軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第152話 開戦?

流石に軍という多人数を相手に完封は出来ないようだ。

クリータで大海嘯を使ったのが見えていたのか、騒ぎになっているがリヴァイアスの嵐のお陰で一部しか動けていない。

水では見えないし聞こえないが警報の鐘が打ち鳴らされているのが衝撃でなんとなくわかる。……発生源に向かって過冷却水を大きく当てて建物ごと凍らせる。

島は要塞化されているが万を超える人間が一箇所にいるわけではないし嵐で反応は薄そうだ。騒がしいと分る範囲に建物ごと凍らせる勢いで水を当てていく。

海も敵がいると思っているのか闇雲に攻撃してくるのがわかるから位置がわかって反撃もしやすい。

しかし……もうすぐクリータ列島に到着するがその前に宰相だけは治療を済ませておきたい。

すぐに治る傷ではないかもしれないが、辺境の亜人にも轟く宰相の勇猛な伝説を教えてもらった。

たった一人で軍隊のど真ん中を駆け抜けただの、オーガキングと殴り合って勝利しただのと馬鹿げたものも多かったが「どんな戦も生き残った」実績がある。彼がシャルルを擁立したからこそ現在のシャルルの派閥が安定しライアーム派が攻め込んでこれなかったなどの実績もある。

噂や伝説は信頼性が薄いだろうけど少なくとも私よりも戦上手なはずだし怪我で動けないにしても指揮を取るなり知恵は貸していただきたい。私は軍隊で人を動かすなんて無理だ。……やれることはやってはみるが、それがうまく転ぶかわからないし戦の機微というものは全くわからないしね。宰相がダメそうならシャルル推薦の兵に任せよう。

とはいえクーリディアス軍の殆どは無力化している。クーリディアスから半袖で来ている兵隊では外にも出れないほどの冷たい暴風雨を作り出している現状、軍は軍として機能していない。

冷たい海は私の作戦だが雨や嵐のほとんどはリヴァイアスの仕業だ。しかし私のやろうとしていることを読み取っているのか雨や雲を動かして協力してくれているし少しは操作できるようにしてくれているようで……列島にいる兵士はどこにも出られない状況となっている。

「これから、クーリディアス軍を捕縛していきます。シャルルが怪我しているなら下がっていてください」

「お、ようやく話し始めたか……大丈夫か?」

「今のところ全て順調です。ここまで作業量が増えると流石にタスク崩壊と言いますか」

「たすく?」

「あ、なんでもないです。忙しくて集中してました――――ん?」

「どうかしたか?」

クリータからもクーリディアスからも攻撃されないように海の中を船で移動していたのに……何かが、私の魔法の範囲内に現れた。大きく動くそれの周りだけ水のコントロールが出来ない。

その操作できない空間がこちらにまっすぐ……!!?

「――――総員どこかにしがみついてください!なにか来ます!!!」

「なに?」

空からなにか降ってきたと思った。

見るとすぐに竜が――――巨大なドラゴンが私の水を切り裂いて船の前に現れた。

蒼く艶めく鱗に生物として見るだけで萎縮してしまう大きな体躯。生物よりも建物の大きさのそれは見るだけで脅威とはっきりわかる。――――それもこちらを攻撃しようとしているのがわかっているからなおさら……。

「<水よ!穿け!!>」

対話なんて望むべくもなく戦うこととなった。

ドラゴンは大きな羽に大きな牙がある。明らかに敵意のあるその竜は腕を伸ばして船をつかもうとしてきた。

「< ギ ュ ア ォ ォ オ オ オ オ オ オ オ ン !!!!>」

すぐさま私の水で一気に吹き飛ばそうとしたのだけど、柱のように太い水を数本猛烈な勢いで当てる筈が力ない水が数本当たっただけで……ドラゴンは無傷だ。

「<水よ!!>」

すぐに船の進路を変更し、加速させる。

後方の海に落ちる寸前ですぐにこちらに向かって飛んでくる竜。私がよく使うように大きく水の放射をしてきて……船のメインマストが折れてしまった。

「くぁっ??!」

「ケーマスが落ちたぞ!!?」

「あいつは水魔法使いだ!ほっとけ!!」

「対空装備は積んでないのか!!?」

「<風よ!槍を運べ!!>」

激しく船が揺れた。幸いと言っても良いのかこの船は水流によって動かしているのであって帆や風で動いているわけではない。

シャルルの精鋭が片手でロープを掴み、片手で槍を投げた。

「<ギ ャ ゥ !>」

こんなに揺れているのに、その槍はドラゴンの肩に当たった。

しかし槍は突き刺さることなく、逸れていった。

少し警戒したのかドラゴンの速度が落ちたので船を一気に動かす。

「……重い、潰れそう」

「す、すいません!」

私を抱えたシャルルにエール先生が上に乗る形で覆いかぶさり、その上をジュリオンが羽と尻尾に両手まで使って私達をデッキに固定してくれていた。

シャルルはジュリオンの巨大なおっぱいに押しつぶされそうである。そして私も。

帆船なのに新幹線のように高速で移動させている船だが、水上を移動しているわけではなく水中に空間を作っている。方向をたった数度間違えただけで海底に突っ込むことになりかねないし、より集中して魔法を使う必要がある……どうやらドラゴンは全く諦めていないようだ。

今もものすごいスピードで追ってきている。

落ちた数人にドラゴンは目もくれていないので彼らは水上に押し上げておく。

「<水よっ!!>」

「フリム!なにかできることはあるか?!」

「数回、は、追いつかれ、そう、です。攻、撃の準備を、し、てください」

「わかった、全員攻撃の準備だ!!敵はドラゴン!しかも最低でも王級だ!!気を抜くなよ!」

「体をロープでしばれ!落ちるなよ!!」

「風の魔法使いは集まりなさい!」

船の上のことはシャルルたちに任せよう。集中しすぎて鼻血が出そうだ。追いつかれるのはわかっているが少しわかったことがある。

私とドラゴン。先程のお互いの水の放射は土の領域の取り合いと同じで、私の水はドラゴンの至近距離までは最大限効果を発揮しなかったしその逆もしかりだ。ドラゴンの水の放射はおそらくマストどころか船ごと貫通させるつもりだったのだと思うが私にその水が近づけば近づくほど抵抗できた感覚があった。

魔法は慣れるまでなかなか難しい。クーリディアス周辺も今は手を抜けないし、この船に、救助者に、竜が泳いでくる間の水を私のものとして速度を少しでも落とさせる。他にも……いや、弱音を吐くな!!

「今頑張らなくていつ頑張る!!<水よ!!!!>」

ドラゴンは私の領域を食い破ってくる。今度は待ち構えている通りにまっすぐ後ろからはこなかった。水中だと言うのにドラゴンは全く速さを落とさない。

先回りされたことがわかったので船の進路を強引に30度以上曲げて加速させる。

ギ ガ ガ ガ ガ ガ

嫌な音が船からする。しかし、後方に整列した魔法使いの目の前にドラゴンが来るようには調整できた。

「来るぞ!!」

「<種火よ!燻煙纏わす熱き煙を漂わせたまえ!>」

「「「<炎よ!我らが精霊フェニークスよ!!永遠にして閑麗!全てを灰にせし炎で我が眼前の敵を焼き消せ!!>」」」

「< ギ ュ オ ァ ァ ッ ! ! ! ? ? >」

無理な方向転換に少し船底が割れたようだが……私が動かしている水だし浸水は問題ない。

薄く広がる炎を使って龍の顔に当て、問題ないと思ったのかそのまま突っ込んでくるドラゴンに対して主力の火の魔法使いが数人同時に熱線を当てた。

ダメージがあったのか明らかに身を引いたドラゴン、すぐに水に落ち、熱線は後方の水に当たって水蒸気を上げた。

「やったか?」

「全然やってない、です」

シャルルが余計なことをいったがドラゴンはまだ諦めていないようだ。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「機嫌が良さそうですな、殿下」

「クリータとリヴァイアスの報告がな。ふははは、良いじゃないか」

「フリムも流石に一国の軍と竜が相手では何も出来ないでしょうな」

「それに、だ。クリータはクーリディアスの動向を報告してくれているしクーリディアスに情報を流しているのはシャルトル派の貴族を主としている」

「メディッサ殿はリディッサ殿の末の娘。才女として有名でした……家内の争いで辺境に飛ばされましたが、まさかこうも役に立つとは」

「しかし、うまく行けばいいが……報告書にあるように、あのリヴァイアスの狂った精霊がクーリディアスを攻撃しているようだな」

「他国の人間は手を出してはいけない精霊をわかっていないようですな」

「……なんにせよ、クリータとクーリディアスのやり方がうまく行けば俺も動けばいいし失敗すればそのままだ。シャルルもレージリアも他国に対しては軍を出さなきゃならんから中央の護りは確実に減る」

「軍の準備はさせております」

「おう、うまく行けば俺はオベイロス王だな。ハハハハハ!!」