発したのでした。