軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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◆九白真緒

というわけで、次の気になるイベントが迫ってきた。

が、今回に限っていうと、起きるかどうか分からない。

どうなるか不明すぎる。

次のイベントはヒロインに師匠キャラが付くといったものだ。

概要はこうだ――。

ヒロインは、ヒーローの親族経由で霊術の指導を受けることになる。

それは、五属性霊術師を初心者のままにしておくのは、宝の持ち腐れと思われたためだ。

ヒロインも現状のままではよくないと考えており、その提案を受け入れる。

そして、指導を受けて霊術師の資格を取り、ヒーローと同じ立場になった時、告白の返事をしようと決心する。

そこで登場するのが師匠キャラだ。

師匠は、ヒロインに指導するうちに一目惚れ。

ヒロインは資格を取るまで修業に打ち込むため、ヒーローとなるべく会わないようにする。

結果、師匠のアプローチとヒーローとのすれ違いから色々起きる。

――といった展開である。

だけど、現在ストーリーの主軸にいると思われる日高さんは霊気を発現していない。

よって、師匠を付けるという話にならない。

この場合、ナナちゃんの方に何か起きる可能性が考えられる。

が、現状ナナちゃんに師匠は必要ない。

義父である兎与田先生がベストコーチだからだ。

それ以前に、今のナナちゃんは五属性霊術師としてのポテンシャルを最大限に発揮し、様々な場所で活躍している。

功績、実績ともに充実し、実力も認められている。

そういった観点から、指導が必要という判断が下ることがあり得ないのだ。

ただ、このイベントは霊術が絡む。

そのため、日高さんと綾小路君の周りでは発生のしようがない。

つまり、イベントが発生するならナナちゃんの方、ということになるはずなのだ。

確か、師匠キャラの名前は 登駆正広重(とくまさ ひろしげ) 。

五属性霊術師で十家の当主を務めているはず。

ナナちゃんに、そういった人物からコンタクトがなかったか、確認しておいた方がいいかもしれない。

◆ 登駆正広重(とくまさ ひろしげ)

俺は登駆正広重。

去年、親父が引退し、登駆正家の当主となった。

我が家は、十家での階位は真ん中。

中間管理職みたいなもんだ。

下からは様々な要望が届き、上からは様々な無理難題が降りかかる。

当主として新人の俺は、その標的として最適だった。

他の中位の十家が様々な難題をうまくかわす中、その全てが俺に降りかかった。

それでも一つずつ問題を解決していく。

すると、俺に対する印象も変わる。

気が付けば、右も左も分からない新人から、仕事のできる当主という評価に変化していた。

そんな中、上から新たな無理難題が飛んできた。

霊獣玄武と契約した者に弟子入りし、実力を探ってこいというものだ。

そいつは玄宮の当主となることを拒み、ただの五属性霊術師として活動しているらしい。

そんな我がままが通ったのは、他の四柱当主の承認があったことと、玄宮の家で起きた事件が関係しているらしい。

霊獣玄武と契約した者の名は、兎与田七海。

五属性霊術師であり、玄宮の当主として相応しい血筋の人間。

ただし、これまで玄宮との関わりが一切なく、偶然霊獣と契約したことにより、色々なことが明るみに出たという経歴の持ち主だ。

そういった特殊性とバックに鷹羽家と雲上院家がいることから、家も継がず、当主となることもないままに活動が許されている。

兎与田七海は、謎が多い。

十家の人間で彼女の実力を知る者は、第一位の鷹羽雷蔵のみ。

他の人間は、式典で見かけて顔を知る程度だ。

ただし、四柱当主からは霊獣契約者として問題なし、と太鼓判を押されている。

だが、今回俺に指示を出した十家二位の参浄殿は、それらの言葉を信じなかったようだ。

本当に四柱当主として相応しい実力を有しているか疑わしい。

もしかすると妖王討伐に向けて、不和が起きないように用意したダミーかもしれない。

そう勘ぐっているようだった。

参浄殿は慎重派。

少しでも準備にほころびがあれば、妖王討伐を取りやめにしたいのだろう。

だが、指示を受けた俺は別の事を考えていた。

その女、興味が湧く。

どんな奴で、どの程度の強さなのか。実際に見てみたい。

だから、参浄殿の指示を大人しく受けることにした。

早速、こちらから兎与田七海に、指導を受けたい旨を伝える。

すると、向こうはあっさり承諾。指導を受ける許可が下りた。

どうやら向こうは妖王討伐作戦前に、余計な不和を起こしたくないようだ。

それは俺にとって好都合。

というわけで、謎の存在である兎与田七海の実力を見る機会を手に入れることに成功した。

――そして当日。

「……なんだこれは」

指定された場所へタクシーで向かう途中、俺は驚愕していた。

ある地域に入ってから、周囲が真っ黒なのだ。

より正確に言うと、道路以外の土地の全てが黒いオブジェで埋め尽くされているのである。

それらは、タワーマンションと同程度の高度と規模で、隙間なく埋め尽くされていた。

それが道のずっと先まで続いている。

結果、日光がさえぎられ、街灯が点灯している始末。どこまでも果てしなく薄暗いのだ。

「初めて来る人は皆驚かれますね。地元の人間からすると、見慣れたものですけど。最近は、動画投稿者に取り上げられて、見物人が来たりするんですよ」

と、タクシー運転手が呑気に説明する。

「そ、そうなのか。それで、これはどこまで続くんだ?」

「まだ入り口なので、しばらくはこのままですね」

「倒れてきたりしないだろうな……」

俺は、そびえ立つ黒い物体を窓越しに見上げながら呟いた。

――そして、数分後。

「着きましたよ」と言う運転手の言葉を聞き、正面を見る。

しかし、今までと景色が変わった様子もない。

強いて上げるなら、黒いオブジェの高度が下がって影がなくなったくらいか。

本当にここでいいのかと疑いながらも料金を払って降車する。

すると、三人の少女が出迎えてくれた。

真ん中に立つ桃色の髪をした少女が、兎与田七海だと自己紹介してくれる。

左右に立つのは、この辺りの土地を管理している者の娘らしい。

名は、雲上院礼香と九白真緒。なるほど、ここで雲上院の名が出てくるわけか。

と、一人納得しながら、兎与田七海に案内され、奥へと進んでいく。

「なんだこれは」

俺は眼前の光景に驚愕していた。

そこはアスファルトで舗装された広大な土地。

その場には、大勢の少年少女がおり、黒い塊を出していた。

その色艶は、ここに着くまで散々見てきた黒いオブジェと同様のもの。

俺の動きが止まったことを察して、兎与田七海が説明してくれる。

どうやらここが普段修業に使用している場所らしい。

なんでも、土地を買い増し、この辺り一帯を修業場として活用しているそうだ。

ここまで来る時に見たもの全てが修業と関係しているという。

……一体これは何の修行なんだ。

俺が、呆然と少年少女たちを見つめていると、兎与田七海が口を開いた。

「で、どうすればいいの? ほんとは指導が目的じゃないんでしょ」

と、確信を突いてくる。

やはり気づかれていたか。

とはいえ、相手の対応は気持ちの良いものだった。敵意は感じない。

なら、こちらも素直に答えるべきだろう。

「あんたの実力を見たい。上からの指示でな」

「じゃあ、早速やろうか」

と、手合わせを向こうから申し出てくれた。

これは話が早くて助かる。

俺は、こういう性格の人間が好きだ。

そして、雲上院礼香と九白真緒が見守る中、兎与田七海と手合わせをすることとなった。

――結果は惨敗。

こいつ、まじですげえ……。

十家という地位に胡坐をかいて鍛錬を怠っている上位の奴らとは比較にならない。

多種多様な術の数々、鋭い体術、大規模霊術も複数行使可能。

どれをとっても一級の腕前。

これだけの多彩さは、厳しい鍛錬を課したからといって身に付くものではない。

恵まれた才能が芯にあってこそ、ここまでの広がりを持つにいたる。

ずば抜けてやがる……。

俺も十家当主の端くれ。

後で笑い話にされないよう、気合いを入れたつもりだ。

だが、気持ちいいくらいに手も足も出なかった。

こいつは、紛れもない本物だ!

最後に、結界の術を見せてもらえないかと頼んだら、あっさり見せて貰えた。

これで間違いない。あの小心者の参浄殿も納得するだろう。

晴れてお役御免。受けた仕事は完了だ。

と、ここで、俺は気になっていたことを尋ねた。

あの黒いの何なん? と。

そしたら、霊装だと言われた。

は?

いや、大きさがおかしい。

ここに来るまで、ずうっと黒いのが一杯ありましたけど……。

それに、今も俺の目の前では少年少女たちが、黒い塊を出している。

霊装っていうのは、ああいう物の事を言うんじゃない。

もっとこう……武器の形とか、アクセサリーの形をしている感じなんだ。

あんな意味不明な大きさを作り出したら、体の中の霊核が小さくなりすぎてしまう。

いや、そもそもこの大きさを作り出すことなんて無理だ。

霊核が足りない。

と、こちらがまくしたてて反論すると、確かめてみればいいと言われる。

俺は、側で修業する少女に了解を得て、黒い物を調べてみた。

………………間違いなく霊装だ。一発で分かった。疑う余地がない。

俺はその事実を受け止めきれず、呆然と立ち尽くすこととなってしまう。

――まさか、こんなに多数の五属性霊術師が存在するなんて……。

それにしても、一体どこの一族だ。

まさか全員玄宮なのか……。だとすると凄いぞ!?

少し前に一族の大半が拘束されて、家としての力を失ったと聞いていたが、大きな間違いだ。

これは、どの家より大きい戦力を持っていることになる。

なんて頼もしいんだ。兎与田七海、すごい奴じゃないか!

これなら妖王も討てるに違いない。

と、勝手に解釈して興奮していたら、違うと言われた。

一体、何が違うんだ。

え、玄宮の家とは無関係?

そ、そうなのか……。なら、どこの十家に所属しているんだ。

え、違う?

全員、霊術師の家系ではない?

言っている意味が分からないんだが……。

え、全員霊薬を飲んだ一般人?

そこで俺はハッとなる。

確か、雲上院系列のグループが、最近霊薬工場を作ったという話を聞いた。

つまり、新薬が完成したということか。

しかし、五属性を発現する薬を開発してしまうなんて前代未聞だ。

世紀の大発見だぞ、と興奮する。

え、違う? 何が? 全員一属性?

うそだ、俺は騙されんぞ!

と、俺が暴れまわった結果、検査機で調べた結果を見せてもらうこととなった。

……本当に全員一属性だった。

どういうことだ、意味が分からん。

俺の眼前では巨大霊装を出した子供たちが、極大霊術を発動する練習を行っている。

幻覚か、そうなのか?

そうじゃない? そうですか……。

くそ、俺の幼少期から培われてきた、霊術師としての価値観が崩壊していく。

意味が分からん……。

と、ここで、兎与田七海と楽しげに話していた雲上院礼香と九白真緒の修業風景を見て、脳が破壊された。

なんだ、こいつらは……。人間なのか?

おい、兎与田七海も、笑顔で凄いね~とか言うんじゃない!

その存在を認めるんじゃない!

他の少年少女たちも、陶酔した目で崇めるような仕草をするんじゃない!

やばすぎる……。なんだあれは。

俺は、兎与田七海に詰め寄った。

すると、修業に励んでいる全員が将来的にはああなると言う。

は?

嘘だろ……。

俺の中にあったあらゆる価値観が音を立てて崩れていく。

そこで、俺はある事実に気づいた。

現在、北海道は奪還済み。後は妖王を倒すのみ。

で、倒した後はどうなる?

まず、妖怪の出現は激減するだろう。

そうなったら、少ない妖怪を奪い合う展開になる。

霊術師同士で熾烈な競争が起きることは間違いない。

そんな時、目の前の少年少女が妖怪討伐に乗り出したら……。

俺は生き残れるだろうか……。

そうだ、親の地元に帰ればなんとかなる。

だが、今の様な派手な生活はできないだろう。

なんせ、凶石が獲れなくなるのだから。

……転職を考えるべきだろうか。

俺は本気で悩み始めた。