軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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二人は、自分たちより先に古畑君がサロンに参加していたことにびっくりしているようだった。

そこでレイちゃんが口を開く。

「彼が、煌爛学園に特待生として入学した理由をご存じですか?」

レイちゃんの問いかけに「知らないです」と、日高さんが首を振り、「いや、聞いたことがなかった」と呟く綾小路君。

二人とも、彼の受験理由までは知らなかったようだ。

「ゴルフです」

と、レイちゃんが端的に答えた。

「え」

「そうなのか?」

その答えが意外だったのか、二人はきょとんとした顔になった。

学力もさることながら、彼のゴルフの腕も光るものがある、とレイちゃんが付け加える。

このことに関しては私も彼がサロンに入ってから知ったことだ。

マンガでは、その辺りの事は描かれてなかったんだよね。

まあ、メインストーリーから随分と脇にそれる内容だから、マンガ内でそういったシーンがないのも頷ける話ではある。

「この学園なら援助を得られるので、選択の理由となったらしいよ」

と、私が説明を付け足す。

部活動というのは、本気でやろうとすると結構お金がかかるものがある。

ゴルフは、そんな部活の代表例の一つに挙がるだろう。

「ゴルフ部に所属していたのは知っていましたが、それが受験の理由というのは初めて聞きました」

「あいつ、何で話してくれなかったんだ」

日高さんと綾小路君は、古畑君が話してくれなかったことに、それなりの衝撃を受けている様だった。

そんな様子を見て、レイちゃんが口を開く。

「もしかすると、レギュラー選抜試合が終わってから、お話しするつもりだったのかもしれません」

「かなり良い成績を残していて、レギュラー入り射程圏内なんだって」

と、説明を付け足す。

サロンで得た情報によると、彼の実力はかなりのものらしく、部内でのランキングも上位に位置するようだ。

「そうなんですね」

「マジかよ……」

追加情報を聞き、さらに驚く二人。

これなら、サプライズはある意味成功したと言えるのかもしれない。

まあ、それを古畑君本人がやらずに、私たちがやってしまったわけだけど……。

「部活動を通じて、サロンメンバーと知り合い、このサロンにも時々顔を出しているんですよ」

「そんな感じで、いろんな夢を持った人が集まっている場でもあるんだよ。だから、二人が興味のある話も色々聞けると思う」

レイちゃんと私は、古畑君がここに来るようになった経緯と、この場がどういった活用のされ方をしているかについて話す。

これで、資産家の子だけが参加メンバーではないということも、分かってもらえただろう。

すると、彼女の反応が大きく変化した。

「本当ですか!」

日高さんが目をキラキラさせながら、私たちの方へ接近して確認してくる。

「う、うん、内容にもよると思うけど……。日高さんも何か夢があったりするの?」

私は、その勢いに押されつつも、質問した。

彼女のやりたいことって何だろう。

そのことについては綾小路君も興味がありそうな反応を示す。

「お、それは俺も知りたいな」

「それはまだ秘密です!」

と、黙秘権を行使する日高さん。

綾小路君はちょっと残念そうにしていた。

まあ、情報が得られるかどうかも分からないわけだし、今の段階で話すのは恥ずかしいのかもしれない。

その後、日高さんは参加メンバーにクラスメイトを見つけ、挨拶へ向かった。

綾小路君もクラスメイトに挨拶に行くのかと思いきや、この場に留まった。

そして、私たちの方を見て口を開く。

「そうだ、あの事についても礼を言っておかないとな」

「あの事?」

「はて、何かありましたでしょうか」

綾小路君が私たちに改めてお礼を言ってきた。

だけど、私もレイちゃんも、思い当たる節がない。

他に何かあったっけ?

私たちが疑問顔で戸惑っているのを見て、綾小路君がニヤリと口角を上げる。

「確か、八代真帆子と霧条礼子だったか」

綾小路君が口にした名前を聞いてドキリとする。

それは、彼の誕生日会に侵入した際に利用した偽名だ。

「えーっと、その二人が何か」

「残念ですが、存じ上げない方々ですね」

と、私たちはすっとぼけた。

あの時は、かなり強引な方法でパーティーへ侵入した。

あまり追及されたくないので、この会話はなるべく早く切り上げたい。

そんな思いとは裏腹に、綾小路君の追及は続く。

「こう見えて、招待客の名前と顔は全て覚えているんだ。仕事に関係する招待客も居たから、失礼にならないようにな」

「へ、へぇ~……」

「それは素晴らしい心がけですね」

私たちは動揺を悟られないよう、相槌を打つ。

それにしても、あれだけの参加者の顔と名前を憶えているなんて驚きである。

さすがヒーローの代役に抜擢されるだけのことはある。

恐ろしいポテンシャルの持ち主だ。

「特にその二人は印象的だった。なんせ、パーティーに押し入ってきた不埒者を追い払った功労者だからな。あの時、礼を言おうと思ったんだが、気が付いたらいなくなっていた。しかし、俺はその顔と声は覚えている」

「そ、そうなんですね」

「殊勝な方々もいらっしゃるんですね」

私たちは他人のふりをし続け、綾小路君が語るエピソードに感嘆し続けた。

「声が瓜二つだな」

と、綾小路君が短くも確信を突いた一言を放つ。

あの時、顔はしっかりと変装したが、声はそのままだった。

そこまでする必要がないと判断したためだ。

そもそも、綾小路君と言葉を交わしたのは、挨拶のみ。

それで、名前、顔、声、の全てをしっかり覚えているなんて思いもしないよ。

「そうなの? もしかしたら遠縁なのかな」

「他人の空似ですわ」

私たちは笑顔で、そう言い切った。

いくら声が似て居ようと、顔が違えば別人。

そういうことで押し通す。そして、それが通る。

実際、声が似ているというだけでは、これ以上の追及は無理なはず。

綾小路君もこれで諦めてくれるだろう。

と、思ったが彼の追及の手を緩めない。

「そして、その目だ。その目は一度見たら忘れない。あの時の二人はあんたたちだな。あの時は世話になった」

「なんのことやら」

「人違いですわ」

私が「うふふ」と口元に手を添えて笑い、レイちゃんが「オホホ」と洋扇で顔半分を隠す。

こちらが違うと言っているのに、勝手に決めつけてお礼を言って来る。

こうなるとひたすら違うと言い続けるしか対処法がない。

すると綾小路君が、どこか納得した顔で頷く。

「ふむ、そういうスタンスか。他の事が明るみに出たんだから、今更そこだけ誤魔化しても意味がないと思うんだが……。あんたたちがそうしたいなら、深くは追及しない。まあ、礼は言った。これからよろしく頼む」

と言い、笑顔を見せる。

そして、一拍の間をおいて話を続ける。

「それに、俺がこのサロンに所属し、派閥の一員として貢献するのは何の問題もないことだろ?」

「まあね」

「歓迎いたしますわ」

それに関しては何の問題もない。

存分に活躍して欲しいまである。

「それならそうするだけだ。さて、雅孝でもからかって来るかな」

言いたいことは言ったとばかりに、移動しようとする。

そこで私は、最後に気になったことを尋ねた。

「あ、ちなみに日高さんのことはどう思っているの?」

「好きだ。いつか一緒になりたいと思っている」

「そっか」

シンプルかつ、強い意志のこもった返答だった。

「あんたたちには誓っておこう、必ず幸せにすると。なんせ俺の最愛の人の命を何度も助けてくれたんだからな。雪山では助かった。それに工場も。千夏は本当に感謝しているんだ。当然、俺もな」

綾小路君はそう言って背を向けると、軽く手を振りながら古畑君の下へ向かった。

――というわけで、日高さんと綾小路君が雲上院派の新しいサロンメンバーとして迎えられた。