軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第183話 大氷河……。

「見つけました」

「予定通り配置について下さい」

前回のクーリディアス戦でわかったことがある。

『情報』『入念な準備』『各個撃破』そして『相手に何もさせない』。この4点が何より重要だ。

情報を調べることで相手が何をしたいのかを知り、それに対処するべく対応できるだけの準備をする。そして分断し、少数の準備もできていない敵に対してフル装備かつ準備万端の状態の兵を圧倒的多数で投入すればよい。

相手には何もやらせずに勝つのが一番だ。

ただ守護竜王や私に宰相のような存在が居るから一概には言えないがそれでも相手に準備をさせないことが大切なのだ。

海上に浮かび上がり、私一人で杖を振りかざす。

「<水よ。包み、落とし、全てを凍りつかせよ>」

目の前の大船団を相手に魔法を使う。

水で船を一隻ずつ卵のように包み込み。凍りつかせる。

「――――!!?―――??!」

彼らには何が起きたかはわからないだろう。――――いきなり海に落ちたのだから。

準備を怠った訳では無いが、ここまで規模の大きな魔法は負担が大きいな。

「<精霊よ力を貸して……大氷河!>」

下準備には時間をかけた。

クーリディアスの前回の作戦は国土の外れにある島に兵を予め輸送し、リヴァイアスを落とした後に地上戦力を投入する作戦であって、海上戦闘能力は殆どなかった。船の数に対して15万という兵士の数は多すぎた。

しかし、今回は数という戦力を失っているとは言え戦力を結集し、貴族や魔法使いという質を連れて来ているはず。

「大丈夫ですか?」

「大丈夫です。訓練通り対応するように伝えて下さい」

「はい!」

船というのは同じ目的地を目指すのにある程度距離を取らないといけない。

海上で船が壊れる原因はいくつかあるが船同士の接触も大きな要因である。故にあまりに近くで航行することが難しいのだ。だからそこを、隙をついた。

敵の航路を鳥人部隊によって補足、周りに何もない海を戦場にした。

その場で先に海水を私の真水に変え、海中にはリヴァイアスとローガ将軍の率いる軍を待機させた。

リヴァイアス周辺の海が冷たくなるのは逃げ帰った敵兵も知っているだろうが、海中にここまで多数の軍を用意しているとは考えないはず。

当然敵にも海中を移動する魚人もいるが温度を下げて船の上に上がらせた。

そして……船を一隻ずつ卵のように包み込み、海中に落として、そのまま海を氷河にして封じ込めた。気分は北極。全員海から上がって氷河の上に移動したがとても寒い。

フリムちゃんは学んだのだ!先手必勝一撃必殺で圧倒して敵を制圧することこそが大切なのだ!!

船の数は数えきれないが100を越えるだろうか?視界一面を埋め尽くすほどの大船団を氷河の内部に落とした。

暴れたり登ってこようとするものも居るが、彼らは氷の中にいる。もしも下や側面を溶かして出ようとすれば海水が侵入するし、上に穴を開けてくれば私が水を注ぎ込むか軍が対処する。

真水で船を包みこんだ段階で船は水平を維持せずにわざと倒してから閉じ込めたし、戦闘を考えて油断していなくても大きなダメージになったはずだ。

氷河の上にあがったリヴァイアス・オベイロス軍がそれぞれ船の頭上に穴を開けて凍りつくよりも冷たい海水を流し込んだ後に降伏勧告して捕縛していく。

もしも拒めば氷で蓋をして、他の船に降伏を促していく流れだ。

敵には温存させてか船の上にいた飛竜や騎獣がいた。もしも先手を取られて彼らが準備万端で空から攻めてくる可能性を考えると……航空戦力の乏しいリヴァイアスでは被害が大きくなりすぎる。

後はイレギュラーの発生を考えて余裕をもたせつつも集中すれば――――

「ゴフッ?!」

「フリム様!?」

「こらぁっ!……水の精霊です。あたたた」

精霊たちが群がってきた。

この子たち。凍りつかせたり、操作を手伝ってくれている感覚がある。それぞれ得意分野が違うようだ。アホ毛に向かって口を半開きで見つめてくるサンショウウオっぽいのも居る。何がしたいのかわからないのもいるけど……食べちゃ駄目だよ?

「こっちは良い!急げ!!抵抗するものがいれば後回しだ!!」

「「「はい!」」」

水は塩分があると凍りにくく、液体のまま氷よりも冷たくすることが出来る。寒い冬でも海が凍りつかないのは塩分があるからだ。

大氷河は海を操作し、海水をどかして船のいる範囲を真水に置き換えてから一気に過冷却化して凍らせた。かなり操作は大変だったが、それでも上陸して戦う気満々の彼らが暴れれば死傷者が出ることは確実だった。

だからといって見える範囲のすべてを凍らせるのはすごく大変で……かなりくらくらする。範囲が広すぎるし、船によっては抵抗して穴を開けようとしてきているのでちゃんと管理しないといけない。

私は水は簡単に操れるが、凍りついたものまでは操作ができない。水の流入はこちらで意識する。

「フリム様を動かします。設営の準備はできていますね」

「要塞化しています!」

「よろしい。ローガ将軍、ジュリオン、アモスこちらは任せますよ?」

「おうとも!」

「フレーミス様をお頼みします」

「手筈通りに」

私はゆっくり、魔法を使い続けなければいけない。氷河の下から穴を開けて一気に攻めてくる場合は過冷却水を注ぎ込んで無力化する必要もある。守護竜王と呼ばれるようなドラゴンはもういないそうだがそれでも恐ろしい存在はいるかも知れない。

そのためには私が攻撃されないことが大事である。落ち着いた状態であれば魔法の維持や管理は可能だし、兵の捕縛は私の仕事ではない。

……そうして私はエール先生につきっきりで甘やかされている。

エール先生の抱っこ紐と温かい布に包まれて、準備しておいた簡易的な要塞に居る私。

うん、いざという時に空を飛べるエール先生かジュリオンが近くにいたほうが良いのはわかる。ジュリオンよりもエール先生のほうが飛行時間が長いし、ジュリオンは魔獣相手でも近接戦闘が可能だが私が居ると逃げの一手となって本領が発揮できない。

なんだか二人で私の重さの人形を使ってどれだけの飛行ができるかを競い合っていたらしい。おかしいな?なんでそんな体重なんて言う乙女の最重要秘密を知られて、更には人形が量産されているのだろうか?

子供の体重なんて気にしても仕方がないかもしれないが人形や石像の増え方が気になる。ボルッソファミリーの点数稼ぎに増やし続けているのを止めなかったのが悪かったか。

まぁ、うん。いろんなことを考えた上で理解できる。今も数人、杖つき私人形を背負っている影武者が何人か居る。もしも敵に手練れがいた場合に相手の撹乱が可能である。私がやられたら皆が帰るのが難しくなる。

とはいえ戦場は優勢だし心配はいらなさそうだ。

何体かドラゴンがでてきたり血気盛んな敵兵がでてきたがアモスやベス、ダグリムのような強者が部隊を率いて当たっている。それにローガ将軍の電撃は敵をまとめて無力化出来ている。

相手は降伏してくるものが多い。船を落下させ転覆させた状態で凍りつかせたわけだが、それだけでも人はかなりダメージを受けると思う。

なにげにクラルス先生ボルッソ、それとエール先生配下の風魔法使いがエグい。

ボルッソはアルキメディアン・スクリューではないが巨大なドリルのようなものを作って持ってきていて、土の魔法で電動ドリルのように回転させて氷河に穴を開けている。そこにクラルス先生が調合した吐き気のする悪臭の雑草や毒草の類いを入れて、風魔法使いが密閉空間で舞い散らせてから蓋をする。鬼の所業かもしれない。

トルニー製のイカペンは卓上で文字を書くことは全然出来なかったがインクを噴射することが出来るので降伏の意思を氷河に書くのには役に立っているようだった。船ごとの降伏か戦闘の意思をわかりやすくマーキングしてくれている。いくつも作っていたようだがこれが売れると思っていたのだろうか?なんで卓上ペンを作ろうとしてどうしてこれが出来るのか意味がわからないが……時間との勝負でもあるし役に立っているのなら良いかな。

やはり私への負担が大きいが、リヴァイアスや他の精霊たちの援助もかなり助かる。

ゴスボフさん、いや、オルカスと言う名前が伝承に残っていたシャチの精霊や他の精霊が手伝ってくれる。若干物騒だが。

子犬のように可愛らしくまとわりついて「細切れにしようか?」「僕やれるよ!」「俺も俺も」「私に言ってよ!ねぇねぇお願い!ちゃんと息の根止めるよ!」と彼らはかなり物騒なことをアピールしてくる。駄目だって。

いや、いざという時は緊急事態には頼りにさせてもらおう。出来ることは出来る人や精霊に任せれば良いのだ。

エール先生はずっと私を見ながら頬を撫でくりしてくる。横抱きの私の顔を胸を押し付けて抑えきれない笑みを浮かべている。撫でる手が止まらない。……赤ん坊ではないのだが……いや、うん、いざというときのために休むのも仕事で、持ってきたソファーに腰掛けてやることがないのはわかるんだけどね。

準備も大変だったし、これで終わらせてクーリディアスとの面倒事がなくなれば良いのだが。