軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第302話 船旅➘鍾乳洞

出発準備をしていると乗車人数の確認にとても苦労した。

全員自分勝手に動かないで…………整列して体育座りしてて欲しい、頼むから。

途中別れたカリュプさんがまたグレジッグ子爵に絡まれているように見えた。きっちり直接的な軍事力を派遣するまでは耐えてほしい。

グレジッグ子爵と目が合うとグレジッグ子爵は逃げていった。カリュプさんはいきなり逃げたグレジッグ子爵にポカンとしていたが、こちらに気づいて頭を下げて……彼女も逃げていった。えー。

貴族社会、特に命令するだけの関係じゃなく、直接触れ合うようになると……やっぱり利権も含めた人間関係とかめんどくさい。

「全員下車すること!またこの場で勝手に魔法を使わないこと!わかりましたねー!」

ねー、ねー、ねーとディア様の声が洞窟内に反響する。

この列車はカーブが出来ない。ほぼ直線で線路は敷かれていて左右にはほとんど動かないが上下には少し動く。また地下かと思ったのだが……線路の先が水没していた。

貴族子弟が下車すると騎士たちがテキパキとクッションや絨毯を動かしている。トラブルとかじゃなさそうである。

「賢者フリムよ。これが船のある理由じゃよ」

帆の外された車輪付き帆船型の車両。もともとは風を受けて進む構想もあったため帆があったそうだが現在はつけられていない。

車両が切り離され、鍾乳洞のようなこの洞窟の先に飛んでいく騎士たち。精霊鳥が楽しんで曳いているが普通の馬もいる。道具と違って騎獣には体力があり、もともとここで交代する予定だったようで水の先では交代の馬が待機しているそうである。

「どうしてもここを通らねばならなかったのじゃが、ここは精霊の領域での。少しずつなら土地をいじっても良いようじゃがまだまだ許してもらえんのじゃ」

良くはわからないが、この土地の精霊が原因で橋を作ったりは出来ないようだ。

とりあえず前方車両は騎士がロープを持って飛んでいったし前方で曳くのだろう。そして人は帆船型車両……いや。帆船?…………船?に乗って洞窟内を何度も往復する。

空間は広く、鍾乳洞探検のようでちょっと冒険心がくすぐられる。でも引率者に準じる立場としては誰かが勝手をしないかとちょっと心配。

「わー、面白いね!私、船に乗ったの初めて!!」

「ミリー、リヴァイアスにはたくさんあるんでぜひ乗ってみてくださいね」

「楽しみ!!」

ミリーの輝く笑顔である。これを見ただけで来たかいがあった。

「こんなんじゃ来るんじゃなかったわ。もうダメ死んじゃう」

「あれリーズ?どうかしましたか?」

「人は水に浮かないのよ……」

リーズは水が苦手のようだ。

テルギシアに抱きついたままガタガタ震えているリーズ、何故か少し嬉しげなテルギシア。

「浮きますが?」

「浮きません。人は浮くようにできてないのです」

「クライグくんも?」

基本的にお見合い大会では身分差もあって姿は見ても話しかけてこないクライグくん。まぁ一応ではあるがシャルルの婚約者でもあるため男性は声を掛けると周りから何を言われるかわからないもんね。

クライグくんも真っ青に震えている。

そう言えば勉強で魔法による属性によって人の耐久性も変わると言った記載もあった。

火であれば火に強くなる。風であれば高地でも呼吸しやすく寒さに強くなる。土であればちょっと頑丈になる。水は何も変わらない。人は地上の生き物なので水辺で検証すればなにか違いがあるのかもしれないが基本変わらない。やっぱり弱いな水属性。

個人差もあって一概には言えないが赤竜騎士団の人は火に炙られても火傷しない耐性があるし、もしかしたら「土属性の人は沈みやすい」とかあるのかもしれないな。

対岸について降りて待っているとなにか気配を感じた。

何も無い洞窟の先を見ると蛇がいた。緑色で半透明で……頭を8の字に振ってこちらを見ている。

何やらご機嫌なのが伝わってくる。

ルカリムとオルカスが近づいていって……連れてきた?

「こ、こんにちは」

「…………」

遠くにいるときは大きく見えたのに、近くに来ると私の腕ほどのサイズになってスイスイフヨフヨと浮かんでいる。

額に小さな宝石みたいなものが見えて……蛇なのに、いや精霊だからか少し優しげな表情に見える。でも蛇だから近づかれるのは少し怖い。

頭を下げてお辞儀すると尻尾の先を動かされてアホ毛に触れられた。

動いていて気になったのかな?

何がしたいのかはわからなかったが蛇の精霊はまたスイスイと何も無い空間を泳いでまたさっきまでいた場所まで戻って……こちらを見ている。何だったんだろうか。

首筋や後ろ髪の内側に入ってくるよりはいいか。

往復している間に料理を作って食べることになった。洞窟の中で煮炊きして良いのかと思ったが精霊は相変わらず楽しげに見ているだけだ。蛇なのに楽しそうなのはなんか不思議だ。

「これが新しい料理?」

「そうですね。ホルモン焼きうどんです」

「『ほるもん』っていうのは何かしら?今日はうどんなのに汁じゃないのね」

「ホルモンとは……動物の臓器の中でも食べられる箇所です。それを選別してよく処理をしたもので、オベイロスではあまり好まれて食べられませんが国によっては貴族や族長だけが食べれるような場合もあるそうです」

受け入れてもらいやすいように少し良く言っておいた。

辛めの焼肉のタレもどきと相性の良いホルモン焼きうどん。

色々実験した結果、ホルモンは新鮮な状態でも美味しいが、タレに漬けて寝かせた方が抜群に美味しかった。

元の肉が前世の牛や豚のように飼育管理がされたものではないから雑味や癖が強い。その強めの癖が丸くなり、タレもどきの強い味が加わってぐんと美味しくなる。

甘い脂にほんのり癖があるが、そのクセが以前作った辛めの焼肉のタレもどきと絡み合ってたまらないものになっている。

相性の良い野菜もあまり日持ちしないのとディア様からの強い要望から出すことになった。

「食べて」

「あれ?なんかこれ他の人のとは違う気が」

「良いから」

「んぐっ!?…………口に入れないでよ」

ちょっと強引にテルギシアがリーズに食べさせていた。

「どちらにせよリーズの分はこれだから、どう?」

「わかった。わかったから!……美味しいわ。ちょっと辛いけど、食べたことない味」

「ふふ、そう」

「……??」

テルギシアはちょっとドヤ顔である。

しかしちょっと言葉が足りてないな……よく分かってなさそうなリーズ。

ホルモンは食感や癖で人を選ぶこともある。今食べたものが美味しくてもちょっと癖の強いものも入ってるから一言言っておこう。……リーズもテルギシアが作ってくれたとわかれば酷いことは言うまい。

「リーズ、テルギシアはリーズのために考えて作ったんですよ」

「……そういうことね」

私の一言でテルギシアを見て、料理を見たリーズ。

改めて料理を口に運び、目を瞑って味わっているようだ。

「……美味しいわ。でも作ったなら作ったってちゃんと言いなさい。他の人と違うものがでてきたら毒かと思うじゃない」

「ふふっ、でもボクの作ったの食べてくれたね」

「貴女だからよ、もう……でもこれ本当に美味しいわ」

それは……「テルギシアから差し出されたものなら毒が入っていても食べる」という意味だろうか?

テルギシアに注意をしたリーズは料理に集中して食べ始めた。太目の麺はフォーク状の食器では食べにくいよね。

「―――――リーズ」

「なによ」

「リーズはかわいいね」

「んなっ!!?」

リーズの顔が真っ赤になった。 この2人、見てると可愛いんだよなぁ。

「美味しいですわ」

「酒がすすむ味だな。リヴァイアス酒持ってきてくれ」

「ちょっと歯ごたえが苦手だ、でも味は抜群に良い」

「リヴァイアスの料理は美味しくて……また仕立て屋を呼ばなくては」

「わかるー!」

「もうなくなったか。おかわりあるかな?」

「これが最後だった。悪いな」

「貴公、それを譲る気はないかね?」

「ないな、これは俺の飯だ」

「杖を抜け!」

「やんのか!?」

「ほらそこ!また新しいの作ってますから喧嘩しない!喧嘩するなら明日ご飯抜きですからねっ!!」

「「ごめんなさい!」」

若干喧嘩が起きそうだったものの近くにいたディア様が注意してくれた。

貴族子弟たちの反応もいいし、内臓料理が定着する日も近いかもしれない。